【サクライ雑記】音響ハウス Melody-Go-Round
こんにちは、サクライです。
先日、映画『音響ハウス Melody-Go-Round』を、鑑賞しに長野相生座ロキシーへ初めて行ってきましたので、今回はその感想をnoteにてまとめます。
長野相生座ロキシー
場所は長野市の権堂という繁華街のアーケード通りの真ん中。
渋い映画をセレクトしていて、映画好きには堪らないミニシアターです。
建物の年季の入りっぷりが権堂の街並みと相まって、ふと今はなき上野セントラルを思い出しました。
(上野セントラルは閉館後の跡地には謎な露店がいっぱい出てて、控え目に言ってもディープスポットで、最終的には再開発により建物自体も解体されました。)
もし長野で生まれ育っていたらここに通っていただろうな、と思う映画館です。
音響ハウス Melody-Go-Round
『音響ハウス Melody-Go-Round』はタイトル通り、レコーディングスタジオの音響ハウスのドキュメンタリー映画です。
だいぶネタバレが入る内容なので、まだ見てないという方は後日このnoteをご覧ください。
ベテランの職人タイプのスタッフに、機材オタクなスタッフが楽器や音響機材をリペアしたり調整しながらベストな状態に合わせている様子も映し出されていたりと、お仕事見学的な要素もありつつ、プロデューサーやアーティストの過去の裏話や逸話的なものが多くてなかなか面白かったです。
また回想と並行しながら表題曲の制作風景がインサートされていて、キレッキレな高橋幸宏(YMO)や葉加瀬太郎を見ることができるのも味わい深い。
欲を言えばレジェンドクラスだけではなく、星野源やOKAMOTO'S、くるりなどの世代のアーティストへもインタビューがあれば、より良かったんじゃないかなぁと個人的には思いましたが…(視聴客層を絞った方針なのかもですが)
それは置いといてサクライの面白ポイントをまとめました。
い・け・な・いルージュマジック
今の時代、wikipediaでも見ればほとんどの逸話は知ることができますが、それでも本人や関係者の口からその内容が発せられるのを見ることができるのは貴重な体験です。
資生堂のキャンペーンソングとして制作された忌野清志郎と坂本龍一による「い・け・な・いルージュマジック」は、元々依頼では「すてきなルージュマジック」というタイトルだったのを、二人が主張して変更になったという話を音楽プロデューサーの牧村憲一が振り返りながら語っていました。
タイアップソングはクライアントが全てな案件なので、それを説得した牧村憲一の手腕、そしてその心を動かしたアーティストの魂を感じる逸話ですね。
スカンピン
ムーンライダースの火の玉ボーイの収録曲、「スカンピン」にシタールの音を入れたいという理由だけで白井良明を召集したところ、長靴に風呂敷に包んだシタールという出で立ちでスタジオに現れたという二段落ちのようなくだりは爆笑ものでした。(その後、白井は正式加入でまさかの三段落ち)
The BeatlesやThe Rolling Stones、The Jackson 5も楽曲で取り入れているシタールは、インドの伝統的な楽器で、初めて聴いた曲でも懐かしいような気持ちになってしまう不思議な魅力を持っていてます。
個人的にもハモンドオルガンと並んで音色が好きな楽器です。
ムーンライダースのリーダーである鈴木慶一は、サクライは世代的にMOTHERシリーズの音楽の人のイメージです。
幼少期の体験はその後の成長に影響するというのを、我が身ながらもしみじみ痛感します。(良くも悪くも)
Merry Christmas, Mr. Lawrence
世代の方には常識かもしれませんが、COMME des GARÇONSのランウェイの音楽を手掛けたオノ セイゲンが音響ハウス出身者ということに驚きました。(そして戦場のメリークリスマスのレコーディングエンジニアとは!)
デザイナーである川久保玲からのリクエストは、「服を綺麗に見せる音楽であること」と「まだ誰も聴いたことのない音楽であること」。
本編ではそんなことには一切触れずに、音響ハウスOBとしてインタビューに答えていました。(背景にはリマスターにてリリースされた、COMME des GARÇONS SEIGEN ONOのポスターが!)
いい音とは
映画の締めに「いい音とは?」の問いに対して坂本龍一の答えがとても分かりやすく共感したので、ご紹介を。
武満徹(現代音楽家)が「学生の頃に勤労動員で駆り出された軍の宿舎の中で、隠れながら蓄音機で竹針を使ってシャンソンのレコードを聴いたことが、音楽家を志すキッカケとなった」というエピソード。
当然その環境下で聴こえる音はローファイどころか劣悪とも言えるはずが、一人の人生を変えるほどの感動を与える音だったという面白さ。
そして「ハイファイだから“いい音”だという訳ではない」という端的な言葉を、これほど補完するエピソードがあるのかと感動しました。
さいごに
逸話の一つ一つの内容が面白くて、なかなか格式の高いスタジオのようにも思えますが、スタジオとしての幅の広さを感じさせるのが、タモリのラジカルヒステリーツアーというアルバムも音響ハウスで収録されているという事実。
空耳アワーに通ずる感覚や、ジャズ研で培ったスキャット芸など、ふざけた内容を大真面目に音源にするという最高なアルバムです。
という訳で、最後にイチオシ曲の「雨降り午後」でお別れです。
さよなら、さよなら、さよなら。
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