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元彼とカラオケに行ったので失恋ソングを歌ってやった

2年ぶりに元彼と再会したのだが、その際にカラオケに行くことになった。

≪元彼再会話はこちらです≫

なぜカラオケなのかというと、元彼の仕事の関係で会えた時間が遅く(23時前)、そこからとりあえず開いているお店に入ったものの23時半ラストオーダーと言われてしまい、23時半以降も開いているお店を探したもののご時世柄なのか見つからず、ということで24時間営業しているカラオケへと入店したのである。

ちなみに前回投稿した記事では割愛したのだが、この再会には元彼の後輩もなぜか同席していた。元彼なりの「下心のなさ」の表れらしい。わかりにくい。

そんなこんなでカラオケへ入店した。
私は歌うつもりはなく、「なぜ急に連絡してきたんだ」とか聞きたいことは山ほどあったし、「これからも友達としてご飯とか行きたい」とか言われたら即刻お断りしようとか、そういうことを考えていた。

しかし、入店していきなり真剣に話すのも……と元彼は思ったのだろう。普通に歌い始めた。しかも「俺、高校生の時、この曲めっちゃ好きやったねんなー!」と言いながら入れたのは、Aqua Timezの『自転車』。
何を隠そう、私の青春時代はAqua Timezと共にあったと言っても過言ではないほど、高校生から20歳くらいにかけて、私はAqua Timezが大好きだった。ファンクラブにも入っていたし、CDは欠かさず初回限定版を買っていたし、ライブにも毎年行ったし、ライブDVDが出たら買った。辛かった部活も、受験時期のことも、楽しかった思い出も、Aqua Timezのどの曲を聴いても私の脳内にすべての思い出がフラッシュバックするのだ。それくらい私はAqua Timezの曲をずっと聴いていた。

『自転車』はAqua Timezのインディーズ時代の曲で、ライブでは必ず歌われて、客席のファンはサビの部分でタオルをぶんぶん振り回す、とても盛り上がる曲だ。歌詞も可愛いというか、青春がそのまま歌になったような歌詞だ。もちろん私はこの曲が大好きである。

付き合っていた頃にはAqua Timezの話なんて一切しなかったのに、別れてから、しかも2年ぶりの再会でこんな事実を知るなんて。もし当時知っていたら、ドライブの時のプレイリストにAqua Timezは入っていたのだろうか。

そんなことを考えながら、「私もこの曲めっちゃ好き!」と、大好きだったAqua Timezのことだったので思わず口からそんな言葉が飛び出していた。
これに元彼は気を良くしたのか「じゃあ一緒に歌おうや!」と言ってきた。

が、私はそんな軽い女じゃない。いくら好きな曲とは言え、なぜ元彼とデュエットなんぞしなければいけないのだ。Aqua Timezという私得な選曲にテンションが上がったのもつかの間、私はスンっと元通りになった。そして頭で思った「なぜお前とデュエットしなければいけないのだ」という考えがそのまま口から飛び出していた。

元彼は「そこまで嫌がらんでも……」と少し悲しそうにしていたが、私はお前が私を振ったことを忘れてはいない。そんな簡単に仲良しこよしなんてできないのだ。

その後も何曲か、元彼と元彼の後輩が二人で歌い続けていた。私は引きつっていたとは思うが、とりあえず微笑みながら画面に映る歌詞をひたすら目で追っていた。そして思うのだ。なんつーカオスな空間なのだと。

元彼と元彼の後輩と私、イン、深夜のカラオケ。カオス。
この時間はなんなんだ。一体このカオスな時間はいつまで続くのだ。ていうか、なんなんだ、元彼は。話をするために、飲食店が開いていないからカラオケにやってきたんじゃないのか。何を楽しそうに歌い続けてやがるんだ。そして元彼の後輩よ、お前絶対気まずいだろ。先輩とその元カノと自分っていう、後輩からしてもカオスな空間でしかないよ。もう申し訳ないよ。気使ってもらって、逆にこっちが気使いすぎるよ。

そんなことを思いながら歌い続ける二人を眺めていた。二人が歌うのは、ちょっと盛り上がるような曲とか、楽しそうというか、明るいというか、そんな感じの恋愛ソングだ。

「なんか気にいらねぇなあ」というのは、その選曲を聴いていた私の率直な感想だ。何を楽しそうな曲ばっかり、楽しそうに歌ってやがるんだよ。こちとら振られた男と再会して、店が開いてないからとカラオケに連行され、静かにゆっくり話そうと思った矢先に青春ソング×盛り上がりソング×前向き恋愛ソングって、もうふざけんなよ!!!

「そろそろ歌いや!」と私にマイクとデンモクが渡された。数秒考えたのちに私が入れた曲は、HYの『366日』である。そう、ガッチガチの失恋ソングである。

ちゃんと聴いたことがない人は、ぜひとも歌詞を検索してみてほしい。なかなかに元彼を引きずっている女の歌だ。
念のため言っておくが、私は元彼に振られてしばらくは引きずっていたが、2年の歳月の間にダイエットをはじめとする自分磨きをしたおかげで、もうなんとも思ってはいない。未練もクソもない。

ではなぜ『366日』を選曲したのか。とにかくこの、ちょっと楽し気な雰囲気をぶち壊してやりたかったのだ。元彼に「お前が私に連絡をよこして、今日再会して、カラオケにまで来ている意味をよく考えろよ。決して楽しく歌って楽しい時間を過ごすためじゃないだろ????」ということを、カオスな方法で知らしめてやりたくなったのだ。

何こいつ、性格わる! と思った人もいらっしゃるだろう。
潔く認めよう。私は性格が悪い。

最初は合いの手やら「上手やなー」などと言葉を挟んできた元彼だが、サビに差し掛かるくらいになるとだんまり状態になり、画面に流れる歌詞をじっと見ていた。私は仲宗根泉になりきり歌いきってやった。

歌い終わったあとは、歌っている最中よりもカオスな空気が流れた。元彼が絞り出すように「……普段声張らへんのに、結構声量出るんやな」と感想を述べてきた。本当に言いたいことはそんなことではないだろうに。

気を取り直して、再び元彼や後輩が歌った。やっぱりハッピーな曲だった。私にも再び順番が回ってきた。性格の良い私は、やっぱりこの空気を壊したくなってしまった。困った性である。2回目の選曲は、Official髭男dismの『Pretender』である。ああ、女々しい奴だ。歌詞の中の男も、私も。

画面に『Pretender』が映し出された瞬間から、元彼も後輩も黙って画面を見つめていた。サイコパスな女の顔面なんぞ、見てられないのだろう。私もそう思う。私は先ほどの『366日』と同じく、今度は藤原聡になりきって、しっとりと声量大きめで歌い上げた。今日ほど自分が音痴じゃなくて、そこそこ歌が上手くて良かったと思った日はないかもしれない。

その後も、元彼が私の歌や選曲をいじってくることはなかった。もしいじってきたら、私は彼を勇者並みに褒め称え、そして聞いただろう。「そのいじりは素か? それとも嫌味か?」と。さすがにこのカオスでサイコパスな選曲をいじってくるほど、私が一度でも好きになった人が鈍感でないことに少し安心した。実際、選曲には嫌がらせの念しか込めていなかったから、聞かれなくてよかったとも思った。

その後は前回の記事にも書いたように、きちんと話ができたので私としてはすっきり綺麗に終わった。ちなみに後輩は気を使いすぎたのか、一人朝まで爆睡していた。本当にすまなかった。

あまりないシチュエーションだとは思うが、もし元彼から連絡があって会うことになり、しかもカラオケに行くようなことになった女性たち。そんな人たちがいるのならば、ぜひともガチガチの失恋ソングばかりを選曲してみてほしい。流れるのは気まずくて、カオスな空気だけだ。そして、あなたは間違いなく、元彼界隈で「サイコパスな女」扱いされるでしょう。

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