ラグビー観戦記🎍大学選手権準決勝・京都産業大学vs明治大学〜春は来る〜
1.突然の災厄に
2024年元旦
それはサッカー日本代表が5ー0とタイ代表に快勝した直後のことだった。
インタビューに応える森安監督の言葉が、あの不気味な音で突然かき消された。
【緊急地震速報】
それは一度ではなく繰り返し流れ、TV画面は北陸一帯を強い地震が襲っていることを知らせた。日本海側一帯に津波警報、注意報も発令され、ここからテレビは震災報道一色となった。
こんな新年は経験がない。
翌朝。
予定通り開催が決まった【箱根駅伝】のスタート地点、その映像にどこか戸惑いを覚えた。
楽しんで、いいのかな、、
刻々と震災の被害状況が報道される中で、『普通のお正月』を過ごしていいものか、誰もが考えた事だろう。
私と夫は防寒グッズでモコモコになりながら、いつもとは違う千駄ヶ谷駅の改札を出た。
薄曇りの千駄ヶ谷駅前は、どこか集まった人々も言葉少なに横断歩道を渡って行く。
私達は『彼ら』を観にきた。
箱根のメンバーが大手町から箱根芦ノ湖まで襷を繋ぐように、『彼ら』もまた、仲間と【楕円球】を繋ぎ合い、この『聖地』に辿り着いていた。
国立競技場
『彼ら』は、今月13日、再びこの地の芝を踏み締めるべくこの日を迎えたのだ。
2024年1月2日 ラグビー大学選手権準決勝
二試合共に『関東(というより東京)vs関西』の組み合わせとなった。
近畿圏の大学には、地理的事情から北陸出身の学生が多く在籍する。ラグビー部も例外ではない。
前日の天災が、『身近なこと』として彼らに大きなショックと不安を与えた事は疑うべくもない。
私達観客ができることは、彼らに惜しみなく激励の拍手を送り、試合を見守ることだけだった。
両チームの選手が入場する。
明治は主将広瀬くんが復帰、万全のメンバーで臨む。本来なら創部100周年というシーズンの新春を晴れやかに迎えるはずだった。
彼らも又様々な思いを抱えつつこの刻を迎えたことだろう。
入場後の校歌斉唱などはなく、彼らは芝の上ですぐ体を動かし、仲間と円陣を組んだ。
13日、再び【ここ】に戻るために❗️
静かに、試合は始まった。
2.前半〜力と力〜
【 私は今この試合の録画を見る余裕がなく、ここからの時系列あるいは描写に誤りがある事をお許しください。】
* * *
普段見ることのない『関西大学ラグビー』。
だからこそ、
準々決勝で早稲田をまさに【ねじ伏せた】感のある京産大のフィジカルは脅威そのものだった。
しかし、
私は京産の【真の姿】を生で観ることは叶わなかった、のかもしれない。
前半開始早々試合が止まった。
タックルに入った京産の選手が倒れそのまま動かない。
彼はそのままピッチを去った。SO吉本くんだった。
司令塔の交代
京産大は、ほぼ80分間、このプラン外の試合運びを強いられることになった。
対する明治、
このアクシデントからまもなく最初のトライを決め試合の主導権を握りにかかる。
🔥よりスピーディーに、よりハードに🔥
15番池戸くんのキックも絶妙、飛び込んだ海老澤君のセンスと度胸にも脱帽、そんなトライだった。
京産も負けていない🔥
というより、純粋に力勝負に持ち込むと明治を圧倒する勢いだ🔥
しかも、
力任せ、ではなく丁寧な試合運び、一言で言えば
『キチンとした、折目正しい』ラグビー、だろうか。
5ー5 直ぐに追いつく🔥
『まともに組むな❗️』『もっと散らせ❗️』
明治ファン、
それぞれ心は『監督』だ。
箱根駅伝の如く、後続車ならぬ『客席』から檄を飛ばし続ける🔥🔥
確かにそのアドバイスはある種的を得ていた。
この試合は、キックによるボール争奪戦もポイントだった。
どちらがボールをキャッチできるか、
そのボールを保持できるか、
屈強な両チームの選手が、空中で、地上で重なり合う瞬間、スタジアムは緊迫した。
明治は、
とにかくボールを左右に散らしながら京産のタックルを外し、自陣から脱出しなければならない。そしてとにかく、
『勝たなくてはならない』。
理由は、『明治だから』、これに尽きる。
常にこの理不尽すぎる使命を課されるこのチームは、この時『勝つこと』に徹した。
私の記憶では、2本目のトライが生まれた契機となったプレー、だったと思うが、、
敵陣内深い所ながらペナルティーを科された明治、京産はボールをタッチ外へ蹴り出し窮地を脱したかに見えたが、その時、
これはいつ申し合わせたのだろう。
タッチ外でスタンバイしていた明治の選手、ジャンプして飛んできたボールを空中で見事にキャッチ🔥そのままピッチ内に着地し、即ボールを味方へパスしたのだ🔥🔥
この『奇襲』に一瞬足の止まった京産の間隙を突き、明治の選手達はゴールラインへ激走した。
会場はどよめいた。
明治、だからといっていつも『前へ』の正攻法とは限らない。
もちろん、これは、
勝つために手段を選ばない『奇襲』なのか、あるいは、
この種の攻撃は、個の力に秀でた明治なら『普通の攻撃オプション』なのか、
私には解らないが。
さらに明治はトライを追加。
とはいえ、準決勝、
ここから京産の逆襲が始まる。明治陣内に猛烈な圧をかけながら押し寄せ、堪えきれず明治はペナルティーを繰り返した。
今年の明治は、突然脆さが顔を出す。
前半も残り数分、
気がつけば1点差❗️
試合の行方は、俄然わからなくなってきた、、
前半終了間際、
攻勢に出た明治は、京産陣内で相手のペナルティーを獲得。
ショット(PG)で3点獲得、かに思われたが、、
広瀬くんは、ボールを手にメイン客席方向斜め前を向いた。
会場からドッと拍手が沸いた。
トライを目指すのだ❗️
もちろん、広瀬くんたちは粛々とゲームプランを遂行しているのであって、ここで
『我等、メイジなればこそ❗️』
と意気込んでいる訳ではない。そうわかってはいても、明治ファンは彼らに【明治の矜持】を垣間見るし、京産ファンは『そうはさせん❗️』と握り拳に力を込めただろう。
この攻防が、この試合のターニングポイントだったか。
勝負に勝ったのは明治だった。
前半終了。
曇天の国立。
今日は予報より暖かいと思っていたが、いつの間にか体は芯から冷えていた。
駒大の楽勝かと思われた箱根駅伝往路は、青学が新記録で優勝を決めていた。
3.後半〜この日のために〜
京産にとって悔やまれるのは、もしかしたら後半開始早々に奪われたこのトライかもしれない。
これが明治のメンタルをずいぶん楽にしてしまったか。
後半は、意外な程一方的な展開だった。
が、しかし、
明治は【試合の終わらせ方】にまだ課題を残していた。
いや、京産の最後の猛攻、見事に取り切った2つのトライを見ると、
開始早々のアクシデントがなければ、
前半終了間際、後半開始早々の攻防を凌いでいれば、、
と思わずにはいられない。
巨大都市東京、しかも聖地での試合、
おまけに、
全く悪気はないが、私を含め関西の応援に戸惑いの雰囲気を醸してしまった東京のファン達、
京産の選手達には、かなりアウェーな雰囲気だったかもしれない。
ここでノーサイド。
明治決勝に進出❗️
選手達は互いの健闘を讃えあう。
この冬の暖かさは、外苑の木々の様子も狂わせていた。
カツラの木は、ハート型の葉をまだこんもりと茂らせていた。
〜あとがき〜
いい試合でした。
今回は京産らしさを見事に封じ込めた明治に軍配が上がりましたが、関西の大学にもう少し東京での試合経験を積ませて挙げられたら、と思わずにはいられません。
今回の試合は、大災害の翌日、という極めて特殊な状況下で行われました。選手スタッフ始め関係者の皆様にも、またファンの方々にも、気持ちを試合に集中するのが難しい方もいらしたことでしょう。辛いお気持ちお察しいたします。
北陸地方のまずは1日も早いインフラの復旧、そして地域経済等の復興を心からお祈りいたします。
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