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フィンランドに行きたい欲

相変わらずストレスフルな日々が続いている。
どうにもこうにも仕事がしんどくて、体力的にならまだしも精神的にしんどいと感じることがとても多く、帰宅後はもちろん休日も何もしたくなくてベッドに張り付いてしまっており、時間を無駄にしてしまっている自分に嫌気が差す。

物心ついた頃からもっぱら米派の私なので、パンが食べたいと思うことは年に数回あるかないかだ。しかし、先日ふいに「シナモンロールが食べたい」と猛烈に思った。

私と北欧の出会いは、はっきりと覚えていないが、学生時代の北欧ブームで存在を認識した。友人がmarimekkoの代表デザイン・ウニッコのバッグを持っていたのもよく覚えている。可愛いなぁと思いながらもその値段の高さに驚き、手を出すことはなかった。

大学を卒業し、日本語教師を志して国内の日本語学校の選考に挑んでいたが、どの学校でももれなく面接時から感じたブラックさにやっていける気がせず(そうでない日本語学校もあるのかもしれないが)、夢を諦め、普通に就職活動を開始した。そこで出会ったのが前職の北欧雑貨と生地を輸入販売している会社だった。ペラペラに英語が喋れるようにはならなかったものの、海外と関わりたい! 少しでも英語を使えるところが良い! という思いから応募したのだった。

当たり前だが、扱っているものはほぼ100%北欧の商品だった。北欧デザインというものに初めて触れ、デザインにも意味があることを知り、毎日楽しく働いていた。北欧に触れていたものの、商品に触れていただけで実際に現地に赴くこともなく、ライフスタイルを学ぶというような研修があるわけでもなかった。自分で本や雑誌を買って学ぶこともあったがそこまで興味を持つこともなく、興味があるのはもっぱらテキスタイルデザインやインテリアに関してだった。

ライフスタイルに興味を持ったのは、転職して現在勤めている会社で働き始めたからだ。北欧関連の会社ではないが、運営している直営店で北欧雑貨を取り扱っていたり、企画を考える際に北欧からアイデアを取り入れたりしている。その一環で、希望者(レポート選考・定員あり)がフィンランド研修に行くことができる制度があった。

私が入社してすぐ募集が始まり、運良く定員割れだったこともあり、その年の夏に初めてフィンランドへ降り立った。翌年からの応募は定員5名に対し10名以上の応募が続いたので、本当にラッキーだった。

空港からヘルシンキに向かうバスの中、道路の脇に見える白樺並木に心が躍っていた。フィンランドに降り立った感がどくどくと湧いてきた。街も道が広く、人もせかせかしていなくて、時間がゆったり流れているように感じた。知っていなければ、ここが一国の首都だということはあまり感じられない穏やかさだった。

研修と言えども、実態は「北欧のライフスタイルを体感する」というものと「社内のおつかい(直営店で販売する現地買付の雑貨やディスプレイに使えそうなもの)」といった内容である。帰国後にレポートは書かなければならなかったが、それを除けば交通費と宿泊費の負担がない旅行のようなものである。楽しむしかない。

ヘルシンキではmarimekkoアウトレットや蚤の市で買い物を楽しみ、タンペレではコテージを借りて泊まり、昔ながらの薪サウナからの湖にダイブ! も体験した。日本のサウナは暑くて苦手だが、フィンランドのサウナはなんだかホッとして癒されるものだった。日本のお風呂と近しいものがあるという意見にも納得である。

いろいろと体験したが、私が一番楽しかったのは、ヘルシンキで行った「REGATTA」という湖畔にあったカフェである。

こちらがREGATTA(レガッタ)

一緒に研修に行った同僚たちとここでシナモンロールを食べ、コーヒーを飲み、マッカラ(フランクフルト)を焼いて食べたのだ。


シナモンロールとコーヒー
マッカラを買うと自分で焼いて食べることができる

同僚と何を話したとか、そういったことは一切何も覚えていないのだが、私はもう一度ここへ行きたい。で、何がしたいかというと、ひたすら景色を眺めながらボーーーーーーーーーーーーーーーーっとしたいのだ。そう、ボーーーーーーーーーーーーーーーーっと。

もちろん電子書籍リーダーも持って行くし、PCやiPadも持って行くと思う。読書したり、こうやって文章を書いたり、お絵描きしたり、ひたすらボーーーーーーーーーーーーーーーーっとしていろいろ考えたり、1日中……は飽きるかもしれないけれど、そういう時間をここで過ごしたい。そう、わざわざフィンランドのREGATTAで!!!!!!

もちろん買い物もしたいし、公衆サウナにも入りたいのだけれど、ひたすらこの空間が恋しい。1回しか行ったことないし、そんなに長時間滞在したわけでもないのだけれど、ここにどうしても行きたいのだ。そしてボーーーーーーーーーーーーーーーーっとしたいのだ。

我が社には毎年、有休強制消化という名の夏休みがあるので、そこを利用して行ってやろうかと目論んでいる。懐事情だけが問題ではあるが、そこはどうにか解決したいところである。

しかし最近のストレスフルな日常を踏まえても、夏まで待てない。猛烈にフィンランドを感じたい。ホッとしたい。そう思った私は先週の日曜、夏に近隣の百貨店で開催された北欧フェアで購入した本場のシナモンロールを冷凍していたことを思い出し、それを映画『かもめ食堂』を見ながら食べた。しかし、かもめ食堂を見ると決まって和食が食べたくなるので矛盾が生じるのだが、それでも私は米が食べたくなる欲求に打ち勝ち、シナモンロールを食べたのだった。感じたのは、私が求めていたホッとした感覚だった。

でも、もうストックしていたシナモンロールはそれで尽きてしまった。新たなシナモンロールを買いに行かなければならない。関西圏でシナモンロールが購入できるお店を調べたのだが、アメリカのシナモンロールばかりが検索に引っかかる。そんなバカな!

もう少し頑張って検索すると、京都にあるカフェアアルトが検索に引っかかった。社内研修でフィンランドに行った際に、入りはしなかったものの現地のカフェアアルトは見たことがあった。かもめ食堂でも、小林聡美さん演じる主人公・サチエと、片桐はいりさん演じるミドリさんが初めて出会う場所として登場している。

ここだ!!!! ここなら間違いない! ここでシナモンロールを仕入れよう!!! と、偶然出張の予定も会議の予定も入っていない本日、年度末の金曜日に有休をゲットし、京都の街に繰り出した。京都は外国人観光客が多く戻ってきており、コロナ前に元通りのように感じた。

京都のカフェアアルト、実は今日3月31日をもって閉店するのだった。最終営業日だし、北欧ファンで混んでいるのだろうか……と不安になりながらお店に着くと、まったく混んでおらずなんだか拍子抜けした。ここだけ現地のフィンランドのようなゆったりとした時間が流れているようにも感じられた。

シナモンロールを食べるかブルーベリータルトを食べるか少々悩んだ結果、現地サイズの大きなシナモンロールはイートインでしか食べられないと言われたため、ここでもシナモンロールを食べることにした。

掌くらいのシナモンロールとカプチーノ

運ばれてきた瞬間、でっっっっっっっっっっっっか!!!!!! と心の中で叫びながらも、一口食べると口の中に広がるシナモンとカルダモンの香りに心が癒された。ああ、幸せだ……。
ミニシナモンロールであればテイクアウトできるとのことだったので、2つ購入した。帰宅したら冷凍保存して、次にフィンランド欲求がマックスになった際に食べることにしよう。

電子書籍リーダー片手に、カプチーノをゆっくり飲みながら優雅なお昼過ぎの時間を過ごした。ちなみに今読んでいるのは、ブレイディみかこさんの『ぼくはイエローで、ホワイトで、ちょっとブルー』だ。めちゃくちゃ面白くて、もっと早く読めば良かったと思いながら読み進めている。英国での話だが、この本が海外に行きたい! という思いを加速させている気もする。日本も好きだけれど、たまには海外に行かないと息が詰まりそうになるのだ。

内装も現地のカフェアアルトを彷彿とさせた。そりゃそうか
ちなみにこちらがヘルシンキのアカデミア書店内にある、カフェアアルト

フィンランド語はまったく読めないけれど、ここで本がある空間に包まれながら読書したいなとも思う。フィンランドでひたすらカフェはしごするのもありだな……(お金……)。

他の北欧諸国にも行ってみたいけれど、やはりフィンランドに惹かれる私がいる。すぐに行くことはできないので、しばらくは今日買ったシナモンロールや、かもめ食堂、フィンランドが特集してある雑誌や書籍を読んで浸ることにしよう。変わらずストレスフルな日常は続いていくが、楽しみは作れたのでそれを励みに生き抜いていくのだ。

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