「その女、誰?」エピソード3選
はじめに
「その女、誰?」
創作でよく聞きますよね。具体的な作品名は忘れましたが。それはそれとして、じゃあ「誰」が分かったら次の段階として「その女」に対して「私」はどうするのか。
まずはTwitterを監視するのでしょうか?そこから遠回しに「その女」の属性を批判するツイートをするのでしょうか?「●●な髪型の女は〜」とか「●●してる女は〜」とか。
同人音声で「大好き❤️(ASMR)」と囁かれているオタクの僕はわかりません。こういう時は過去の先例を見てみるのが一番です。
ただ、そこで一つの考えが浮かびます。過去といっても…明治とかよりもっと以前の時代はどうしてたんでしょう。江戸は?室町は?鎌倉は?そもそも身分が色々あって一般的な事例はあるのか。
オタクが一人で考えても仕方ありません。気になったので調べました。
結論からいえば、答えは「女性側が徒党を組んで相手の女の家を襲撃してぶっ壊す」「女性が薙刀持って男を殺そうとする」でした。
日本人が温厚って嘘だろ。
※2200文字くらい
※なるべく史料を確認していますが、あくまで本記事の記述は参考程度でお願いします。
本編
「その女、誰?」①
時は平安。西暦で言えば1010年。紫式部の『源氏物語』が成立したころ。
権勢を極めた藤原北家の一門であり位階は正二位(現代では総理大臣が死んだら叙されるくらい偉い。在任期間が長いと従一位となる。安部元首相とか)であり官職は権大納言(現代で言えば国務大臣くらいの役職)の藤原行成は日記の「権記」にはこう記されています。
「望月の~」の短歌でお馴染みの藤原道長の侍女が夫の愛人の屋敷に30人の下女を率いて襲撃した記録です。
ヤンキーだろこいつら。もはや「平安卍リベンジャーズ」を名乗っていいのでは?
この「(後妻の)女の家に襲撃する行為」を「後妻打ち(うわなりうち)」といいます。これは風習となり、日本に定着していきました。それも約600年。こんなもん定着させるな。
なお、「お前そういうのどこで調べてんの?」については国際日本文化研究センターの「摂関期古記録データベース」を利用しています。
少し脱線しますがなんか下の方にも不穏な記事があります。
これについては触れません。前後の文脈が不明なので。日本古典に詳しい人いたら教えてください。
「その女、誰?」②
「誰よその女」からのトラブルで有名な例として、他には鎌倉幕府を開いた征夷大将軍・源頼朝の正室である北条政子の事例があります。
源頼朝は「亀の前」という女性にゾッコンでした。北条政子が妊娠中にガッツリ入れ込んでました。奥さんが妊娠中に別の女性に夢中になるという典型的な不倫カスムーブは1000年前からあったんですね。
これを知った北条政子はブチ切れます。父親である北条時政の妻の親族である牧宗親に、当時亀の前が住んでいた住居をぶっ壊させました。亀の前は命からがら大多和義久という武将の家に逃れます。
亀の前が受けた仕打ちを知った源頼朝は北条政子にブチ切れ…ずに、実行した牧宗親に対して本人が泣いて謝るくらいボロクソに叱ります。いや、そこは北条政子に言えよと個人的には思うのですが、たぶんマジで殺されかねないので言えなかったのでしょう。
そしてこれを耳にした北条時政は義理の兄弟が受けたこの仕打ちに激怒し、一時的に鎌倉から立ち退いてしまいます。当時は「一族」というのは現代と比べ物にならないくらい強い結びつきでした。
結果的に旦那が一人の女に狂ったせいで、鎌倉幕府の中枢はクソ混乱しました。もう終わりだよこの幕府。実際に終わったけど。
「その女、誰?」③
江戸時代初期、陸奥国(東北)に内藤忠興という大名がいました。大阪冬の陣では勝手に手兵を率いて徳川陣営に参戦するくらい血気盛んだという逸話がある一方で、治世に於いては新田開発などを行うなど善政を敷いていました。有能。
内藤忠興はある時、奥さん(酒井家という大名の娘)に内緒で美女を集めてワイワイ!していました。するとこれを知った奥さんは大激怒。薙刀を振りかざして旦那を追いかけまわしました。
これに懲りたのか不明ですが、内藤忠興はそれ以降女性との関係は慎んで過ごしました。
正確な話が思い出せないのですが、鎌倉時代~江戸初期って人間の命が軽すぎるエピソードがタコみたいにあります。これも、メンヘラがナイフ突き付けてくるノリとかではなく奥さんは本気で旦那を殺す気だったのかなと個人的には思っています。
なお、これが遠因か不明ですが内藤氏も酒井氏も子孫は明治時代に華族(≒貴族)に列せられています。
おわりに
ちなみに「後妻打ち」というこの狂った風習は1600年代には廃れたようです。逆にいえば600年も続いたのが怖すぎるだろ。
徳川幕府万歳。
「女性は男性の後ろに立ってろ」みたいな風潮、絶対に””嘘””だなと思ってます。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
以上
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