見出し画像

「今この瞬間」ではなく、未来まで見る。それがディレクターのあるべき姿

「この人とする仕事は常に進化を求められるな」とポジティブな緊張感を与えてくれる仲間に出会うことがあります。「餅屋」のコンテンツディレクター・井関 奈美(なっぴ)は、まさに社内外ともにそんな刺激を与えてくれる存在。

それは彼女の持つ、コンテンツへの確固たる信念があるからなのだろうと思います。「餅屋」のクリエイティブをさらなる高みへ押し上げる存在、なっぴが抱く野心を尋ねてきました。

井関 奈美(なっぴ)   テテマーチ株式会社 
Social Contents Studio『餅屋』 コンテンツディレクター
1995年生まれ。化粧品、エンタメ、不動産、食品など幅広いクライアントのクリエイティブやコンテンツを中心に企画から制作までを担当。「INSTAGRAM DAY TOKYO 2019」にて紹介された資生堂ブランド「レシピスト」Instagramアカウントを手がける。

ディレクターとは?

SNSで投稿する画像や広告用のクリエイティブを作る時に、クリエイターやデザイナーの伴走者となり、最高の状態をともに目指す存在のこと。


日々のコミュニケーションも「ディレクター力」を試される要素

画像1

── 普段、なっぴさんとはよくお仕事をご一緒していますよね。その中でわたし自身も感じていることなんですが……なっぴさんはとびきりこだわりを持って仕事をしているなと。ディレクターという職業上、誰かと誰かの間に立つことも多いと思いますが、そういった中でも常に自分の意見をしっかりと持ち、腹を据えて仕事に向き合っているように感じているんです。

何事に対しても、信念やこだわりがあるほうだなあとは思いますね。親からも芯が強い子どもだったと聞いているので、その性格が未だに変わっていないのだと思います。良く言えば「芯がある」、ちょっとネガティブな言い方をすると「わがまま」とされるこの性格の、良い面を活かして仕事ができるよう意識しているんです。

── たしかに、言い方次第で受け取り方も変わるかも。「良い面を活かす」とは、具体的にどうすることなんでしょう。

たとえば、考えていることの背景を伝えるとか。「わがまま」だと思われてしまう場合って、理由や意図は関係なく「自分がこうしたいから」と自分を中心に物事を考えているように、相手が感じてしまうからだと思うんです。

でも、わたしが伝えたいのは、クライアントさんやその先にいる生活者にとってのベストを考えた上での意見です。そのことを伝えるだけで発言の背景が伝わり、「わがまま」ではなく「芯がある」と受け取ってもらえるようになるのかなと思っています。

── 伝え方次第で、その意見がどのように受け止められるのかすら変わってくるんですね。たしかに、キッパリとした物言いの背景にさまざまな思考の跡を感じられるのが、なっぴさんらしいコミュニケーションなのかなと感じます。

ディレクターの仕事って、クライアントさんやクリエイターさん、社内のメンバーたちとコミュニケーションを取りながら成果のために動くことだと思うんです。自分がなぜそうしたいのかという理由をまずは周囲の仲間にきちんと伝えることができないと、世の中に届くコンテンツなんて作れっこないなと。

── プロジェクトを推進するためのコミュニケーション力も、ディレクターに大切な能力のひとつってことですね。では、状況や人によってもコミュニケーション方法って変えているんですか?

意識的に変えていますね。たとえば、「この人にはこういう風に伝えてみよう」と言葉の選び方を変えたり、忙しい人には一度で意図が伝わるようになるべく丁寧に依頼内容をまとめたりしています。ディレクターとして働き始めて今年で4年目なので、これまでの経験で引き出しが随分と増えました(笑)。

仲間からも「なっぴさんの依頼がわかりやすい」と言ってもらう機会が多くなったので、これまでやってきたことは間違いではないのだろうなと思っています。


「プロジェクトを成功に導くこと」それが全ての原動力

画像2

── なっぴさんって依頼や対話がスッキリしていてわかりやすいイメージがありますが、それ以上に「無理」と言わない印象があります。特にクライアントさんと対峙するときにはスケジュールや工数などで難しい局面があるのかなと思いますが、どんなことを考えてコミュニケーションを取っているんでしょう?

「不満を言う時間があるなら、その時間でできることを考える」ですかね……。たしかに、SNS運用の仕事は一筋縄ではいかないことも多いので、予算・スケジュールなど、さまざまな面で障害となるものが現れます。ただ、それら一つひとつに不満を言っている時間ってもったいないじゃないですか。

── たしかに……。足元を見るのではなく、なるべく未来を見て立体的にプロジェクトを進めようとする姿勢のように感じられます。

それに、意見や主張の背景には必ずなにかの理由があるのだと思っています。クライアントさんが「どうしてもスケジュールを早めたい」と仰っていたとしたら、早く告知したいものがあるのかもしれないし、上司に急かされているのかもしれない。「なぜそう主張するのか」をコミュニケーションを通して紐解くのも大切だと思います。

── 表面にある意見のみではなく、その背景を含めて理解するってことですね。

プロジェクトを担当していると、常に安定した状態で物事が進むことってなかなかなくて、どこかで多少壁にぶつかることもあるんです。時と場合によって臨機応変に対応するべきだと思うし、頭を使ってなんとか実現する方法を一度考えてみる。そういう姿勢がディレクターとして間に入る立場だからこそ必要なのかなって。

── 頭でわかっていてもなかなか実行まではできない人も多いのかなと思います。そういった工夫を凝らすことって、なっぴさんにとっての楽しさなんですか?

う〜ん、どうでしょう。仕事を進める上でのモチベーションってあんまりないんですよね。「プロジェクト自体を成功させること」という最上概念自体がモチベーションなので、それに付随する仕事はすべて単にやるべきこと、以上、って感じかも(笑)。

もちろん途中過程で悩むこと、悔しいこと、嬉しいことや喜ぶこともありますが、成功を掴み取るまではどれも通過点にしか過ぎないです。そのあたりは、仕事内容を選り好みせず、小さなモチベーションにも依存せず、淡々と取り組んでいるのかもしれません。


数字には表れない美意識が、企業の未来を変えてしまうかもしれない

画像3

── 社内でなっぴさんの印象を伺ったときに「クリエイティブ領域は自分が推進するという意思を持っている人だ」と仰っていた人がいました。そういったクリエイティブへの熱についても伺いたいです。

もともとわたし自身が趣味で写真を撮っていたこともありますし、SNS運用は写真やデザインなどさまざまなコンテンツを活用しながら行っていくので必然的にクリエイティブの質やトレンドなどを積極的に追いかけるようになって。好きで積極的に取り組んでいるうちに、社内でも「クリエイティブへの感度が高いのはなっぴだよね」と言ってもらえるようになりました。

画像5

▲なっぴがコンテンツディレクターを務めた東京デートストーリーの投稿
 (公式Instagram

── 会社としてクリエイティブへの意識を持つことは必要かと思いますが、なっぴさんはクリエイターとしての目線もあるために、より一層視座が高くなっているのかもしれませんね。

そうかもしれません。世の中の広告やSNSのクリエイティブを見て「どうしてこの表現が良いと感じるのか」と考えることも日常茶飯事です。日頃から構図、色表現、テクスチャ、テイストなど、ひとつの作品から得られるインスピレーションや学びをストックして、ディレクション時の参考にしている気がします。

── 「神は細部に宿る」とも言われる通り、細やかなところまで目を凝らしてこだわり抜くことがクリエイティブに関わる上では大切だったりしますよね。

そうですね。ただ、そこには多少の難しさもあるんです。というのも、余白の細かなのズレやピクセル単位の修正を緻密に行ったとしても、SNSを運用する上でエンゲージメントが大幅に改善するといったマーケティング的な視点での効果は得られないことがあるので。

── たしかに。特に継続的に運用を行うとなると、なるべくスムーズにクリエイティブが完成することも重要ですよね。それでもなっぴさんは細かな調整まで怠らない人なのかなって感じています。

調整するべきだと思ったときに妥協することは、これまでも、これから先もありません。企業のSNSはブランドイメージを形作る大切なコミュニケーションツールのひとつです。投稿するクリエイティブ一つひとつが、そのブランドとの接点だからこそ大切に作ることを心がけています。

── そうすることで「ゆるぎない世界観を持ったブランドなのだな」と、生活者にポジティブなイメージを届けられるのかもしれませんね。

……と思います。たしかにエンゲージメントには寄与しないこだわりかもしれない。多少、修正に時間がかかるかもしれない。でも「こだわらない」を選んでしまったら、未来で企業のイメージを変えてしまうはず。目先の運用に留まらず、そういった先々の奥行きを見つめて動けるディレクターでいることが、ご一緒するクライアントさんのためになると信じているんです。

画像5

── なっぴさんとお仕事をする際に感じられる「進化しなくちゃ」という良い緊張感は、なっぴさんが持つ強い信条がクリエイターや仲間に伝わるからこそ生まれるものなのかもしれませんね。

私たちが作るものは、いつだって「イケてる」って言われたいじゃないですか。「餅屋」の仕事ぶりや成果を信頼して依頼してくださる方ともっと出会いたいし、もっと良いものを生み出したいだけなんです。

── シンプルで率直な野望ですね。

わたし自身、こうなりたいっていうロールモデルのようなものはないんです。でも「餅屋」から生まれていくコンテンツは良いものであってほしいし、そのために貢献できるディレクターでありたい。そんなシンプルな気持ちで仕事と向き合っているような気がします。


写真・文:詩乃(Photoli)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?