SAKANA

気が向いた時につける日記のようなもの

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最近の記事

食道の住人

おそらく、自分の中で消化ができて完結した話しか書くことはできない。祖父の時がそうだったように。 私は父について、きっと、父が死ぬまで書くことはできない。 首を締められたことも、殴られた事も、服を脱がされたことも、怒鳴り散らされながら理不尽な謝罪を強要されたことも、意味もわからず泣きながら謝罪をしても何日間も無視をされたことも、数えきれないあらゆることが断片的な出来事として登場することはあっても、その時の情景を思い出すたび、私は恐怖と憎悪で頭の中にもやがかかる。 そして、

    • 号泣でもできれば

      号泣でもできれば私の中の澱は流れてゆくのだけど 私はひとりで泣くことができない ベッドの上で小さく丸まってシーツを握りしめて 夜も明け方も、昼過ぎも夕暮れも、 それらの移り変わりをやり過ごすまでじっとしていることしかできない。 号泣さえできれば あるいは。

      • 猫からの電話

        好きだ。愛してる。ずっと。恋愛したくないならそれでいい。それは求めない。一緒にいて欲しい。猫がそう言った。 私はそれなら何も言わないでくれよ、と思いながら電話を切り、最近の日課であるストレッチをゆっくりとこなして眠った。

        • チキチキ・トンプク

          ※自傷の話です。 はじめて腕を切ったのはいつだっただろうか。中学生の頃だったはずだ。きっかけも何もかも思い出せないが、自罰だったことだけは確かだ。 この痛みで許して。そう思っていた。 血の流れる量は少ないほうが良かった。親に血を拭ったティッシュなどが見つかるのが怖かった。カッターの刃の裏側で、手首よりは見つかりにくいであろう二の腕を引っ掻いていた。ピリピリとした痛みと、ミミズ腫れになった腕の凹凸を指先で撫でることで安心を得ていた。痛みを与えてくれたカッターは、出しっぱな

        食道の住人

          20231010、下書き供養

          引っ越すときに一番に考えたことは、今住んでいる所から近い事、そして部屋が狭い事であった。 その望み通り、私は徒歩一分の所に12畳のユニットのワンルームいう所に落ち着いた。 下見のつもりで行った不動産屋でそのまま内見をし、一件目で決めた。当時の私は何かを考える余裕も、何件も内見をする体力もなかった。 私の年齢と同じ築年数なだけあって、少し手を入れてあるとは言えあらゆるところに年齢を感じるが、その分家賃も信じられないくらい安く、私が人生を反省するための部屋としてはじゅうぶんであ

          20231010、下書き供養

          祖父

          祖父は病院に入ってから、痴呆がどんどん進んでいった。 初めの頃は名前を呼んで「よう来たなあ。」と言ってくれたのが、だんだん看護師さんと間違う頻度が上がっていって、最後の方はプロポーズまでされた。ありがたい話である。 不思議なのは死んでしまう直前まで父の事はちゃあんと覚えていて、父が見舞いに行くと「おお、来たか。」と必ず言った。父が横に座る私について「娘や。お父ちゃんからしたら孫や。わかる?」と言うと祖父は私の事がわからないことが申し訳ないような居心地の悪そうな顔をするのであ

          ラブレター

          わたしはカテゴライズするならばマゾということになるのだろうけれど、どこか自信がなさげだったり、さみしがりだったり、自分の性癖に対して途方に暮れていたりするSのひとが好きである。 普段は閉じ込めた自分の中にある衝動や欲望。私が触れあってきた人のそれはコンプレックス由来のことが多い。身体的な自信のなさ。性自認の違和感。それらを第三者を制圧や汚染、損傷させたりすることによって埋めようとする人たち。または、単純にそうすることによってしか快楽を得られない人たち。 わたしはそういう人

          ラブレター

          ルーティン

          帰ってきてすぐに米を炊き、洗濯機を回し、それらを待っている間に冷蔵庫でミイラになりそうな順に野菜を五種類程引きずり出してコンソメと塩コショウのみで整えた適当な野菜スープを作る。 米が炊けたら日曜の夜にタッパーに詰め込んだお弁当用の作り置きと冷凍したブロッコリーを適当に詰めて冷蔵庫にしまう。 野菜スープに手をつける前に軽く浴槽を洗い、お湯を張る。平らげて洗い物を終え、洗濯を干し終わるる頃にはちょうどお風呂の準備ができている。 これが最近の帰宅後ルーティンであり、これ以上の効率

          ルーティン

          もしも

          来世生まれ変わるなら人間は勘弁して欲しい とあなたが言うので わたしは 来世、生まれ変わるならあなたの香水になって そのまま揮発してしまいたいなと思いました

          指先のルール

          大切な人に会う時は前日にネイルを塗る。 明日何を着ていこうか考えながら。その服の色に合わせて。 白のニットの中に赤いタートルを着る日なら、赤いネイルでハーフフレンチ。 グレーのシャツにオレンジのスカートの日なら、オレンジの偏光が入ったグレーのショートネイル。 手をあたためてキューティクルリムーバーを垂らし、甘皮処理をして、やすりをかけて、ベースコートを塗る。 爪の側面まで気をつけながらカラーを二度塗りした後、トップコートを塗る。 概ね、二時間。 その後も中まで完全に乾

          指先のルール

          しりがる

          今夜、わたしは少し傷ついていて あなたはその傷ができた経緯について怒ってくれて わたしはそれに救われて。 自分が招いた傷ではないということを抱いて、今日は眠ります。 わたしは、思い出して憂鬱にならなくてもいいし 腹を立てたっていい。 でも、どうか、できることなら、起きたら傷ついた部分だけすっかり忘れていますように。

          しりがる

          苺のカクテル、赤のネイル

          いちにちを美しく終えることができて それが今年最後の日であって おわりよければ そんな楽天的ではないにせよ おわりはおわりとして区切りがあって 明日からまたはじまっていくのだと そう思いました

          苺のカクテル、赤のネイル

          無職パンク

          クリスマスプレゼントでもなんでもなく、突然、服を貰った。 半年くらい前に連絡をした時に私が「あそこの新作がかわいかったけど装うことで自分の機嫌を取っていいのかという気持ちになって買えなかった」と言ったのを聞いてその後買いに行ってずっと機会を伺っていたけれど連絡してもいいのかもわからず渡せなかったのだと言った。 真っ赤な紙袋。赤いロゴがパターン印刷された薄紙。ノーカラーが透けて見える。グレーの生地を何ヵ所も切り返したパフスリーブに赤い刺繍のロゴが映えるシャツ。気後れして諦め

          無職パンク

          近況、薄暗がりの意識

          メンタルのブレから体調を一気に崩して一晩病院にお泊まり保育をした。 点滴を数本打たれ、メンタルの先生のところへもう一度行ってみなさいと言われ、そこそこいいホテルに泊まれるぞという金額を払った。 これはいかんと、体調が復活してからは余計なことを考えないように仕事を詰めて22時まで残業+土曜は催事スタッフ対応で週6出勤をしたり、日帰りを含む突然の東京出張を2回こなしたりと、心を揺らさずに過ごすことには成功していたのだが、うっかり何をしているのだ、と我に返ってしまった。 この調

          近況、薄暗がりの意識

          自分用メモ

          生きている理由がない と 死にたい理由がある の 違いについて

          自分用メモ

          もちもちスイートポテト、文学

          セブンイレブンのおそらく秋限定商品である「もちもちスイートポテト」なるおやつにハマってしまって週に二個ほど食べている。(めちゃくちゃ我慢して二個に抑えている。ほんとうは毎日食べたい。) 今日も仕事に疲れ「もちもちスイートポテト」を求めてセブンイレブンに吸い込まれると、雑誌のコーナーで「評判すぎる文学作品をだいたい10ページくらいの漫画で読む」という分かりやすすぎるタイトルが目に入った。 「車輪の下」「ヴィヨンの妻」「外科室」なるほど。「痴人の愛」は最後三十ページ位で放ってお

          もちもちスイートポテト、文学