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あなたを幸せにはできない


「楽しいね」

手を繋いで歩いた2回目のデート。

「人が多いから」
そう言って手を繋いだ。

繋がれたその手の温もりが
あなたの隣いることが
本当に嬉しかった。



お昼は私の行きたかったカフェへ。



「どれがいい?なに食べる?」

「一緒に食べたら半分ずつにして沢山食べれるよ」



優しいあなたに夢中になっていく。



「いただきます」


沢山頼んで、沢山食べて、

最後のデザートはしんどかったね。

胃が受け付けないくらいの重たさがあって

2人で残さないように頑張って食べたね。




「ご馳走様でした」






「僕と結婚しても、幸せにはできない。
 でも、人生を楽しませることができる。」


たしか、いつかのあなたはそんな事を言っていたね。

いや、ちょっと違うって修正入るかな?🤭


それでも、

いや、そうは言っても、

確かにそうかもしれない。

幸せにはなれないかもしれない。

むしろ私があなたを幸せにできない。

でも2回目のデートは、凄く幸せで、楽しかったよ。


一緒にいる時間がこのまま続けばいいのに。



夕方

コンビニでお酒を買ってホテルに戻った。

あなたが予約してくれたホテル。

予約してくれてありがとう。


ホテルのロビーってどうしてあんなに良い香りがするのかな

本当に素敵な空間。


部屋の鍵を開けて、2人で入る。

ホテルの服に着替えて、乾杯をした。


缶を開けてすぐに飲もうとするあなたの動きを止めて、

乾杯しよって誘って、


乾杯したあとに、キスをした。


2人で飲みながらTVを見て、お話をして、


お風呂に入った。


初めて一緒にお風呂に入ったね。

別々でお風呂に入りたいって話から

湯船に浸かる時だけならって話になって

私が先に入って洗い終わったら呼ぶからって伝えると

洗ってる時に入ってきたね。

シャワーの威力が強くて騒いでたからかな。


とにかく、一緒に入る事になり

恥ずかしかったけど

一緒に入ったお風呂は本当に楽しくて

こんなにも楽しいお風呂の時間があったのかって

幸せな時間だった。


お風呂から上がって、


一緒にパックをしよって誘ったけど

断られちゃった。

1人でスキンケアをしていると

「やっぱり気になるなぁ」

と良い機会だからってパックをしにきた。

初めてらしい。

これからパックを見かける度に

私を思い出すのかな。




夜は外に食べに行こうとした。

夜風に当たりながら

「涼しいね」

「夜のお散歩みたいで楽しいね」

そう言いながら手を繋いで歩いた。

お店は結局は開いてなくて

ホテルの部屋に戻ってルームサービスをとった。

「おかえり」

「ただいま」

そんな事を言い合って

少し照れちゃったね。



「普段は何を観るの?」

そう言ってお互いに普段見ている動画を紹介した。


どのタイミングで歯磨きをしたのかな。

お酒を飲んで、眠くなって。

あんまり覚えてないや。

でも一緒に歯磨きをしたね。

一緒に暮らしてるみたいで幸せな時間だった。



もっとあなたと話をしたい。

そう思ってたのに寝てしまった。

寝たら朝がきてしまう。

あなたと離れる時間になってしまう。



「おはよ」

あなたは優しい声で囁いた。

ぎゅっと抱きしめてくれた。

触れるだけのキスもしてくれた。

私の頭を撫でながらゆっくり過ごした朝は

とても幸せで

この時間がずっと続けばいいのにって思った。


メイクをしているところを見られながら

私たちはホテルを出る準備をした。



ホテルを出ると

優しく心地良い風が吹いていた。


「昨日気になってたお店に行こうか」

時間はもうお昼時。


一緒にお店に入って、一緒に食べて。


あぁ、もう帰らなくちゃ

そんな事を思いながらも

あなたと食べるご飯は凄く美味しくて、

お店を出たあとは

気になってた鯛焼き屋さんに行った。



駅に着き、

電車に乗った。

あなたはいつも電車を使ってるって聞いてたから

電車に乗ってるあなたを沢山見ていたよ。


私の手を引いてこのままどこかに連れてってほしい

そんな事を思っていたら

空港に着いた。


迷子になる事を心配して

空港まで着いてきてくれた。

ありがとう。



空港のロビーでの受付パネル

表示された私の名前。

私は急いで名前を隠したけど、

あなたはニヤニヤしていた。


本名が知られてしまった。


私たちはお互いの本名を知らない。

あるアプリで知り合った関係だから。

お互いにあだ名で呼んで、

あなたは私の本名を知りたがっていたけど

私は教えなかった。

だからあなたも私に本名を言ってなかった。

本名を使いそうな場面、

ホテルのロビーでは

私は声が聞こえないところまで離れていた。


それなのに、知られてしまった

私の本名。


名前を知れて喜ぶあなた。



「なんで名前を教えてくれないの?」

名前を知りたいっていう欲求で
私の事を考えてくれるから。

そう誤魔化していたものが終わった瞬間だった。



搭乗時刻が近づいてくる。

あなたは私に

あなたの本名を教えてくれた。


ついにお互いの本名を知ってしまった。


「漢字はこれかな?」

そう言うあなたに

どうだろうね?と言う私。

2人で少し笑いながら

手を振って

私は手荷物検査へ。


あなたは駅に戻った。







私は自分の住む場所に帰ってきた。


「ママー!」


可愛い声が聞こえる。

私は汚れた手で我が子を抱きしめた。



もう一緒にいる事が辛くなってきた主人を見つめた。

家に帰れば

主人の親も待っている。


またあの生活が始まる

そう思うと心が苦しくなった。



嘘だらけの汚れた私は

自分も家族も幸せにできない。

あなたを幸せにできない。


本名を知られてしまった。

もうあなたと会うのはやめようと思う。

家族にバレないうちに。

あなたに本当の私がバレないうちに。


幸せにできない。

不幸にさせてしまうから。


静かにそっと

この気持ちと思い出は

私の心の奥にしまい込んで


私は嘘をつきながら生きていく。


ごめんなさい。














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