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ゆらぎ

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大事なのは、これからどうするかだから。

痛いと分かっていてもそれが傷になると分かっていても、言葉にしてしまったのは、それが愛情だったと気づいたあなたの隣にいたいから。これが期待じゃなくて希望であってほしいなんて、思ってる時点できっとわたしはあなたに期待してしまっている。

煙草を嫌うわたしが煙草の空箱が欲しいと言うと、あなたはなぜ?と書かれた顔をこっちに向けて渋々差し出した。あなたの大切なものじゃなくて、あなたが捨ててしまいそうなものが、わたしにはキラキラして見えて仕方なかった。ヨレヨレで着なくなったTシャツとか使わなくなったキーホルダーとか。

いつもそうだ。わたしの 好き は、口から出すと薄くて嘘っぽくて、届く間にどこかに消えてしまう。肝心なことは、いつもあなたには届かない。

あなたを思い出すと苦しかった。あなたの作るものから目を背けた。あなたの感性がわたしの心の奥の奥に手を伸ばして、そこにあるすべてを掴んでしまう。空っぽになってしまう。わたしはわたしが見えなくなってしまう。

あなたは才能に溢れていた。飛び抜けたものがあると言うよりは、どれも大抵のことはできてしまった。そんなあなたにも、いや、そんなあなただからこその悩みや苦しみがあったことをわたしは知っている。それでも、あなたを羨ましいと思った。時にはそれが、悔しさや憎しみにも変わった。

その人の感性に触れて涙が溢れる。とても静かに。まるでその静かな時間が無かったみたいに、静かに。

あなたに出逢ってから、わたしはあなたが泣かなくてもいい世界を作ろうと必死だった。でも、あなたが遠くに行ってしまったあの日、思った。どうして、あなたが泣ける世界を作ろうとしなかったのかなって。涙が止まらないことよりも、涙を止めることのほうが、きっと辛かったよね。