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オーストラリア2400km自転車旅17日目前半🚴‍♂️

17日目前半​「ローバーン」

蚊がすごい・・・朝5時、体を起した。まだハエは起きていない。ここの人間が起き出す前にさっさと立ち去らねば。キャンプ代をとられないよう6時前には出発した。30分ほど走って、自転車をとめ、朝飯にちっちゃい桃缶を食った。
うまい!桃が好きだ。また走り出す。
膝にはまた痛みが出始めた。仕方なく、マッサージをこまめにしつつ走る。大丈夫、以前ほど落胆していない。
自転車の漕ぎ方、力の入れ方、マッサージの仕方、自転車に乗り続ける手段がたくさんある。
午後1 1時、ローバーンという小さな町、というか村に着く。83キロの走り。

絵本に出てくるような村で、家や建物が模型のように見えた。この絵本のような村にももちろん住民はいて、車の旅だと、ガス欠以外立ち寄ることなさそう。。。
そこの村人一人ひとりに人生があることが不思議に感じられた。ひょっとしてみんなエキストラで、俺が通ったときだけ村人を演じているんだろうか。。。
その村に着いた途端、木陰で横になっている黄ばんだYシャツ姿のアボリジニーに声をかけられた。
「おーーい、 こっちこいやーそこのクレイジーガイ!」
暑さのせいか第一村人は変なノリだった。
「なにやってんだーおい!?」
そう聞いてくるのも分かる。。。この日の暑さは尋常じゃなかった。
「オーストラリアを味わってんだよ」
「バカ!おまえはバカ!」
そのアボリジニーは凍らせたペットボトルの水をくれた。
「持ってけ!バカ」
水を手に入れた。ロープレかっ!と思った。
「おっちゃんの分ある?」
「俺んちはすぐ近くだ!心配すんな」
ありがとう!その場で二ロ三ロ飲んだ。冷たいっ!うまっ!!
暑い中、温かい水を飲むのは気もちいいもんではなく、もう飽きていた。
「おっちゃんありがとう!好きだ!」
このおっちゃんがほんとに存在しているかいないかわからないと思うと、好きなことを言えた。自転車にまたがりペダルを漕ぎ出した瞬間、背中にいつもしょっている小さいリュックの中で何かが“ボンッッ!!”と爆発。
「うぉーーワッツ!!??」
アボリジニーのおっちゃんが腰を抜かした。俺も何が何だか分からない。リュックのファスナーを開けた。中はびちょびちょに濡れて、べタベタ。
爆発したのはコーラの缶だった。シュンとの別れ際に一本貰っていた分。
水と引き換えに、コーラを一缶失った。
「あちゃー、缶の上の部分がぱっくり開いてらー、、、気温何度あんだよ今日・・・」早めに飲んでおけば良かった ・・・コーラだって貴重なカロリー。
パスポート、財布から日記帳まですべてベトベト。。。
う~む。。。
まーいいや、仕方ないと思い直し、そのままファスナーを閉め、自転車に乗った。店を見つけたので、そこでジュースと梨を買った。梨は日本の梨とは違ってひょうたんがたのやつ。コレの冷えてるのがうまい。それから詳しい地図をチェックしたかったので店のおばちゃんにガソリンスタンドの場所を聞き、そこに向かった。俺が持っていた地図はいつのまにやらどこかになくしてしまった。ガソスタはすぐ近くにあったが、、、この村の建物はどこか無機質だ。
そこでまたジュースを買った。今日は異常に冷たいものを飲みたかった。その時すでに財布やリュックはほとんど乾いていたから恐ろしい。それから地図をチェック。次に水補給できるのは40キロ先のカーラッサRHだとわかった。40キロなら屁の河童。そのガソリンスタンドを出ると、すぐ近くに小さなコンクリート造の廃屋があったので、その壁際の影の中でマットを敷き横になった。こんなにたまたま休みやすい廃屋があっていいのか?俺はほんとにゲームの世界に入ったのかも知れない。
涼しくなるまでここで寝て過ごそうと考えたが。。。無理だった。。。
こりゃまずい。吐きそうだ、と思いまたガソリンスタンドに戻っていた。何を買うでもなく中に入り、『エアコン』の恩恵に浸っていた。しかしあまり長居はできないと、また外に出る。
「おかしい・・・ この暑さはおかしいよ、ほんと・・・異常だ・・・」
ガソリンスタンドの前で座り込んだ。目の前には鳥カゴがぶら下がっていて、その中には一匹インコがいた。彼女も暑さで元気がない。
するとガソスタから目の吊り上がったおばちゃんが出てきて、そのインコに氷をあげ始めた。カゴの細い隙間に氷を叩きつけて、強引に入れようとしている。だけどインコがその氷を早くほしがるもんだから、邪魔してなかなか氷をいれられない。早く涼しい部屋の中に戻りたいおばちゃんは、キレた。

「Kill You!!」。。。

おぉーこぇ~・・・
どうにか氷は一通り入り、おばちゃんは俺のほうに目を向けた。
(・・・目を合わせてしまった)ドキドキした。
「ちょっと、あんた。あんたも氷ほしいか?えー!?」

「ほしい。。。でも殺さないで」
「バカ言ってんじゃないよ」
おばちゃんは笑った。そしてフライドボテトを入れる箱いっぱいに氷を入れて持ってきてくれた。めちゃくちゃ優しい人だった。
「ありがとう!しかし今日は暑いですね・・・」
「だから氷あげたんでしょ」
「はい、ありがとうございます!」
氷を手に入れた。その氷を持って廃屋に戻った。マットの上に横になりどうにか寝ようと努めるもののやはり難しい。吐きそうになる。
ついさっき食べたばかりの梨を吐くなんてことはしたくない。
氷を体になすりつけた。この氷には助けられた。ただその氷はすぐに消えて無くなってしまった。誰か溶けない氷を発明できないのか!?
仕方なく、5分に一回体に水をかけた。すぐに蒸発するので、その瞬間が涼しい。
あぁー眠れねーどうしたもんかなー、と途方に暮れていると、さっきの人とは違う若いアボリジニーがこっちに向かってくる。

歩き方が怖い。
「Hi。こんにちは。。。キミはスモーカーかい?」
ん?タバコほしいのか。。。
「俺はスモーカーじゃない。タバコは持ってない。」
「No.no.そういう意味じゃない。君がスモーカーかどうか聞いているんだ。マ・リ・ファ・ナだよ」
どのくらいの量でいくらだ、という話になった。
、、、マリファナって吸って自転車をすれば、暑さも痛みも消えるか、、、なんて考えた。
だけどお金は食べ物と飲み物に優先されなければ。
「ちょっと試しに吸わして?」
「ダメだよ。買うか買わないか。」
「じゃーいいよ。いらない」
つまんないやつだな、という顔をして第四村人は去っていった。やっぱり歩き方が怖い。
異様な暑さの中、何とか時間を殺し、午後4時、そろそろ行くか、と体を起こした。
マットをたたみ、相棒にまたがり、水を補給してもらうためもう一度ガソリンスタンドに向かった。そしたら近くの市民プールに行けと言われる。まさかプールの水を汲めとでも・・・
しぶしぶそこに向かった。そこでちゃんと水道を借りてタンクに水を補充させてくれた。その時俺は、泳いでいた数人の子供達に囲まれる。そして質問攻め。
「何やってんの?」
「どこからきたの?」
「どこに向かってんの?」
「あなた臭うわよ?」
「シャワーあびてるの?」
「何歳?」
「好きな人いるの?」
「膝から血ぃーでてるよ」
どうでもいいことまで言ってくる。
「この棒なに?」
俺は丸めて自転車に積んであるマットに、自分の身長ほどある長い木の棒を突き刺して走っていた。丁度、自転車のしっぽのように。
それは以前メルボルンでファームステイしていた時に、牛や羊をチェイスするのに愛用していた棒。牛のケツを叩く時、思いっきり振りぬくのに丁度いい長さで、いつもその棒と共に大声で叫び、草原を駆け回っていた。そこでのステイを終えた時に、その棒を俺がとても気に入っていることを知っていたボスが、プレゼントしてくれた想い出の代物だ。それで俺はそいつとずっと今までラウンドしてきた。できることなら日本に帰る前に、もう一度あのメルボルンのファームに行って、この棒を一週させてやりたいと思っていた。

「Hey KIDS!この棒はケツを叩くためのもんだぞ!おぉ~今日はかわいいケツがいっぱいあるなー!」
その棒をマットから抜き出し振りかざした。皆キャーッと叫びながらプールに飛び込んだ・・・1人の少年を除いて。。。
その子は後ろを向き、こちらにツンとお尻を突き出している。少し緊張している。
「(・・・こいつ、、やばいな)」
ゾクッとした。とりあえず触れる程度にポンと叩いてやると・・・
「オーイェス!!」叫んでプールの中に飛び込み、そのまま激しい犬かきでプールの反対側まで行こうとしている。
「(泳ぎ下手なんだ・・・)」
子供達はゲラゲラ大はしゃぎ。とにかくその変態がUターンして戻ってこないうちに逃げよう。。。
急いでタンクを自転車に積み、係員にお礼を言って、足早におとぎの村を去った。

ここからの40キロ、短いから甘く見てた。
向かい風がひどく、時速10キロ。
接着剤の上を走っているように重かった。。。

マリファナを買っておくべきだったかな・・・

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