五感が研ぎ澄まされ、感性を磨く旅
期待とは外れ、駅に降り立ったときの空はどんより曇り空。
傘がいるかいらないかくらいの雨が降っている。
雨男のパートナーとの旅は決まって雨は降らないという記録もついに途切れてしまうのか、と思われたとき、私は尾道のまちにいた。
尾道は3回目。
1回目は家族旅行で広島に行ったときにたまたま一人時間があったので行ってみた。2回目はJRを乗り継ぎ、始めての一人旅として選んだ。
せっかくの旅行、できれば行ったことのない地に、と思う私としては何度も旅先として選ぶのは珍しいのだけども(ましてや彼も一度行ったことのある場所)何度でも訪れたくなる魅力がそこにあるんだと思う。
港町として有名な地に生まれた私は、山側に住んでいながら海には比較的馴染みはある。だけど、目の前に広がる海は瀬戸内海。島も近いその海はなんだか馴染みのある海と違って穏やかな気がして、感じる風もやさしい。
海がすぐそこなのに、山も近く、気後れしそうな石階段やこのあたりに住んでいる人たちはどんな生活をしているんだろうと思うほどの坂、バイクが通るほどしかない道。それらはいつも平坦な道を歩き、街中までのアクセスもよく何でもある場所に住んでいる私にとって、非日常を感じる。
その非日常さ、すぐ手を伸ばせばそこに自然を感じられる場所というのも「また戻ってきたいな」と思う要因だ。
坂道を登った先、有名なお寺を目指す坂道の中腹くらいの場所が今回の旅の1番の目的地。
この場所でのホテルステイは2年ほど前にも計画してたけども、いろいろあって、念願叶ったリベンジステイだったりする。
旅に求めることって人それぞれだと思うけど、私たちは観光だけじゃなくて非日常な空間でのんびり過ごすことも醍醐味だと思っている。
LOGは「映える」「お洒落な」カフェ&ホテルで有名だと思ってたけども、そんな浅はかな事前情報を持ってしまったのを後悔したほど、今の私のマインドともぴたりとはまった場所で。
LOGをつくったスタジオ・ムンバイはインド西海岸の都市を拠点に活動している。遠く離れた地で活動する彼らがこの場所に目を付けたというのは、なかなかに興味深い。そして、かつての日本人はきっと「暦に沿って暮らす。
土地の恵みを無駄なくいただく。日々の暮らしの中でできることを、自分たちの手でやってみる。」ということを日々なんてことのないようにやっていたんだろうけども、現代に生きる私たちはそんなことは忘れてしまっている。いや、そういうことは「生産性のないこと」として失われつつあるんじゃないかと思う。
効率と生産性を加速させた結果、今度は「持続性がないから」と見直されつつあるんだろうけども、サステナブルやSDGsという流行として消費されているようにも思う。
そんな表面上の配慮ではなくって、身体の内から地球と生きてるんだ!と思うような、ちょっとスピリチュアル的だけど、私の目指したい生き方のヒントを得られるような体験だった。
お部屋の壁や天井、床は和紙職人のハタノワタルさんの手漉き和紙を使用していて、ただ白いだけではないやわらかさがある。
聞くところによるとお部屋の空間や家具のひとつにとっても、たくさんの検証を繰り返してベストを導いたようで、その探求心(という言葉で片付けるのは少々勿体ないが)には感服する。
滞在するお部屋ひとつにしても感動が大きいけども、他のスペースや建物のリノベーション全体のことを思うと、多数の職人が関わりそれぞれの技を駆使した作品のようなものだとも感じる。
こんな浅はかな言葉でしか表現できないことが悔やまれる!
また、お食事は地元の食材がふんだんに使われていて、一品一品説明を受けるたびに「これも広島の??」と思うほど。料理家の細川亜衣さんが監修され、素材のよさを引き出すお料理で舌も喜ぶ。うつわもお料理が引き立つのはもちろんのこと、1点ずつまじまじと見つめちゃうくらい美しい。
お庭にはお料理に使えるハーブや野菜たちも。
調理する際に出る野菜くずたちはコンポストに入れ、お庭で使っているようなのでまさにLOGの中で循環されている!
たった一泊二日、そして、LOGで過ごす時間は1日足らずだったけど、この地での体験は街中で人と情報の波にのまれながら せかせかと生活していると忘れてしまう、全身で感じとっている心地がした。五感がびびっと刺激されて、どんどん研ぎ澄まされるような。
ただいい体験をしたいとか非日常を感じて癒されるだけではなくって、少し高いお金を出したとしても、空間から感じることや本物に触れることが私の中で旅行の醍醐味だったりする。
それが感性を磨くことにもつながっている気がするなあ
尾道ではLOGに限らず、自然と距離が近く感じた。
そんな旅先で感じたあれこれを胸に抱きしめて、日常生活がより豊かにしていきたいと思う。
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