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読書感想文

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語彙力に乏しいおっさんが読書感想文を書くコーナー。アフィやってません。
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記事一覧

反米同盟コンビこと中露の戦略。廣瀬陽子『ロシアと中国 反米の戦略( 2018 )』

逆走車の視界には自分以外の全員が逆走しているように映る。ロシア、中国は、アメリカが主導する国際秩序に真っ向逆走する二台の大型トレーラーといえよう。反米の一文字で結託するユーラシアの伴走車。しかし二人っきりになるとそこには微妙な空気が流れ始める。反米同盟だけど蜜月っていうほどでも仲良くないよねみたいな関係性。廣瀬陽子氏はこの両者を「離婚なき便宜的結婚」と例える。

カラー革命や NATO 東方拡大に

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巨人と巨人に挟まれた島国の昏い運命 渡部悦和『米中戦争 そのとき日本は』( 2016 )

もともと『米中もし戦わば』は読了済だったが、中国の脅威についてはともかく、東アジア人自体に対する妙な不信感やパターナルな視点に違和感があったので、元陸上自衛隊東部方面総監が著者の本書も読んだ。

人民解放軍に対しては過大にも過小にも評価していない冷静な分析に思う。それゆえに人民解放軍の脅威認識は『米中もし戦わば』よりさらにリアルだ。後に著された『中国人民解放軍の全貌』も併せて読むとより理解が深まる

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『現代ロシアの軍事戦略(小泉悠)』

予算でいうと米国や中国より一桁少なく、総兵力は欧州 NATO 加盟国の半分以下。核を除けば数的にも火力的にも圧倒的に劣勢にありながら、世界に存在感を(現在進行形で)アピールし続けているロシアの軍事力。その強さと、根源たる思想とは何か。「職業的オタク」を自認する小泉悠氏による、費用対濃度が非常に高い一冊。

本書、執筆された時期においては、読者を含めた西側諸国全体に「ハイブリッド戦争」という概念が注

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プーチンの実像 孤高の「皇帝」の知られざる真実(朝日新聞国際報道部 駒木明義・吉田美智子・梅原季哉)

適度な角度、距離感、密度、そして“熱”を帯びたプーチン分析本

プーチンについては「スパイから大統領になった」程度の知識しかなかったため購入。
朝日新聞国際報道部連名での著作となっているが、大部分はモスクワ支局長を歴任した駒木明義氏が著している。
さまざまなプーチン関係者に対するイタンビューをもとに、その政治家像、人間像を掘り下げていく。証言者は多士済々だが、長年追い続けただけあって駒木氏自身によ

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