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大人たちが夜の海ではしゃいでいた|はじめて鎌倉へ行った日

突然手に入れた「人生の夏休み」で手持ち無沙汰になった昨年夏、気がつけば私は1ヶ月間を鎌倉で過ごしていた。


いつしか私のアナザースカイ的な場所になっていて、このnoteにもちらほら登場する「鎌倉」という存在。

はじめて行った日のことを少し思い返してみたくなりました。


月を追いかけて海まで走る大人たち


「今夜ライブあるので、よかったら。」

はじめて鎌倉へ訪れた大学3年の夏。ゲストハウスへ到着して特に予定もなかった私は、そのライブに参加することにした。隅っこでこっそり……のつもりだったけど、そこに居合わせた人の顔も名前もすぐに覚えてしまえるくらいの小さなライブで、気がつけば私もその空間に溶け込んでいた。


「そういえば今日って、満月だよね」
誰かが言った言葉に、みんなが目を合わせる。
「海まで見に行く?」


大人たちが何も持たず外へ飛び出して、私は戸惑いながらその後ろをついていった。

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足首を撫でる波が心地よくて、しばらくぼーっとしていると隣で波を蹴っていたミュージシャンが話し始めた。


「俺はな、全部置いてここへ来たんや」


私と同じく関西出身の彼は、もともと教師をしていたらしい。どっちを選んでも楽しんでたと思うけど、と前置きをして彼は続けた。


「選ばんかった道のことを考えることもあるけどな、そんなん分からんから。だから今の道をめいっぱい楽しんで、正解にしていくもんちゃうかなー思ってる。俺もな、最近気づいたんやけど。」



晴れた空の綺麗な月を見て、
脚本家の卵は夏目漱石を思い出していたし、
笛吹きは陽気に音を奏でていたし、
ミュージシャンは歌を歌っていたし、
仲良し夫婦は微笑みあっていた。

みんながそれぞれの感性で月を見上げていて、
あどけなく夜の海ではしゃいでいた。


私は、まだ私なりの月の見上げ方が分からなかった。
そもそも月の見上げ方ひとつで、一人一人違うとかそんなこと考えたことなかった。

いろんな生き方があって、いいなぁって思った。


正解の道とは


ちょうど「就活」の文字が頭にちらついていた頃だった。とりあえずインターンに参加したり、大人にウケそうな志望動機を作り上げたり、そんな「勝ち組になるための道」がどうやらあるらしい。

「勝ち組になるための道」だけが正しいのではないのだろうな、きっと道は色々あるのだろうな……そう頭の隅で考えつつも、それを辿る以外の道が分からなかった。考えれば考えるほど、頭の中は窮屈になっていった。



そんな私に、

「正解は人それぞれ違うから大丈夫だよ」
「大人って思ってるより自由で楽しいかもよ」

って教えてくれた場所。


あの時のミュージシャンのように、全部を置いてまで追いかけたい夢とか、覚悟とか勇気は当時の私は持ち合わせていなかったのだけれど。

でも今考えれば、そういう考え方に出会った原点だったと思う。

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当時のインスタが出てきた!



なんで行きたくなっちゃうのだろう


それから私は、ふらっと鎌倉へ行くようになった。
こうして振り返るまで考えたことなかったけど、私は、何かを求めて鎌倉へ行っているんだろうな。

何かに迷うとき、心を落ち着かせたいとき。わざとじゃないんだけれど振り返ればそんなときに鎌倉へ向かっていることが多い気がする。


相変わらず各々が好きなことをする小さなライブ。
波がある日は早めに閉店するサーファーのお店。
海外帰りのバリスタが「心地いい空間が作りたくて」とささやかに営むカフェ。


そこで出会う人たちはみんな、穏やかで、優しくて、でも頑固。

「やりたいもんはやりたいんじゃー!」って好きなことしちゃうし、そうやって何かをしようとする人を「いいじゃん!楽しそう!」ってしちゃうし。




私にとって、そんな空間は「素直になっていいんだよ」と気づかせてくれる場所なのかも。毎回毎回、何度でも懲りずに。


そうか。だから私は、「自分の気持ちに素直になっていいんだよ」って気づきたい時、言ってもらいたい時、その感覚を求めてあの場所へ行っているのかもしれないな。

そんな場所があるって、なんだか嬉しいな。


いつもありがとう鎌倉、いつか私がアナザースカイに出る日が来たらその時はよろしく頼むよ。



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