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森見登美彦テーマ考 #タイムマシン

美術多めのアカウントだけど、森見登美彦なくして今の私はないなと改めて気づきました。

シリーズ第一回として、先日発売されたばかりの『四畳半タイムマシンブルース』より、タイムマシンとエンタメについて考えます。

海外ではどうか知らないけど、SFと夏休みってめちゃめちゃぴったりな組み合わせですよね。

『サマーウォーズ』の印象が強いかな?いやそれよりもっと前から、夏休みは学校がなかったり、おばあちゃんの家に行ったり、非現実感がある故にSFの世界観が収まりやすい感じがします。

『四畳半タイムマシンブルース』も夏休み、というか8月12日と、8月11日の物語。今年から、今日8月12日が私にとって大切な日になりました。

そして今朝、エモエモ大事件が大勃発。

公式サイトより

アニメ『四畳半神話大系』で「私」の声を務めた浅沼晋太郎大先生がここに復活!アニメ制作陣本当に豪華だったなあとしみじみ感じます。

『四畳半タイムマシンブルース』
炎熱地獄と化した真夏の京都で、学生アパートに唯一のエアコンが動かなくなった。妖怪のごとき悪友・小津が昨夜リモコンを水没させたのだ。残りの夏をどうやって過ごせというのか?「私」がひそかに想いを寄せるクールビューティー・明石さんと対策を協議しているとき、なんともモッサリした風貌の男子学生が現れた。なんと彼は25年後の未来からタイムマシンに乗ってやってきたという。そのとき「私」に天才的なひらめきが訪れた。このタイムマシンで昨日に戻って、壊れる前のリモコンを持ってくればいい!小津たちが昨日の世界を勝手気ままに改変するのを目の当たりにした「私」は、世界消滅の危機を予感する。(帯より)

7月末に単行本化されたこの作品は、上田誠が手掛けた『サマータイムマシン・ブルース』の物語を、森見登美彦『四畳半神話大系』の登場人物がやったら?という妄想で出来上がった最高の小説です。とはいえ両方知らなくても楽しめます。

上田誠といえば、『四畳半神話大系』『夜は短し歩けよ乙女』『ペンギン・ハイウェイ』など森見登美彦作品のアニメ化・舞台化にあたり、破格の情熱でもって脚本を書いてくださった神様なんですが。今回はまさかの上田誠を森見登美彦がどうにかする、という新展開に。

カドブン連載当初から話題になっていて、既に重版がかかっているヤバいやつ!(語彙力)

ハチャメチャな喜劇にも関わらず、サンタさんなんて存在しない、と言われるくらい子供にとっては衝撃的かもしれない展開に、タイムマシンとは?ということを考えさせられました。

無邪気な私たちが憧れる対象は、タイムマシンによって叶うタイムトラベルだけではなく、タイムマシンそのものでもあります。

『バック・トゥ・ザ・フューチャー』ならデロリアン、『ドラえもん』ならのび太の引き出し、『仮面ライダー電王』なら電車の形をした「デンライナー」と、身近なものがタイムマシンになっているケースが多いですよね。だから私たちは、時間旅行したい!というよりは、この車や引き出しがマシンだったらな〜!と思う。

もちろん、ちょっと前に再放送で再流行した『JIN-仁-』のように生身で時間を移動するものもありますが、マシンを使うタイプの作品では、時間が切り替わる場面がそのまま「かっこいい」とか「わくわく」を演出するメインイベントとして活躍します。

そんでもって『四畳半タイムマシンブルース』で登場するタイムマシンは、一畳の古畳。男のロマンのなんたるは知らないけど、「下鴨幽水荘」という学生アパートの四畳半で暮らす登場人物たちにとってはあまりに身近で、夢がありますよね。

私だったら…布団がタイムマシンになってほしい(煩悩)。

SF小説の始まりは1818年、メアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』だと言われています。イギリス産業革命まっただ中、科学が身近になり出した頃です。

個人的には『竹取物語』ってSFなんじゃないかな〜とも思うんですが、どうなんですかね。ファンタジー?

そして、タイムトラベルが描かれるのは1889年、マーク・トウェインの『アーサー王宮廷のコネチカット・ヤンキー』。そこからマシンが登場するのは、1895年のH・G・ウェルズ『タイム・マシン』が世界初だと言われます。

昨今のタイムマシン小説は、概ねウェルズの作品が基盤となっているようです。

タイムトラベルからタイムマシンの登場まではかなり短くて、もっとも『竹取物語』のような時代から多くの人が時間旅行、タイムマシンへの憧れを心のどこかで描いていたんじゃないかな、と思ってしまいます。

憧れのタイムマシンは、いよいよ京都のボロ下宿にもやってきました。上田誠と森見登美彦の神タッグに感謝して。また読み直してこよ〜!

マガジン始めました。同志のみなさんよろしくね。

おしまい。

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