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【私と本】口をつかってよろこばせるには

 (タイトルが検閲にひっかかったらどうしよう)

 マガジンの中に本棚用のをつくっているんだけれど、最近ここの記事を書けていない。活字を追っていないと気が違いそうになるたちだから、大体いつも何かしらの本を読んではいるのだけれど。

 先日、記事の最後にジョゼフ・ボナーノの伝記が今ひとつ乗らない、と書いたけれど、それでもしばらくは読んでいた。私が読んでいたのは(当然のことながら)翻訳されたものだったけれど、文章はいくぶん書きこみすぎだと感じるところがあるとはいえ、すごくしっかりしていた。手に取ったタイミングが合わなかっただけで、気分が乗ればおもしろく読めるだろうな、とおもった。
 結局は途中で読むのを中断したけれど(図書館の返却期限があったから)、気分が乗らないと言いつつ返却まではぼつぼつ読み進めていた。そのとき、私が何かを読むのは、純粋にたのしみたい気もちからだけではないのだな、とふとおもった。
 言葉の使い方、言い回し、時代を感じる事柄やよその地域の文化など、書物から得られるものはたくさんある。いい文章も、ひどい文章も、読めば何かしらになるような気がしている。

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 この間の下五島では福江島に1泊してきた。ぜんぜん気に留めていなかったけれど旅行支援が開始されたばかりで、それから五島行きを直前に決めたこともあっていくつか宿を断られ、ちょっとだけ慌てた。てきとうに電話したゲストハウスが空いていて、とにかくといった感じでそこに宿をとった。
 ゲストハウスだったけれど、お客は私ひとり、ゆったり使えることにホッとしつつ、シャワーを済ませひと息ついて部屋を点検すると、文庫本が数冊置いてあるのが目についた。書店のカバーをしてあるのと、していないのとあって、している方を開いてみたら『海辺のカフカ(上・下)』だった。していない方は誰のなんて本だったか覚えていない。ここはゲストハウスだから、誰かが置いて行った本かな、などとおもった。
 村上春樹氏の作品は、短編も長編もその間くらいのも、小説に関してはほとんど読んでいない。だけど、PCの画面で何か読むより寝そべって文庫本を読む方がいいとおもって、『海辺のカフカ・上』を手にとってしばらく読んだ。人気の作家だけあって、読ませるような構成が興味深かったけれど何せ旅先の寝る前という限られた時間であるし、とっかかりをいくつか読んだにすぎない。私が読んだ何章かの中に『千夜一夜物語(バートン版)』のことが出ていて、物語を追いながらもそっちのほうを読んでみたくなった。
 無知をさらすようだけれど、この物語の内容を知らなかった。この小説に出てきてアッとおもったのには、数か月前にリムスキー=コルサコフの交響曲<シェヘラザード>の話題のためにこのお話のことを教えてもらっていたからだった。

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 伝記は途中でほうり出して、さっそく『千夜一夜物語(バートン版』を借りてきた。まだ150ページくらいしか読んでいないけれど凄まじい(文庫で600ページ以上ある)。全部で11巻あって、最後まで体力とか気力とかが持つかどうかわからないけれど、こういうのはあまり何も考えずに読めるのがいい。律儀にバートン版を選んだんだけど、これは注釈もがちっとしていて、かなり読みごたえがあります。

 記事にしたいと言いつつまだ書けていない『マーベラス・ミセス・メイゼル』の主人公ミッジもだけれど、話術で人をたのしませることができるというのはいい。私はしゃべるとなると途端に鈍くなるから、ミッジやシェヘラザードのような巧みさに憧れるのだった。

 ところでトップ画像は久賀島で撮ったアサガオなんだけれど、よく見ると花の中央に蜘蛛が張りついています。蜘蛛って、こういうお話(千夜一夜物語のこと)にぴったりな生き物だとおもいませんか?

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今日のひとりごと:最近所有する機材が増えて、常に何かを充電している気がする。なんかヘンだな、とおもいつつも、とにかく充電なんて電源をつないであげればいいだけだし、だいぶ日常化してきた。ところで私自身もこんなふうにシンプルに充電ができないものだろうか。

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