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デーリー東北「ふみづくえ」執筆⑤|集え、暇を持て余している勇者たち

生まれは宮城県ベッドタウンの私の生家は、田舎の中でも辺鄙な所にあり、終点の最寄りバス停はひどい間引き運転にさらされておりました。「通勤通学の時だけあればよかろう」というマッチョな時刻表。朝来たら空欄数段、次は半端な時間の夕方です。
数キロ移動したいともなると、大体は親の力、つまり親の車と運転を当てにしなければなりません。「駅まで送ってくれ」をメインに「どこそこへ連れて行ってくれ」と頼んだ時のあの親の面倒くさそうな感じ! 夜の用事で自力移動は完全にタクシー頼みでした。1万円よ、さようなら。
さて、現居住地の階上町と八戸市の間にはバスと電車、2通りの公共交通機関があります。直通アクセスが悪いだとか、本数が少ないだとか、さまざま不満もありましょうが、私の実家よりもマシでございます。取りあえずは朝晩1本2本じゃありません。田舎の代名詞青森より不便な田舎に暮らしていたなんて、階上町に住んでみるまで思いもしませんでした。
ちなみに、田舎といわれると憤慨する方もいらっしゃいますが、青森というだけで田舎という名の「ブランド力」を欲しいままにしているのは、よそから見たら大変なアドバンテージですよ。ふんすふんす。閑話休題。
そんなわけで、私的には田舎にいながらにして交通の利便性が高まりまして、たまにいそいそとバスでお出かけを楽しんでおります。
行き先の一つ、飲み屋のメッカ八戸の中心街は乗り換えなしの往復1100円でお家に帰ってこられます。都内に勤務していた時は、運賃は安くとも乗り換えが多く、結構辟易していました。移動費はタクシーを使っていた時より末尾のゼロが1個減りました。
そしてこれがまた絶妙な終バス時間でして。夕方6時から飲んで、いい気分になった頃合いの8時ごろに終バス。バスに揺られてちょっとうたた寝なんかしているうちにお家に近づくわけです。帰れば9時台。寝支度してしまえば、いい時間帯にバタンキューと相成ります。
終バスを逃してしまった場合、中心街近辺のホテルに素泊まりした方がタクシー代より安いというバグ技には笑いました。どんだけ飲ませるつもりなのですか、この街は。
路線バスもさることながら、思いがけず楽しめるのが町で運行しているコミュニティバス。コミュニティバスは地元民御用達のマニアックな路線を走ります。時には知られざる場所に出合うこともあり、それがまた冬でないと見られない美しい情景であったり、アイヌ語由来と思われる難読地名のバス停であったりと、冒険感ひとしおです。しかも100円。100円の冒険。太っ腹。移動費はさらに末尾のゼロが減っております。
バスを駆使すれば町内から電車に乗り継ぐことも可能で、電車にさえ乗ってしまえば、青森方面でも久慈方面でも行こうと思えばどこまでも行けてしまいます。「終電逃したら適当に泊まってくればいっか、安いし」と思い始めたら危険です。なんと恐ろしい冒険心をくすぐる土地なのでしょう。〝始まりのまち階上〟とでも称して冒険者ギルドでも作った方がよいのではないでしょうか。集え、暇を持て余している勇者たちよ。
隙あらば他の町のバス旅もしてみたいなあ、などと思う今日この頃です。
(DTPデザイナー、階上町在住)







大変申し訳~~~~!!

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