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オーソン・ホッジの言葉

 私の、部屋で過ごす時間のうち①なにも点けない、②音楽を流す、③BGM代わりの海外ドラマを流す、④本腰を入れてドラマや映画を観る、といういずれかがおおよそのパターンである。唐突に切り出したけれど、そうなのである。
 それで、最近のBGMドラマは『Desperate Housewivesデスパレートな妻たち』で今はシーズン7、つい数日前に流れた、11話でのオーソン・ホッジの言葉に耳がぴくぴくと反応した。

 シーズン7では、オーソンと離婚したブリーは、家の内装工事屋として雇ったひと回り以上年下のキースに恋をして実り、一緒に暮らそうとしているところだった。そこにオーソンが戻ってくるんだけれど、ブリーがキース若い男性と一緒なのを見て面食らい、ブリーとこんなやりとりをする。
ブリー「私あれからすっかり変わったの、全部キースの影響よ」
オーソン「変えたがる奴の気が知れない、すでに完璧なのに」
What I’m wondering is,why would someone change something that was already perfect?

 で、何に反応したかというとオーソンのせりふの、相手を変えたがる行為に対するひとくさりだった。そういうのって私自身が好かないところがあるから、ふむふむと頷いてしまった。
 相手が変わったと嘆き、気に入らない部分に関してはいつまで経っても変わらないなどと腹を立てる、それがパートナーシップであるのかもしれない。時間や距離をおいて、つまり時が経つとか一歩ひいてみたときに滑稽に映るもの、パートナーシップとはそういった性格のものであろう(当事者である最中にはとても笑えないのだけれども)。

 まあでも、このドラマのこの関係性においてはまずブリーの元を去ったのはオーソンの方だし、キースはブリーを変えようとしたふうではなかった。ブリーはキースに惚れて、彼に向き合ううちに変化したのだとおもう。オーソンは別の人を選んで自分から去ったものの、やっぱり忘れられなくて戻ってきた、とそういうわけであった。どうでもいいですね。

 ところで海外の、特にアメリカのドラマや映画を観ているとこちらの文化にはない色んな物事が気になってくる。よくあるのは、感謝祭やクリスマスといった祝日で、だいたいにおいて最悪の祝日となるか、たまに奇跡が起こってめでたしというパターンである。その他のものとしてぱっと思いついたのは以下のいくつか。

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社交界デビュー(デビュタント)
WASPの文化らしいけれど、初めて見たときにはちょっと理解ができなかった。でもいくつかのドラマで目にしたし、ほんとうに存在しているのかもしれない(まだ疑わしい)。
それにしても自分の16歳を思い返してみて、とてもじゃないけれど人前で着飾ったりくるくる踊ったりというのは考えられない。文化が違い過ぎる。アメリカ人(その他西洋諸国)でいるのってなかなか大変そうである。それからプロム。向こうの人って、とにかくパーティーやダンスが好きなんだね。

リスト
何かを決めるとき、もしくは何かを決められないとき、彼らは必ずと言っていいほどリストを作る。リストはだいたいリーガルパッドあたりに書き連ねられる。買い物するときもリストは必須アイテムだ。合理的で有用。

ミシシッピ
数を数えるときに用いられるミシシッピ。初めて耳にしたときはいったい何のことだかさっぱりわからず、ぽかんとした。使い方は「1ワンミシシッピ、2ツーミシシッピ・・・」とやる。だいたいワンフレーズが1秒に収まるといえば収まる。それにしたって言いづらいとおもうんだけれど、これって常用なんだろうか。

クラブ、友愛会、ソサエティー
高校、大学などでこういったものが組織され、話題になっている。最初はなかなかぴんとこなかったけれど、文化としてしっかりと根付いているようですね。フリーメイソンなどの有名どころから、学校単位とさまざまである。

 ところで、こんなふうなアメリカのクラブまわりのことを考えていたら、たまたま読んでいる本の中のおもしろいものに出くわした。1980年代に村上春樹氏によって書かれたコラムだけれど、まずこのコラムが書かれた時期には、アメリカにはわかっているだけで1万8,414ものクラブ組織があった。その中から氏がひろった「変なの」のがおかしかった。
 それはジム・スミス協会ソサエティーといって、全国のジム・スミスという名前の人が集まって構成されたクラブ。当時の会員数で1,218名、この会の目的はジム・スミスの名前を持つ人々にプライドを与えることにあるという。なぜか。ジム・スミスという名前を持った人は自分のことを平凡な人と考えがちだからだ、ということらしい。おもしろい。
 もっとおかしかったのが、この会は年に一度オール・ジム・スミス・ソフトボール大会というのを催しており、全国からわざわざソフトボールをするために一箇所に集まってくるのだという。そして、こうやってジム・スミス氏たちが一堂に会するときには、彼らはお互いを住まいで呼びあうということで、ネヴァダ・スミス、とかになるらしい。

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 主にアメリカにおける映像作品によくみられる色々を、あれこれ書いてみたかったんだけれど、もうこのジム・スミスでけっこうスペースを使ってしまった。探せば(思い出せば)たくさんあるんだろうけれど、今回はこの辺にしておきたい。
 私はだいたいにおいて、こういうふうに特に役に立たない物事とか、こまかいところが気になってしまうほうである。そういうわけでひとりでおもしろがっているんだけど、ほんと、何の役にも立たないですよね。


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