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青井哲人著:『ヨコとタテの建築論 モダン・ヒューマンとしての私たちと建築をめぐる10講』について


青井哲人著:『ヨコとタテの建築論 モダン・ヒューマンとしての私たちと建築をめぐる10講』,慶應義塾大学出版会,2023,

青井先生の『ヨコとタテの建築論 モダン・ヒューマンとしての私たちと建築をめぐる10講』を読了。

自分は大学院で青井先生の都市史の講義を受けていて、その際、動的類型学の概念に触れ、歴史という時空間の拡がりの中に位置づく、複雑な事象の数々を拾いながら、しかしその複雑さを捨象せず、明快に整理されていく様子に驚いていたのだけど、本書を読んでその範囲が氷山の一角でしかなかったことに気がつかされ、夢中で読んでしまった。(付箋も大量に貼った)

芸術はもちろん文化人類学や哲学、数学や生物学…といった様々な分野の議論が召喚され、それが隠れ蓑になることなく、むしろそれによって建築論の輪郭がクリアに浮かび上がる。

建築論が建築のみによって捉えられるのではなく、また、建築を語る際に学際的なものが召喚され、建築もそれを参照すべきだとするのでもなく、互いを緊張感持って突き合わせること(とりわけ終盤の中動態に対する記述については哲学から建築、建築から哲学というインタラクションがあり、個人的にかなりスリリングな議論でした)によって、知の地平が拓かれていく。

大学3年生ぐらいで建築をある程度学ぶと、建築それ自体というより、周辺の学問や学際的なものによって建築を考えたい欲望が沸々と出てくると思うのだけど、そういった欲望を持つ学生こそ一読すべきだとも思う。 建築について、外の言語を一方的に持ってきてそれらしく語るに留まらない豊かなあり方について、大きな学びを与えてくれる一冊のはずです。



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