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国立国際美術館「ピカソとその時代 ベルリン国立ベルクグリューン美術館展」(母が気になったのは...)

 「ちょっと、入り口のところに戻っていい?」
 展覧会会場の出口付近で再会した母が珍しくもう一度見たいものがあるという。母とは入り口付近で私が今回の展覧会についての経緯などが記された「はじめに」を読んでいる時点で既に作品をテンポ良く鑑賞していく彼女とはぐれていた。フラワーアレンジメントのインストラクターをしている母は「勉強のために」とテンポ良くたくさんの作品を鑑賞し出品リストにメモしながら美術館を巡るのが常で、あまり振り返って1つの作品をじっくりと見入ると言うことをしない。そんな母が「そんなにも心惹かれる作品があったのか?!」と少し感動して、「その作品とはなんだろう。初めはピカソだったはずだ」とひょこひょこ作品展を遡っていく小さな母にひょこひょこと小さな私はついていった。まもなく到着した序章。母が真っ先に向かったのは「はじめに」だった。母が見たかった(正確には読みたかった)のは作品ではなく「はじめに」だった。「作品ちゃうんかい」。とりあえず、そうはツッコんだものの、今回のこのベルリン国立ベルクグリューン美術館展、確かに、美術館の成り立ちも大変面白い会であった。「ピカソとその時代」と銘打たれた展覧会でピカソ、マティス、クレーの作品を中心に展示されているが、それらを集めた画商もまた、彼らよりは1世代ほど若くはなるが同じ時代に生きた人だったからである。ドイツ出身のハインツ・ベルクグリューンが自身のためにコレクションし始めたことがベルリン国立ベルクグリューン美術館に繋がっていく。彼の人生もまた、展覧会の大切な要素だった。

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