北鎌倉の料理屋鉢の木 店主

豊かな自然や、名だたる寺院に囲まれた北鎌倉に1964年創業、 小さなおにぎり屋としてス…

北鎌倉の料理屋鉢の木 店主

豊かな自然や、名だたる寺院に囲まれた北鎌倉に1964年創業、 小さなおにぎり屋としてスタートし、現在は和食・会席料理をお作りしてます。 日々の事や、北鎌倉の暮らし、時にはレシピなど、幅広く書いていきます。 【公式HP】http://www.hachinoki.co.jp/

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日本料理の楽しみ-「円覚」より

和食への注目が、益々高まってきました。 日本文化を語る中で、食べ物を通して、日本人の知恵が、広く世界に発信されています。 我々和食に係わる者たちは、伝統的な技術の伝承にとどまらず、体に良いとされるその背景を知り、知恵として共有することが求められています。 鎌倉は、宗教都市とも言われますが、日本初の禅の都です。 達磨大師を始祖とする禅思想は、鎌倉時代中期以降に日本に伝わり、料理にも大きな影響をもたらし、今につながる和食のルーツを形づくってきました。 今、世界中の人たちが、S

    • 諏訪大社にて

      スキーとスノーシューをしに長野県蓼科(たてしな)に行ってきました。 西高東低の気圧配置、ニュースでは、外出注意が出る中、南諏訪インターを降りる前から、路面は凍結。久しぶりの冬将軍到来の中、雪国に突入しました。 尖石縄文考古館に立ち寄った後、マイナス20℃という寒すぎてスキー客も少ない中ちょっとスキーを楽しみ、ホテルへ向かいました。 翌日は快晴。でも、マイナス18℃。早々とスキー・スノーシューを切り上げ、初の諏訪大社参拝となりました。 今年は、諏訪湖が結氷し、「御神渡(おみわ

      • [ 連載 ]  鉢の木物語 〜第三章〜掲載にあたって

        代表取締役 藤川 譲治 あっという間に時が流れ、夏を通り超し10月になりました。コロナ第七派は今も継続しています。 その様な中、45年間、精進料理を主に提供して参りました北鎌倉店を閉店し、鰻屋さんにお貸しすることとなりました。 止まることは一度も無かった鉢の木の歴史ですが、背水の陣でこの難局を乗り越えて参ります。 北鎌倉では今年の春から、「鎌倉殿の十三人」放映の影響もあり、商店の仲間は、営業を再開され、鉢の木の主としても安堵しています。 この度、連載の三章(最終章)

        • [ 連載 ]  鉢の木物語 〜第二章〜

          鉢の木物語〜第二章〜掲載にあたって代表取締役 藤川 譲治 2022年2月13日に第一章をnote にアップして、はや桜の季節を迎えています。改めて、大正・戦前・戦中・戦後の様子を、母の目に映った光景をとおして振り返ると、その底流には、近世100年の歴史にも通じる世界が見えてきました。 現場の最前線で、一生過ごした鉢の木創業者千葉ウメの息づかいが、蘇ってくるようです。 80年前、ドイツ・アメリカ・ロシアの外交官とホテルという職場を通して、関わりを持っていた母が、もし存命で、1

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        • 鉢の木物語
          3本
        • #日本伝統文化と歴史のお話
          3本
        • #店主日記
          5本
        • #お料理と素材のお話
          5本
        • #日本伝統文化と道具のお話
          3本

        記事

          母の命日を前にして

          2月15日は母の命日(千葉ウメ)です。この日はお釈迦様の入滅の日でもあり、各地で涅槃会が開かれています。 99才で他界した母の生涯を改めて振り返り、新たな世界が生まれようとしているこの時期に、鉢の木創業40周年を期にまとめた文書から、今後の道しるべを探そうと思います。 連載 第一章 鉢の木物語〜第一章〜はじめに  鉢の木代表 藤川譲治 一人息子の私が物心ついた頃から、我が家にはいつも誰かしら家族以外の人が居たように思います。 森岡澄さんは木工を、間瀬菊江さんはろうけつ染

          鎌倉時代 食の再現

          既に鎌倉時代にはこんなに豊かな「食の世界があった」とは・・・。 源頼朝が作った鎌倉武家集団の台頭を境に、武家が尊ぶ質素倹約・質実剛健の気風は、それまでの公家中心のきらびやかな気風から一変し、現代の日本らしさの基礎を形づくりました。 鎌倉幕府は源氏 三代の後、北条氏が執権として政治を担う頃には、新しい潮流として禅宗が日本にも大きく影響をもたらし、既に日本語として定着している、玄関・暖簾・欄間等の言葉を始め、多くの文明・文化が現在の中国より入ってきました 。 料理において

          鎌倉散策 秋の楽しみ

          落ち葉をサクサクと踏みながら小さな尾根道を歩いていた幼少期、60年以上経った今でも色鮮やかに蘇ってきます。 銀杏や欅もあちこちにありましたが、ほとんどがブナ科の木の葉で当時は、集めてたき火をしたり、沢山集めてその中に飛び込んだり・・・。 この時期遊び場だった建長寺の奥山には、椎やどんぐりの実が無数に落ちており、長細くとがった椎の実を集め、鍋でから煎りをしてから食べたものです。 当時は、椎の実とどんぐりの実とを食べられる食べられないと分別していました。どんぐりを食べるとど

          鎌倉散策 秋の楽しみ

          UMAMIは世界の共通語として

          旨みが注目され始めて久しくなりましたが、美味しいだけで無くダイエットにも有効とのこと。耳寄りな情報を得て和食の基本、出汁を再発見してみます。 旨みを感じることにより、少量の食事でも満足感を得られるようです。旨みを感じにくい人は、2週間の出汁を感じるトレーニングでOK、過食を防ぐことが出来るようです。 味の要素は、甘味・塩味・酸味・苦味・うま味から出来ており、その中でうま味は、明治初頭に、となり町-逗子の鐙摺(あぶずり)港にて研究が開始され、その後現在の「味の素」に発展し、

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          重陽の節句を迎えるにあたり

          9月9日は重陽の節句。お団子を積み上げ、自然の恵みへの感謝と豊作の願いを込めた古来からの節句です。菊の花の咲く頃、菊の節句とも呼ばれ、ご飯に混ぜたり、杯に菊花を浮かべ、「菊酒」として無病息災を祈りながら共にコミュニケーションを図ってきました。菊の文様は四大文明の頃のシュメール文明の石にも刻まれており、文字の発祥の頃より人々と共に現代に受け継がれていると、識者は述べています。 皇室の紋も菊花紋ですね。菊のご紋と言えば、現代でもほとんどの日本人に愛され続けています。秋作物が実り

          重陽の節句を迎えるにあたり

          アイデアは仲間からの贈り物

          0回目の北鎌倉マルシェを開催して早1ヶ月が経とうとしています。 7月3日のマルシェ当日は、大雨で横須賀線が止まり、社員も出勤できない為、北鎌倉の隣駅大船駅まで迎えに走りました。前日に、会場を浄智寺から和食の鉢の木回廊に変更し、屋根がある会場としていた為、事なきを得ました。 その様な中、天気予報を信じて15時スタートの準備を進めました。20名を超える大勢のボランティアスタッフが昼には集結し、先ずは浄智寺和尚のレシピによる、ノンオイルのカレーライスと特選和牛丼で腹ごしらえし、

          アイデアは仲間からの贈り物

          お客様の意見を鏡に・・・

          お客様に満足してもらう事は、我々飲食店にとって最も大事な事です。良かれと思い行ったことが、裏目に出ることも時には起こる。そんなサービス業の宿命を抱えつつ私たちはその時考えつく事を最善と信じて、日々を送っています。 一対一のお寿司屋さんでは、お客様のおなかの減り具合やお酒の進み具合を見計らいながら握ってくれたりします。そこまで配慮が届く握り手がどの位おられるかは解りませんが、気配を感じながら提供が出来たら、一流の領域に近づいているのではないでしょうか。 鉢の木では、お客様ア

          お客様の意見を鏡に・・・

          小さなおもてなしを呈茶にて

          6月のある日、形には残らないけれど、思い出に残るお迎えをしたいと思いました。 お迎えする方はベトナムからの留学生として、鎌倉のホストファミリーの元で住まい、学生時代を過ごした世界的企業の若い管理職。 40才前後の数人のメンバーで、IT最前線で活躍されているチームです。海外にいるメンバーとオンライン会議を行うという、超今風の料理屋の使い方。 私は、彼が学生時代から面識があり、出世した彼を日本らしくおもてなししたい。そして日本料理屋として気持ちが伝わる事は何だろうかと悩みま

          小さなおもてなしを呈茶にて

          蛍の季節 あじさいの季節

          6月12日には、鎌倉の鎮守様鶴岡八幡宮で放生会(ほうじょうえ)のお祭りがありました。 聞き慣れない言葉だと思いますが、仏教の戒律であった殺生(せっしょう)を戒める考え方が、神道と融合し神社でもお祭り行事として執り行われるようになったようです。 我々は、「はちまんさま」と呼びますが、お宮で蛍の幼虫を育て、自然に放つお祭りです。 今年は梅雨入りしておらず、湿度が余り高くないこともあり、例年のように源氏蛍が水面から、遙か頭上に飛び交う姿は見られませんでした。 きっと自由に入

          蛍の季節 あじさいの季節

          IT・AIを使った伝統の継承 ZEN

          北鎌倉は、この狭いエリアに沢山の今と過去の繋がりが共存しています。 今日は、大本山円覚寺の夏期講座二日目。久しぶりに8時半から参加させて頂きました。 二年目に入っているコロナ禍の中、巷では利用が進んでいるライブ+オンライン配信で、開催されました。第85回(年1回)と言うから、85年の歴史でしょうか。 従来は無かったムービーカメラや動画用の照明設備が備わり、スタジオ顔負けの設備が整っていました。 横田南嶺老大師が軽やかでありながら、解りやすく華厳経のお話をされ、お話の後

          IT・AIを使った伝統の継承 ZEN

          お箸の話

          日本人は、このような道具にも「お」を付けます。 スプーンやフォークには「お」を付けませんが、敬意を表して「御」と書きます。同じく「ご飯」にも敬意を表し「ご」を付けます。それ程長く大切にしてきた品々なのですね。 一説によると1400年前、厩戸王(うまやとのみこ)(聖徳太子)が、大陸からの箸を日本に広めたのだろうと言われています。 東アジアで現在も広く使われている箸は、素材や形も異なり、極東日本では、多種多様な箸が現在も使われています。 茶の湯でも、用途や場面に於いて食事

          梅仕事

          入梅とも言われるこの時期、北鎌倉のあちこちで梅の実の仕込みが始まります。 鉢の木では、近年梅ジュースを造っています。 以前は焼酎で大量に梅酒を漬けており、氷砂糖を100㎏単位で仕入れ、60リットルの琺瑯タンクで何本も仕込んでいました。三年経った梅酒を白ワインで割り、当時は精進料理の食前酒としてお出ししておりなかなかの人気でした。 一時は、瓶に詰めて販売しましたが、友人から税法に引っかかるとの指摘をうけ、直ぐに中止した苦い思い出もあります。 寺町の北鎌倉では、全てと言っ