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なぜブランディングなのか?

私がブランディングにこだわるようになったのには、明確な原体験があります。それはクリエイターを志すようになった直接的なきっかけでもあります。

学生時代、私は部活にうちこみ、その流れからスポーツトレーナーを目指して医療系専門学校に進学しました。学校の授業だけではスポーツへの欲求が満たせなかったので、私は積極的に外に出てスポーツ関係者との繋がりを作ろうとしていました。その時期に出会ったのが、あるマイナースポーツのプロ選手でした。その選手に対して施術だったりのトレーナー活動を行いたいと考えていたのですが、当時私は高校を出たばかりの18歳。全くの初心者だったため、施術以外の諸々の雑務をなんでもやっていました。その中の一つに「大会での活躍を写真に撮って欲しい」という依頼があり、そこから私はクリエイティブの分野に目覚めました。

ちょうど同時期に、彼の選手生活について大きな課題を感じていました。選手が学生だったのも相まって、経済的にも時間的にも活動を継続するのは困難な状況でした。私はトレーナーとして彼の身体の問題に関わりたかった、しかしそれ以前の問題が数多くありました。カメラを持ちはじめたのも重なり、いい写真が撮れればSNSへシェアしやすくなるのではないか?ファンやフォロワーが増えればスポンサーをつけられるようになるだろう。私はその当人の魅力を社会に分かりやすく伝えることで課題を解決したいと考えるようになりました。

18-19歳頃、私は完全にトレーナーとしての活動を辞め、見よう見まねでデザインや写真撮影、動画編集を行うようになりました。その頃にスポーツのベンチャー企業と出会いPhotoshopやIllustratorなどクリエイターの必修ソフトを学んでいきました。そのベンチャーとの関わりの中で「ブランディング」という概念に出会いました。

私の ”ブランディング” のバイブル『ニューヨークのアートディレクターがいま、日本のビジネスリーダーに伝えたいこと』の著者、渡邊 デルーカ 瞳さんは文中でデザインとは何であるか、このように記しています。”わたしたちにとって『デザインする』ということは、クライアントをよく観察し、課題や問題点や強みを見極め、オーディエンスや時代、市場を考慮し、問題解決する方法を柔軟にクリエイティブに考え出し、それを可視化して伝わるかたちに落とし込んでいく、ということです” 私は、渡邊さんが示す「デザイン」にとても感動しました。素敵な才能を持つクリエイター、プレイヤーやアーティスト、様々な業種・集団が正しく世間と繋がれるようにする。それが「デザイン」であり ”アートディレクター” と呼ばれる人達の仕事なんだと。私はアートディレクターになりたいと考えるようになりました。

アートディレクターが行う ”ブランディング”の大まかな内容は、対象が持つ個性や唯一無二の魅力をうまく引き出し、世間から見て正しく理解してもらえるように、ロゴやコンセプトとして可視化していくこと。そしてCMやSNSなど企業側から世間に行う発信全てに、抜け漏れや矛盾なく「想い」をデザインして落とし込んでいくこと。そう考えています。ありがたいことに、私がメインアートディレクターとして初めて、ある音楽プロジェクトのブランディングに着手することになりました。それがロックバンド「LoneMarch/ローンマーチ」の結成企画です。

音楽にブランディングは正しく機能するのか?そもそも、ブランディング自体をやったことがないので何もかもが初めての経験で、困惑と実力不足を痛感する日々でした。音楽が難しいとされる部分は、皆さんご存知「誰がどのように売れていくのか全く予想がつかないこと」そして「売れたとしても、リターンとして自らの手元にお金が入ってくるタイミングがずっと先になる」ということです。前者は私にとってはあまり問題ではないと思っていました。なぜなら、音楽に限らず、価格や機能での競争はとっくの昔に差がつかないようになったからです。良いものが当たり前に売れるわけではないし、悪いものでも運やタイミングで大きく注目される可能性がある。その掴みどころのなさが、音楽の、特に日本音楽界の問題でもあり面白い部分でもあると思います。「音楽業界」でブランディングの意義を証明できれば、経済的な理由で音楽の道を諦めることになった数多くのアーティストを救うことができるかもしれない。私自身も、売れていないまだ無名のクリエイターであるので、自分自身を救う意味もある、大切なプロジェクトでした。


※後半に続きます。


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