夢想 vol.1
「じゃあ、いちごちゃんだぁ!」
(えっと、、なにそれ)
初めはそう思った。
入学式が終わって1週間。どこでもよくやる部活動紹介の日。
経験者だからって理由で、全校生徒の前でデモンストレーション。
(入学早々、目立ちたくなかったのにな)
「名前と出身校と、好きな食べ物を教えて下さい!」
“好きな食べ物”
あの時、咄嗟に答えた物が、この後の学校生活を左右するとは思わなかった。
「、、で、○○学校出身です。好きな食べものは、、苺です。」
「いちごかぁー。、、じゃあ、いちごちゃんだぁ!」
「「いちごちゃーーーんっ!」」
(な、なんなの、この先輩たち
自己紹介したよね)
「「いちごちゃん、がんばれぇーー!」」
(は、ははは、、
やりにくいったらないな)
この日、いつもは外さない的当てを見事に全部外した。
(行きたくないなぁ、部活)
わたしは同級生達より早く入部していたので、今日から練習があった。
「あ!きたきた!」
先輩の一人が駆け寄ってきた。
「いちごちゃん、よかったね、良い名前じゃん!」
(どこが)
「あ、はい、よろしくお願いします」
(何を言ってるんだ、わたしも)
「ごめんね、こいつがみんなの前で」
そういって、わたしを部活に誘ってくれた先輩が声をかけてくれた。
「あ!いちごちゃん!俺だよ、あの時の!」
実は、名付け親(許したわけではない)の顔を見てなくて、誰が犯人かわかっていなかった。
「よろしくね!いちごちゃん!」
(うわーー、、
いわゆるイケメンってやつじゃん、この人)
背が高くて、細身で、でも筋肉あって。
(顔ちっさ!)
色黒で、人懐こい笑顔。
「俺、バド出身だから色々教えてね、いちごちゃん!」
(これ、好きになったらダメなやつだ)
なんて、思うだけ無駄なやつ。
名付け親を一瞬で許し、“いちごちゃん”でやっていこうと誓った。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?