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“嫌われるインフルエンサーマーケティング”をやめるために「餅屋」をはじめました

「SNS社会が訪れて広告のカタチは変わった」なんて謳い文句は、もう何年も前から言われ続けてきたこと。タイムラインを見ているだけで、広告にも日々変化が起き続けていることを実感します。

一方で、なかなか変化が訪れないのが、WEB広告のリーチ至上主義です。「若い人に届くようにインフルエンサー使ってバズらせてください!」「xxx万くらいリーチしたら嬉しいんですけど、いかがですか!」といった広告案件はいまだに多数存在しており、今日も意味不明なハッシュタグがタイムラインに溢れ返っています。

決してリーチを追うことが悪ということではないですし、目的によって議論されるべきです。しかし、リーチ数に捉われている限りは、サービスやプロダクト、ブランドの真の価値を生活者に届けることはできない

私たち「餅屋」は、そのように考えています。SNS時代に特化したプロモーション企画を考える私たちが誕生した理由と、「餅屋」が目指したい未来について、共同代表のふくままさひろ三島悠太に話してもらいました。

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(左)三島悠太:テテマーチ株式会社 執行役員。Instagramを中心としたSNSマーケティングにおける企業の企画・立案を300社以上手掛ける。テテマーチにおけるSNSマーケティング事業を統括。Instagram Day Tokyo 2019登壇。
(右)ふくままさひろ:テテマーチ株式会社 コミュニケーションデザイン室 室長。企業のSNSコミュニケーションの企画提案、及び自社のマーケティング企画等を兼務。アドテック東京2019・2020公式スピーカー。


「誰も得しないインフルエンサーマーケティング」から抜け出す

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ーーお二人は「餅屋」の代表でありながら、テテマーチという会社の社員でもありますよね。二つの組織はどのような関係にあるのでしょうか?


三島:テテマーチはInstagramを活用した広告・マーケティングの会社として2015年にスタートしました。ハッシュタグ投稿キャンペーンの支援をするシステム開発から始まり、クライアントのニーズに応えるように領域を広げていった結果、アカウントの運用やコンテンツの制作、インフルエンサーのキャスティングにも対応できるようになりました。

SNSに関連することなら一手に引き受けられるという会社はあまり多くないので、お客さんに評価されてきたのはそういったところだと思います。最近はある程度網羅できてきたこともあり、じゃあ、今できることをより良くするにはどうしたらいいだろう、と話し合って出てきたのが、「餅屋」の構想でした。

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餅屋の公式サイト。餅屋はインフルエンサーとプランナーによって構成されたプロモーション企画集団であり、インフルエンサーを単なる拡声器ではなく、コンテンツを共に創り上げるクリエイターとして考えています。

ふくま:テテマーチもインフルエンサーをキャスティングしたPR施策はやってきたんですけど、ここ数年の広告業界がやってきたような、新商品を無作為にばら撒いて投稿させるようなインフルエンサーマーケティングには違和感を覚えていたのが根本にあります。

モデルのようなインフルエンサーが「今日は〇〇のシャンプー! 匂いが好き! これから毎日使おっと!」と突然投稿してもPRだとわかるし、その投稿だけで良い商品とは決して思わない。だから売れない。これでは企業もお金を捨てるようなものだし、インフルエンサーだって長い目で見ればフォロワーの信頼を失っているんです。

生活者も良い商品には出会えないし、誰も得しないビジネスモデルのはずなのに、「インフルエンサーマーケやりたい!」って声はあまり減らない。この風潮に風穴を開けられないかな、ということで発足したのが、餅屋でした。


「人ありきの企画」で熱量高く盛り上げる

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ーーエクセルのリストにインフルエンサーのアカウント名とフォロワー数をズラっと並べて、上から順にアサインして投稿させるようなタイプの広告モデルが従来のものだとして、餅屋のインフルエンサーマーケティングはどのようなものなのでしょうか?

三島:「クリエイターと一緒にコンテンツを作る」という点が明確に違うと思います。これまでのSNSマーケティングにおいて、インフルエンサーは「商品を訴求してもらうための手法の一つ」みたいな考え方をされていましたけど、でも、彼ら・彼女らはそもそも人格や性格、好き嫌いがバラバラな「人」じゃないですか。だったらその人たちを企画の中心に置いて、「その人ならどんな盛り上がりをつくれるか」を考えた方が、クリエイターの熱量も上がるし、ユーザーへの広がり方も変わってくると思ったんです。

ー 具体的に案件で成果が出たものはありますか?

ふくま:クリエイターの青春botさん(@seisyunbotdesu)と組んでキリンビバレッジのInstagramキャンペーンを実施したときは、想像以上の成果が生まれました。

キリンビバレッジの公式Instagramで実施された『#令和最初の夏の味』キャンペーン。キリンビバレッジの清涼飲料水をハッシュタグで盛り上げる企画に対して、青春botさんの投稿には、多くのリアクションが集まりました。

ふくま:青春botさんには『令和最初の夏の味』というテーマでイラストコンテンツを作ってもらって、そのイラストと一緒に「令和最初の夏の味の思い出を投稿してね」と投稿していただいたのですが、とくにこちらから投稿頻度などの要望をお伝えしたわけでもないのに、キャンペーン期間中10回弱くらいSNSに投稿してくれたんです。

― フォロワー10万人近くいるアカウントがそれほど頻繁に発信してくれることは、なかなかないと思うのですが。

ふくま:青春botさんともそのことについて話していたんですけど、キャンペーンを発注するっていうよりも、思い出作りを一緒に盛り上げましょうよみたいな温度感でコミュニケーションをとっていたんですね。青春botさんも「(キリンビバレッジの)コンセプトがすごくいいですよね、一緒に盛り上げたい」と言ってくれて、企画の内側に入っていく感じがあったんです。

三島:最初は青春botさんがイラストを投稿するだけだったのに、それだけだと反応があまり良くなくて、今度は「待ち受け画面にできるイラストをdmでプレゼントする」とか、クリエイターとして追加のアイデアを出して実践してくれたりもしました。僕らはもちろんのこと、クライアントも、それは本当に喜んでましたね。

ふくま:こうなってくると、一投稿いくらとかそういう話ではなくて、どこまで一緒に盛り上げることができたか? みたいな話になるので、対価はもちろん支払いますが、ただ金銭だけでない関係になっていくんです。コンテンツを共創していく、キャンペーンを一緒に盛り上げるということが実証できてよかったです。


組みたいのは、対等な立場で意見とアイデアを出し合える共犯者

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ーーキリンビバレッジの案件は、内容や温度感が青春botさんのコンテンツとマッチしていたのも、うまくいった理由の一つだと思います。そういったクリエイター情報の集め方やキャンペーンとクリエイターの紐付けは、どのように行っているのでしょうか?

三島:日頃から「最近好きなアカウントある?」とかは周りに積極的に聞くようにしていますね。

ふくま:「こういうテイストの人知らない?」とかね。でも、大前提として、テテマーチは普段からSNSが好きな人たちが集まっている会社だから。僕らはいっつもTwitterを見るか投稿しているから、周りの人たちがどんなことをしているか大体把握しているのもあるし、「あのクリエイターとこのインフルエンサーは仲がいいから、二人で組んだらこの企業の案件が盛り上がりそう」とか、「この人とこの人が組んだら双方のファンが喜んでくれるぞ」みたいなアンテナは、自然と張られている気がします。

三島:PR投稿だけでなく、生活の中で日々発信されているものを見ているからこそ分かってくる温度感もあると思います。社内にはYouTubeをずっと観ているとか、インスタをめっちゃ観ているとか、Twitterを一日中観ているとか、仕事とは関係なくSNSが好きだから観ている人が多い。日常的に観ているからこそ知り得る情報や温度感があって、それこそが重要かなとは思います。

― 今後、こういう人と組んでいきたい、みたいな希望はありますか?

ふくま:インフルエンサーやクリエイターともどんどん繋がっていきたいですが、それと同じくらい、「餅屋」をパートナーとして見てくれる会社と出会っていきたいです。単なる発注先ではなくて、一緒に目的を持って共創できる仲間みたいな関係になれたら、きっともっといいものができると思うので。さっきの青春botさんじゃないですけど、「一緒に作っていこう」という意思が、リーチ数だけの目標から脱する上でとても大切なんです

三島:あとは、意見やアイデアをくれる人がいいなとすごく思っています。僕らが考えた企画がクリエイターの立場になったときやパートナーの立場になったときにはどう感じるのかっていうのは率直な意見をもらうまで分かりきることができないので。そういうときに「こうした方がいいんじゃないか」とか「こういう風にするともっと盛り上がるんじゃないか」みたいな議論が生まれると、そこからお互いを高め合える関係性が生まれてくるので理想かなとは思います。


フォロワー数よりも、好意的なエンゲージメントを求める世界を目指して

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ーーリーチ数だけを目標にしている現状のインフルエンサーマーケティングから脱することを掲げても、パートナーとなる事業会社や広告代理店からは「じゃあ何を新たな指標にするんですか?」と聞かれそうな気がしますが、どのように考えていますか?

ふくま:定量的な指標としては、エンゲージメントをこれまで以上に見ていきます。インフルエンサーをアサインするときはフォロワー数だけを見るのではなく、どのくらいいいね!が集まっているか、どんなコメントがついているかを常に追っています。定性的な側面としては、コメントにどんな内容があったか、好意的に受け止められているのかをチェックしています。

三島:「リーチはいらない」って言うと、嘘になります。リーチはもちろん必要なんですよ。ただ、リーチ数はフォロワー数と相関しないんです。10万フォロワーいてもエンゲージメントが低かったらリーチも伸びないし、逆にいいね!が集まるアカウントはフォロワー数が少なくてもリーチ数もちゃんと伸びるんです。いいね!やエンゲージメントを追うことによって、リーチも最大化していく。その見方が正しいと思っています。

― 会社によっては「いや、インプレッション数が一番でしょ」「いくら企画で勝負しても、フォロワーの数で勝負した方が早いよ」って発想のインフルエンサーマーケティングを続けるところもあると思うんです。そういった会社や業界の雰囲気とどのように立ち向かっていこうと考えていますか?

ふくま:ちょうどタイムリーに某総合広告代理店さんと話していて、そういう議論になったんです。そのときは「ただの認知じゃなくて好感認知、好意度が上がる認知がいいじゃないですかね」みたいな話をしていました。極端な話、同じ10万リーチでも、エンゲージメントが100と50じゃ、100の方がいいに決まっているわけです。たとえリーチが8割になっても、エンゲージメントが高い施策の方が記憶に残っている人が多い訳だから、そっちの方がいいに決まっている。ただコンテンツがタイムラインに流れてくるだけじゃ、見たとしても覚えていないですもん

― 本当に一瞬で流れていきますからね。

ふくま:だから、印象に残っている人をもっと増やせるようなコンテンツを作ることによって、一週間後に買いに行こうとか、目に入ったら手に取る人を増やせるはずなんです。そういう質の高いリーチを取っていくためにどうしたらいいか、少し考えませんか、といった意思を示すための餅屋だとも思います。

三島:広告代理店にも僕らの存在を知ってもらいたいですけど、クリエイティブを作っている会社やインフルエンサーの方たちにも、餅屋いいよね、面白いことやっているよね、みたいに思ってもらえるようにしていきたいです。プレイヤーが増えることが大事ですし。

ふくま:あとは広告代理店やエンドクライアントが、餅屋に具体的な案件の相談をしてこなくても最悪良くて、僕らの活動を見て「うちもインフルエンサーマーケティングの動きを変えていかなきゃな」と思ってくれるだけでも、意味があります。これまでビジネスモデル的に儲かったからやっていた仕事だとは思うんですけど、今10割あるものを3割、僕らのような考えの施策に変えるだけで、マーケットは結構ガラッと変わるのかなとは思っているので。

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リスト化されたインフルエンサーのアカウントに片っ端からdmを飛ばしてPRをお願いする旧来のインフルエンサーマーケティングから、どこまで脱却し、新たな未来を見せることができるのか。餅屋の挑戦は始まったばかりです。

これまでとは違った施策をやりたいと感じた企業の皆さま、商品やブランドのPRに興味があるクリエイターの皆さま、ぜひ一度、餅屋を覗いていってください!


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