富を牛耳る世界の縮図〜金融・資源〜
先日、テレビを見ていたら、ヨーロッパの中に「地図に載っていない国」があったことを知った。
私が以前居住していたルクセンブルクや、リヒテンシュタイン、モナコ公国なども小国だが、学校の社会科でも習うため、見聞きした事がある人も多いかと思う。
では、
サン・マリノ
アンドラ
と言ったら、知っている人はどれくらいいるだろうか?
私がテレビでこの2つの国名を知った時は、秘密の国を見つけてしまった気分だった。
人口は、それぞれ3万人と8万人。どんな国なのか気になって調べ出したら、なんとなんと日本なんかよりよっぽど裕福で国であった...!(衝撃)
こんな小さく無名の国がなぜこんなに儲けているのか?気になり、さらに調べてみた。するとだんだん分かってきた…。
一人当たりGDP上位の国・主要産業
サン・マリノとアンドラは、タックスヘブンで大儲けしている国の一つだったのだ!
少し前から、パナマ文書、パンドラ文書と大企業や富裕層の極秘情報が流出し、世間を騒がせた。
今朝の新聞にも、世界がタックスヘブン取り締まりの方向に動いていることが取り上げられていたばかり。
私は、パナマなどの中南米の島々だけでなく、ヨーロッパの知られざる国でさえも、金融で潤っていたことが衝撃であった。
GDP上位20カ国の、13カ国は金融国
改めてGDPのランキングを眺めていると、今更ながら、ある種の傾向があることに気づいた。
GDP(一人当たり)の上位20カ国の中、13カ国は「金融国≒タックスヘブン」で、残りの多くは「資源国」だった。
サン・マリノ、アンドラなど、欧州の秘境の地だけではなかった。スイスも、オランダもルクセンブルクもモナコもリヒテンシュタインも….お金で富を生み出す「金融業で丸儲け」の国だった。(モナコやリヒテンシュタインは非開示のため、GDPランキングから逃れられている)
もちろん「儲け」の構造は、単純ではない。複合的に経済が活性化することに違いないが、タックスヘブン(租税回避)のブラックリストと、これらの国が重なることは偶然ではないはずだ。
また、金融以外で儲かっている資源国は、中東はもちろんのこと、ノルウェーにも、大規模の油田が見つかり国はとても潤っている。
改めてランキングを見て、私はショックを受けた。富の偏りについて少しは知っているつもりだった。
戦後から急激な経済成長を遂げた、日本の栄光を刷り込まれていた私は、国が繁栄(=経済成長)するには、どういうビジネスが必要か?という問いが常にあった。
iPhoneのように新しい製品を、Googleのように良いサービスを作り出せば、国は栄えるのだとどこかで信じていた。
なので「結局、金融か資源が経済を牛耳っている」ことを突きつけられた私は、ジャブを食らった気分だったのだ。
私は金融とは無縁ながら、ランキングのTOPに登場するオランダの他に、ルクセンブルク、シンガポールに、呑気に暮らしていたことがある。
これらの国で、私が実際に体験したことと、金持ち・エリートビジネスマンの生活についての見聞きしたことを共有したい。
金融=金持ち国の生活
ルクセンブルク
私が以前住んでたルクセンブルクは、公共交通が全て無料だった。(おかげで財布を忘れたままバスに乗り、隣国のベルギーまで行きかけたこともあった。)
もちろん金持ちは交通機関を使わず自家用車移動である。
交通公共機関の運転手ですら公務員で、給料はかなり良い方だ。
公立学校の先生は高給取りで、好立地で閑静な住宅街に住んでいる。ハイブランドのサングラスをかけ高級車を乗り回している先生にさえ出会ったことがある。日本だったら、大炎上だろう。
ただでさえ給与が高い国にも関わらず、年金も現役世代とほぼ同じ金額がもらえる。そのため平日昼間のレストランは、ワイン片手にフルコースを楽しむ年配者で溢れる。
もちろん光があれば影がある。
ルクセンブルクの生活を支える、エッセンシャルワーカーと呼ばれる人々はほとんどがルクセンブルクには住んでいない。物価が格段に下がる、フランス、ベルギー、ドイツから通勤している。
そんなルクセンブルク。GDP首位にも関わらず、都心から車10分も行けば、牛や馬だけの土地に一変する。
パリやロンドンなどの煌びやかな都市に比べると、デパートも1つ2つほどしかない。20分ほどで中心地の端から端までは、到達してしまう。
完全に田舎...いや、辺境の地だと思えてしまった。限られた都心以外は、農地かほどよく整備された自然が大部分を占める。
目を疑うほどの高級車や立派な外観の家があっても、
「田舎は、田舎」である。
私にはかなりの窮屈で退屈に感じてしまったが、金融業界で働くルクセンブルク人の友人は、中心地と郊外のバランスの良い立地の広い家に住みながら、自国を心から愛し、誇りに思っていた。
高収入の仕事、愛する家族と自然、長いバケーションがあれば、彼らはそれだけで満足なのかもしれない。
ちなみに、ルクセンブルク職探しはなかなか難しい。政府の方針により、金融、IT、コンサル、宇宙業界の限られた企業しかなかったため、異質な国という印象だけが残っている。
シンガポール
「Hot, Hotter, Hottest」の3つの気候を持つ、この南国は、歩いての移動は苦行のため、移動は、どこに行くにもタクシーを使う。
タクシー代が比較的安いとはいえ、1回の移動は最低500円はする。(私は格安の公共交通機関を多用していた。)
道端では、クレイジーリッチを思わせる、高級外車もたくさん見かける。
狭い国土であるがゆえに、一軒家はステータスだ。今は物価が上昇しすて一軒家は、本物の富裕層にしか手が届かない。
金持ちビジネスマンは、繁華街へのアクセス抜群立地の高級マンションに住む。5つ星ホテルと見間違えるほどのマンションだ。東京のタワーマンションとは桁違いの敷地と価格のマンションは、先が見えないほど広大なプールに、BBQスポット、ジム、イベントホールなどがある。
もちろん住み込みのナニーがおり、家事と子育て(肉体労働)は全てナニー任せ。共働き親はゆったりとした心持ちで子供に接し、自分磨きの時間も確保できる。
もちろん格差もわかりやすい。先ほどのような"リッチ"な暮らしをする人たちの多くは、華僑と呼ばれる中華系のシンガポール人か、外国人だ。それ以外の人たちは、国有の何棟もそびえ立つ集合アパートに住んでいる。
国が潤っているため、毎年政府から国民にボーナスさえ支給されている。
余裕が羨ましい限りである。
資源国ノルウェー vs サウジアラビア
旅行でしか行ったことがないが、いくつか面白い話がある。
北欧でも控えめなノルウェーも資源の発掘により、金持ち国のひとつに躍り出た。昔から漁業が盛んな、片田舎の一国であったのに…。
ノルウェーのユニークなところは、多くの資源国と異なり、資源から得た莫大な利益でその多くを公共政策や成長産業などの未来に投資し、国の強化に成功した点(現在進行形)だと言われている。
個人の利益より国の利益を優先する、北欧の福祉国家的精神がここでも効いている気がしてならない。
一方、アラブ首長国(UAE)は対極だ。多くが公務員で、生まれた瞬間から高給が約束されている。ナニーが複数人もおり、肥満になる人も多い。
BBCで特集があっていたが、アラブ首長国(UAE)は金融業も絡めながら、外国から優秀な人を呼び寄せ「資源以外」のビジネスを育てている。
しかし、国民は一生懸命働かずとも優雅な暮らしができる状況ため、実態は腐敗してきているとしか思えてならなかった。
一説によれば、2020年台には石油が尽き始めると言われている。
あと8年で本当に資源が尽きるかは不明だが、資源が尽きた時にこの国に一体何が残るのか...個人的にはかなり疑問視をしている。
最後に
GDPランキングを見るだけでも、多くのことを想像することができた(東南アジアの目立たない国、ブルネイが大金持ちだったなんて夢にも思わなかった…!)。
今回の記事の内容は私調べではあるが、ある程度、当たっているところもあるのではないだろうか。
もしGDPや興味を持った人がいれば、私は以下のサイトが大変役に立った。
最近は、タックスヘブンへの国際的圧力が高まり、ルールの強化など、状況は変わりつつある。
しかし今後も手を変え品を変え、お金でお金を生み出す構図は対して変わらないのではないかと想像してしまう。
しかし、面白いことに、資源や金融以外のビジネスが中心を担っている、デンマークやスウェーデンなどの北欧の国もGDP20位にいた。
この北欧の国々は、多くのイノベーションを起こし、生産性が高いことで有名なので、いつか成功要因を探って記事にしてみたい。
ではまた!
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