見出し画像

私だけが自覚した

「見てる限り親と上手くいってるとは思えへんけどな」

蒸し暑い廊下に響く先生の何気ない発言
動揺を隠して笑う私


蝉が大合唱を繰り広げている
今年の夏はまた一段と元気らしい
私は今までにない暗い夏休みだというのに、なんと皮肉なことだろうか
相も変わらずキラキラと眩しい外が何も知らないから何も変わらない両親と重なって、私は逃げるように目を伏せた


今までも友達に「水和の家ってちょっと厳しいよね」「変わってるね」と言われることはあった

でもそう言ってくる人達は一人っ子だったから手のかかる兄弟がいればまた話は変わってくるだろうと思っていた
みんなが上手く行きすぎているだけだと思った
実際、共感し合える友達もいた。悲しいことだけどもっと酷い家庭環境の子だっていた

みんな自分の家庭が普通だからな〜
そう思って深く捉えたことはなかった


今回言われた相手は先生だった

私の抱える負の側面をよく知る人
そして何年、何十年といくつもの家庭を見てきたであろう人

そんな人に「上手くいってない」と断言されたことは重くて到底持っていられないと感じた



話が上手く通じないのは自分の説明のせいだ

心が埋まらないのは私が子供すぎるんだ

自分を傷つけるのは私に助けてって言う気がないからだ

そうして自分に押し付けてきた

寂しさも違和感も17年間、見ないふりをしてきた


腕の傷を初めとして何かある度、家庭を疑われることが辛かった
私が悪いのに としか思わなかった



第三者に「親にも問題があるよ」と言われることは救いであるはずだった
もう自分を責めなくていい  そういうことなのかもしれなかった

実際、私の気持ちが肯定されたようでほっとした
私は間違ってなかった
何を基準にしたのかわからないけれど私は正しかった気がした


でも、それと同じぐらい辛くなった

いくら現実を突きつけられても日々は変わらない

その発言たちを親は聞いていない

私だけが知っている

そう、私だけ

私だけが、私の心だけが変わってしまった

いつもと同じように向けられる愛に居心地が悪くなった

愛されている

それなのにどうしてこうも交われない?

その違和感に気付かぬ振りをして、いちばん大事なところを妥協をして、自分のせいにして、騙し騙し生きてきたのに、もう騙せないじゃないか

言われた言葉が全部、図星だったから
17年、目を背けてきた感情を言い当てられたから
目を背けてきた意識などなかったけれど、確かにずっと存在した痛くて重いそれらを今さら自覚してどうしようか



「何か行動する時は上下が付き物だよ。最初一旦落ちても最後には上手くいくこともあるよ」

大好きな養護教諭の言葉

これから良い方向に行くかもしれない


それでも今は変わらずにいられたらよかったとしか思えない


この記事が参加している募集

#スキしてみて

524,761件

#振り返りnote

84,440件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?