見出し画像

オーストラリア2400km自転車旅12日目🚴‍♂️

12日目  「シュンの拾ってきたもの」

 目を覚ましたのはたぶん7時頃。オージー六人組は俺らの小屋から離れたもう一つの小屋でキャンプをしていたが、その日の朝にはもういなかった。シュンが昨晩の残ったタコ飯でおにぎりをつくってくれた。何から何まですみません。その後俺は洗濯してまた寝た。「また寝んのかいっ⁈」自分でもそう思った。

昼頃むくっと起きてサンドイッチを作ってシュンと食べた。それからシュンは、

「ビーチにヌーディストしてくる!」と、不敵な笑みを浮かべて去っていった。俺は、怠けて書けていなかった2、3日分の日記を書いた。改めて振り返ると、この旅を辞めようと思う毎に、誰かが手を差し伸べてくれる。優しさに溢れてる。シュンにハーブ、太っちょライダー、ディープをくれた夫妻、バスのじーちゃんばーちゃん。不思議だ、、、ありがとう。みんなにお返しが何も出来ないけど、このやさしさはフリーじゃないぞ、この旅終えるコトが出来たら、今度は俺が誰かを助ける側だ。そう思った。日記をゆっくり書き終えたらまた横になった。体も脳みそも伸びきっていた。何もしないということをしにきたのだからそれでいっか。。。

 ヌーディストの儀式を終えたシュンが帰ってきた・・・・片手に買い物袋、もう一方の手に棒を持っている。インディアンが手で叩くタイコの音、あれが頭の中に流れた。

「何それ?」シュンはよくぞ聞いてくれました!という顔をした。袋の中から、何やらを取り出した。それはコケの付いた石ころのように見える。まだタイコの音は鳴り続けている。

「ちっちゃいけど、これアワビ!」
えぇー、、、アワビ⁈
「アワビって、あのアワビ?」シュンはうなずいた。とってきたのはそれだけではなく、『三角だま』なるその名の通り、三角錐の形の貝もあった。これも食べるとおいしいんだとか。なんてたくましい。。タイコの音が絶頂を迎える。

「スゲーなシュン!この海タコだけじゃないんか!もっかい行こ、一緒に!」

「今日はもう潮が満ちて来てしまったからだめ。」そっかぁー、、、やっと音が鳴り止んだ。だけどとにかく海に行こう!シュンはべンチで横になった。俺はその横に立つ。二人でタ日を見た。でかくて赤いタ日。海の中にどっぷりと身を沈めて行く。空は青色がどんどん濃くなって紺色へと変わっていく。その色の変化で、一応時間は流れているんだと知る。星が姿を見せ始める。そうなると、、、あとはシュンの時間。

「あっ、今のはめちゃくちや長かった!3秒ぐらい流れ続けてた。」

「ほんとか?自己申告制やから、どうとでも言えるよな。」

「ウソついても仕方ないでしょ」

しばらく黙って星を眺めていると、恐くなった。この幸せな時間は、ここでの生活は、本当なのか夢なのか。涼しい風が吹き抜ける心地の良い小屋、懐かしい匂いのする焚き火、自分で捕って焼いたタコの味、目の前の海、その波の音、無限に広がる星空、こいつら、、、キレイすぎる。そんなことを考えていると、夜風が少し寒くなってきてサブイボがたった。その寒さが、世界を少し濁らせてくれた。

小屋に戻り、晩飯にソーセージ入りチャーハンを作った。ワインとビールを用意し、この日も火を起こした。その火の中に今日シュンが捕ってきた、アワビと三角だまをぶちこんだ。その上に少し醤油をたらすと、ジュワッとこげる匂いがした。

この世に焦げた醤油の匂いより食欲をそそるものってあるのか⁈

「な、、、なんじゃこりゃっ!うめぇー、うめーぞシュン!」

「ちっちゃいけどアワビの味がするね、うん。」シュンは冷静だ。俺にはすごくうまかった。

火を見ながら、シュンとたくさん話した。。。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?