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イスラム2.0読書感想文

犬好きとして7章のイスラム法と犬の関係は悲しい気持ちになりました、とつぶやきの方にも少し書きましたが、表題のテーマについても改めて書かせていただきたいと思います。

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全7章からなる本書は、近年発生したテロ事件を取り上げて、事件発生の背景にある、イスラム法の解釈をめぐるイスラム教徒の自意識の変化について説明しています。

説明としては、1章ごとのテーマとそれに沿った小見出しに、どんな出来事があってそれはどのように解釈されるか、という形にはめて書かれています。この流れで書かれているので、読み進めていくと途中で単調で退屈な本だとの印象を受けます。ですがそれは著者があくまでも客観的に、第三者として主観によらず観察できた事を書いて、それらの事から導き出される結論をつづるという形式を崩していないからとも言えます。

1〜5章はイスラム教を取り巻く世界的環境の変化に焦点を当て、この変化の中でイスラム教徒はどの様に反応してきたか、その反応の背景にあるイスラム法とは何かという事について、ニュースで見た事件や日本ではメディアで取り上げられた事がないと思われる記事を通して深掘りしています。難しい歴史の話はなく、あったとしても、イスラム教徒が解釈したイスラム法はいつその様な解釈が誰によってされたかと説明されています。

6・7章は1〜5章のまとめとして、実際にイスラム教と付き合っていくためには異教徒として何を重視すべきかについて実際の事例を通して解説されています。本書ではイスラム法を体現させようとしている組織の例として度々イスラム国が取り上げられていますが、6章では実際にこの組織が行った統治について、彼らの根拠の拠り所も一緒に書かれています。

この6章は、読めば読むほどマッドマックスや北斗の拳の世界観が頭の中で広がり、ディストピアとはこの事をいうのだろうと思わずにはいられませんでした。

もし、本書の内容は気になるけど、長くて読めないと思う方は7章だけでも読む事をオススメします。この章だけでも、日本人一般の宗教に対する態度がいかに的外れで、下手したら危険であるという事とその理由を知ることができます。

イスラム2.0は、事例からイスラム教を理解しようという本です。なので本書を読むことは現実で見られるイスラム教をめぐる様々な事象をどの様にとらえたらよいかという助けになるかと思います。

本書の後書きにもありますが、イスラム教に対する解釈として議論を呼ぶ内容となっています。何が議論を呼ぶかについては著者が説明されているので気になるようでしたら読むことをオススメします。

というわけで、議論を呼んでいる内容についてもう少し詳しく知りたくなったので「イスラム教の論理」も気になってきました。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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