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そのしんどさは「こころ」か「脳」か/心理学と精神医学

あかつきこころの相談室の臨床心理士は、併設の時のまち訪問看護ステーションのご利用者様の元へ、看護師とともにお伺いすることがあります。

その中で、「そのしんどさは、こころ か 脳 か?」ということに何度も出会いました。そのお話を少しさせていただこうと思います。

臨床心理士と看護師

まず臨床心理士と看護師は、得意分野が大きく違います。受けてきた教育の内容も全く異なると思います。私は臨床心理士なので、看護師の教育は受けていませんが、共に働くなかで予測するに、おそらく身体疾患や服薬、他職種と連携するということが大前提にあるのだと思っています(全国の看護師の皆さま、違っていたらすみません)。

それに対して臨床心理士は、身体疾患のことは教育の中にありません。精神疾患やそれらに関するお薬について少し学ぶことはありますが、圧倒的にカウンセリングの技法や心理学について学ぶ時間の方が多いです。「お話をお聞きすること」に重きを置いています。というよりも、臨床心理士たちはそれが一番大切なところなのだと思います。
そのため心理検査や知能検査についても学びますが、決して数値や結果だけでその人を判断してはいけないというのはとっても大切なことです。

これらの違いを考えると、やはり得意分野や出来ることを分けて考えるほうが良いと思います。

そのしんどさの要因は脳?

私が大学に入学して心理学概論の授業を始めて受けたときのことを今でもよく思い出します。その先生は、「心はどこにあると思いますか?」と私たちに問いました。みな答えはそれぞれでした。脳にあると言う人、心臓部分にあると言う人、それ以外の部分にあると言った人もいたと思います。

厳密に言うと、心は脳なのでしょう。
しかし、治療という部分では心と脳を分けて考えたほうが良いと思います。

脳の調子が悪くなってしんどくなっている場合は、看護師さんの得意分野であると思われます。疾患のメカニズムがあり、それに効果があるとされる薬があります。それらを医師と共に、その方に合うように調整していくことは、臨床心理士には難しい部分であると思います。また、それに伴って生活の場を整え支えていくということも看護師さんは上手だなぁと感じます。

そして、脳の調子が悪くなっている人に対してカウンセリングをしてしまうと、かえって悪化してしまう可能性もあります。それほど、カウンセリングというものは時に強力な力を持ってしまうのです。

しんどさの要因がこころの場合

この場合には、臨床心理士がお役立ちできるかもしれません。

考え方を変えたい、PTSDと診断され長引いている、今までの人生を振り返りたい、日常生活は何とかやり過ごしているけど気持ちがしんどい...

こういう状態だとこころの調子が悪いのだ!と明確に示せる指標はありませんが、上記の内容はこころの調子が悪くなっていることが多いです。こころの調子については、臨床心理士がカウンセリングを行なってしんどさの解消を共に目指すことはできると思います。

しかし、ここで大切なことは、しんどさの解消をするのは臨床心理士ではなくあなた自身です。

臨床心理士はお話を聞いていて気付いたことや認知行動療法的な視点でお伝えできることをお伝えしたり、あなたのしんどさの解消の役に立ちそうなことを一生懸命探し、考えます。しかし、それを受け入れるか、また実行していくかはあなたにしか決められません

また、カウンセリングは優しくあたたかいものばかりではありません。時には、ずっと目を背けていたことと向き合うことが必要であったりと、しんどさに直面してもらうこともあります。そういう時は、こころの痛みを伴います。

カウンセリングに行ったのに、かえってしんどくなってしまった!という経験をされた方もおられるかもしれません。その中には、臨床心理士の至らなさもあったかと思いますが、上記のような理由があったのかもしれません。こころの痛みを伴うことが予測される場合は、必ずそのことをお伝えしたほうが良いとは思いますが...

さいごに

あなたのしんどさの要因が、こころか脳かということの判断がつかなくても大丈夫です。そのために、医師や看護師などの医療従事者がいて、臨床心理士もいます。

あかつきこころの相談室でも、臨床心理士のカウンセリングの中で、身体疾患が疑われる場合などの看護師の得意分野だと思われるときは、臨床心理士ではなく併設の時のまちの看護師との面談をお願いすることもあります。

それは、あなたのからだやこころを守るために大切なことです。

カウンセリングが良いのかそれとも医療の力が必要なのか、困ったことがあればご相談いただければと思います。