夕空しづく/詩人・小説家

詩と小説を つくっています。/寄稿『ココア共和国』/著作『トワイエ』『藍空断片集』『降り積もる孤独はすべて花になる』… 連絡先:yuzorashizuku@gmail.com

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    無名人生

    わたしたちは 生まれて生きて 死んでいく 墓石に刻む 名も知らぬまま この世にある数多の無名人生、そのきらめく一瞬をひたすら愛し抜いた、渾身の詩集です。 完全書き下ろし、収録されている詩はすべて未発表です。 A6版、全110P。
    1,870円
    夕空の本棚
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    トワイエ

    無理しなくていいとか、どうせ世界は救えないとか、生きるのはくるしいことだとか、いろいろ、言われているけれど、 とはいえ、私たちは生きていかなければならない。 かつて救われなかったあなたにも、別の世界線を生きるあなたにも、等しく救われる瞬間があるように。祈りながら、ちいさな物語を書き留めました。寝る前、電車の中、誰かを待つ数分間。ふとしたとき、ただ隣に在れますように。 A5サイズ 全100ページ。第一版のみ、手書き修正部分があります。明るいところだと青が強めの紺、暗めのところだと、限りなく黒に近い紺に見えます。
    1,320円
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    無理しなくていいとか、どうせ世界は救えないとか、生きるのはくるしいことだとか、いろいろ、言われているけれど、 とはいえ、私たちは生きていかなければならない。 かつて救われなかったあなたにも、別の世界線を生きるあなたにも、等しく救われる瞬間があるように。祈りながら、ちいさな物語を書き留めました。寝る前、電車の中、誰かを待つ数分間。ふとしたとき、ただ隣に在れますように。 A5サイズ 全100ページ。第一版のみ、手書き修正部分があります。明るいところだと青が強めの紺、暗めのところだと、限りなく黒に近い紺に見えます。
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「夜のコンビニへ、何をしに来たんですか」

***** PM9:12 28歳女性 購入品:500mlパックのイチゴ牛乳 ***** 「見たら分かるでしょう、飲み物を買いに来たの。今?彼氏と会ってきた帰り。青山の地下レストランで、シチリア料理だったかな、を食べた。白ワイン、結構いい銘柄だったらしいけど。名前?忘れちゃった。 そのあと彼のマンションに行って、いつもと同じセックスをした。食事の途中から、そうなるんだろうなってわかってた。彼の背中は煙草とジンジャーエールの匂いがして、いつも噎せそうになる。どっちも私は好

    • 詩集『無名人生』を発売します

      詩集をつくりました。 『無名人生』という詩集です。完全未発表の詩を、40編収めました。 どこかの誰かが生まれて生きて死んだ、無名でかけがえのない一生を、詩で象った作品です。 印刷は前回に引き続き、藤原印刷さまにお願いしました。 世の中には、「無名」と呼ばれる人生が、一体どれほどあるんだろう。なにかを残そうと必死になっても、覚えてもらえるのは一握り。それすらいつか、完全に忘れ去られる。 どうしてみんな、残そうと必死なんだろう。わたしは誰に、なにを残せるだろう。どうせいつかは

      • 架空のドラマの最終話

        ながい夢をみた。 起きたときはまだ余韻のなかで、はやく感想をしたためよう、タイトルはなんだっけとアマプラを開いたところで、夢だったと気がついた。タイトルもサムネイルもどこにもない。わたしの脳内にだけ存在し、今まさに薄れ始めている記憶。架空のドラマ。 夢の中でわたしは、そのドラマを一気見した。全10話。20代〜40代の女性が4人と、男性2人、あとは中学校の同級生と、行きつけのカフェの店員さんが出てきた。 書きながらすでに内容の忘却は始まっており、詳細なあらすじまでは書き記

        • 秋めいた微熱

          秋めいた線香の匂いをたどる。 息切れ。 やけに彩度の高い空を、 模倣しそこなった右眼。 霜月。 創作意欲を灯火にして、 あとどれくらい生きられるだろう。 書きたいことを、 世界に、かつての自分に、伝えたいことを、 ぜんぶ書きつくしたら、 ぜんぶ伝え尽くしたら、 「もういっか」 になるのだろうか。 その先をわたしは、 生きられるだろうか。 わからない。 わたしはまだ、 なにも伝えきれていない。 世界と話ができていない。 やっと、目を合わせようと思えてきたばかり。

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        • つれづれなるままに呟く
          43本
        • 短編小説
          17本
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        • 東京でOLをしながら小説を書いていた頃
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          選挙に行けなくて泣いていたわたしへ

          大切な(とても個人的な)〆切が迫り、 最近は朝も昼も夜もずっと、原稿を書いていた。 今日は一段落したら、選挙に行く。 これはわたしにとっては、大きな(とても大きな)変化だった。 * 東京で働いていたころ、選挙に行けなくて泣いたことがある。 近いうちに死ぬと思っていたし、世界のことを、考える余裕もなかった。ヘヴィな人間不信に陥り、他人の一挙一動に動悸を起こし、電車に乗れなくなり、毎日涙が止まらなかった。わたしも世界の一部なのに、行かなきゃとは思っているのに、動けなくて

          選挙に行けなくて泣いていたわたしへ

          「とはいえ」の先へゆく(著書『トワイエ』増刷のお知らせ)

          おしらせです。 2024年4月、初めて「紙の本」として出版・発売した詩集『トワイエ』を、増刷することになりました。 受け取ってくださった方、 本当に、 本当にありがとうございます。 見つけてくれて、ありがとう。 * 増刷にあたり、『トワイエ』について 思いと祈りをすこしだけ。 この詩・短編集は、 全部の世界線の自分を救いたい、 という思いで、つくりました。 全部の世界線の自分、というのは、 過去、未来、今、 今と別の選択をしていた自分、 すべての時間軸、可能性を含

          「とはいえ」の先へゆく(著書『トワイエ』増刷のお知らせ)

          自分に決められないことばかりで、でも決めねばならなくて、生まれることも死ぬことも、自分では決められないのに、決められなかったのに。 久しぶりに 底 がみえた 行きたくもないサイゼリヤで泣いたり、電車のなかで気絶しかけたり、アスファルトとキスしそうになったり、ああだめだ、人間のかたちを保てない。衣食住ができない、普通のこと、みんなできることが、こんなにもできない、泣きたいのに泣けない、吐きそう、きもちわるい。 底 は つめたかった 昨日やっと泣けて、申し訳なくて、なんに

          飯田橋で、一度だけ出会ったあなたへ

          こんなわたしにも、就活生だったころがある。 当時のわたしは、漠然と東京に行きたかった。東京で生きてみたかった。人生のなかで、「東京で生きた」と言える時代がほしかった。ここではない場所でなら、ただしく見つけてもらえると思っていた。聞き飽きた、よくある話だ。 小説家になりたかった。 でも、働いて稼がなければ生きていけないことはわかっていた。とにかく東京に行けばなんとかなると、思っていた。高速バスで足繁く上京した。常に金欠だった。パンプスのサイズが合わないので、スニーカーを携

          飯田橋で、一度だけ出会ったあなたへ

          概念

          概念でいたい、 と、ずっと、思っていた。 ことばを使って表現をするとき、肉体はどうしてこんなにも邪魔なんだろうと、思っていた。 わたしが男性でも女性でもどちらでもなくても、17歳でも25歳でも48歳でも81歳でも、その作品はその作品でしかないのに。作品はどうしても、わたしが持つ身体性と、結びつけられてしまう。 とはいえ、切り離そうにも、切り離せない。わたしのなかから生まれる表現は、一度、わたしの肉体を通っているのだから。わたしは、完全な概念にはなれない。わたしという生

          創作にはAIじゃなくて、愛が必要だよ

          最近、AIの話題ばかりで、心が疲弊しきっていた。正直にいえば、半分、絶望していた。 どれだけいのちをかけてつくっても、簡単にAI学習に使われてしまう。感情や痛みを伴わない作品が、大量に生産されてしまう。そんな世界で、私は書き続けられるだろうか。書くことは、救いになりうるだろうか。 大切にしてきた救いが、踏みにじられた気がした。何をしていても、何を考えていても、動悸が止まらない日々が続いた。前向きになろうとすればするほど、前向きになれない。どうしたって、創作という営みの破壊

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          桜桃忌 2024

          桜桃忌だ、と思った。 仕事中、キーボードを打ちながら、思った。 しばらく、『人間失格』を読んでいない。 *** 太宰治を思い出すとき、私は「修治さん」と呼ぶ。 すべての本を読み、論文を読み、五所川原へ行き、三鷹へ行き、それでも私は、太宰治の、津島修治の、絶望に触れることができなかった。触れられた、と気がしたこともあったが、それは大抵自身の絶望を、彼に投影しているだけだった。彼が、何にくるしんでいたのか、何がさみしくて、何に耐えられなかったのか、どこまでがほんとうでど

          洗っても洗っても、書いても書いても。

          洗濯、をしていると、私はいま、ちゃんとできている、と感じる。汚れた服を、あるいは、汚れたように見えない服を、時間をかけて(洗濯機が)洗う。シワをのばして、太陽と風があたる場所に、干す。きれいになった、あるいは、きれいになったように見える服を。 一日外に出ただけで、服は汚れるらしい。それなら、20年と半分ちょっと生きている私は、どれだけ、汚れているんだろう、と思う。この手は、この足は、どれくらい、汚れているんだろう。洗っても洗っても落ちない汚れは、目に見えないところに、どれだ

          洗っても洗っても、書いても書いても。

          日々断片蝶々

          東京にいた頃に書いた短編小説を、すこし、書き直した。 あの頃の私を消さないように、あの頃の純度を損なわないように。 最近、猫が後ろをついてくる。一緒に逃げてしまおうか。 誰にも見つからないところで ふたりで暮らそうか。 本を梱包しているとき 祈りにちかい気持ちになる。 私だけはここにいるからね、大丈夫だからね。世界と無事に出会えますように。見つけてくれた人 ありがとう。 こわい夢を見た。 死んだら私たちは どこで待ち合わせればいいんだろう 私は地図が読めない。 WAL

          世界が終わる夢

          「明日大きな嵐がきて、世界は悲惨に終わるらしい」と、誰かが言った。ある局はそれを大々的に取り上げたが、全く気にしないメディアもあった。 人々は、信じる者と、信じない者に、分かれた。前者は大抵が「生きづらい」と形容される人たちで、もれなく繊細で、心配性で、やさしかった。後者は楽観的で明るく、誰からも愛される人たちで、こういう人たちが、世の中のトップに立って、経済を支えていた。 私と、私の家族は、前者だった。世界終焉の知らせを、心から信じた。こころなしか、空が濁っている気がし

          自己表現、という呪い、あるいは

          noteに自分のことを書くのが、ひどく、こわくなってしまった。本業でもライフワークでも、文章はいつ何時でも書いているのに、自分のこととなると、急に、筆が、重くなる。人生ぶんの重みみたいでいやだ、し、こんなふうに比喩すること自体、素直に自らを綴ることをごまかしているようで、いやだ、とても、ごめんね。 そもそも私は、私自身のことを世の中に話すのが苦手だし、そういう生き方はできないのだろう、と思う。だから、小説を書くしかなかったわけで、蓄積された感情は、痛々しい詩になっていくわけ

          自己表現、という呪い、あるいは

          終末の恋人たち

          「明日さ」 「うん」 「デートしよう」 「いいよ どこで?」 「きみがいれば どこでも」 「そういうことじゃないでしょう」 「ごめん」 ……… 「もう夜になるね 夕ごはん どうしようか」 「わたし なにかつくるよ なにがいい?」 「きみがつくるものなら なんでも」 「それが いちばん困るんだって」 「ごめん」 ……… 「ねえ」 「うん」 「明日 どうしようか」 「……もういいよ 考えるのめんどくさいし プランがないなら家にいようよ」 「いや