愛は与えても奪われてはいけない
ぼちぼちオーストラリア9ヶ月目。日々感じることが多すぎて書きたいことも山ほどあるけど、日々が怒涛でまとまらない。今日は子供たちの話。
オーペアで、10歳と15歳の女の子をみている。オーペアでみるにしては比較的大きな子。この二人は養子で、5年前に里親であるママ(私のホストマザー)に引き取られた。
ママには自分の子供が5人いて、全員成人して子育てがひと段落していたんだけど、5年前に親戚の結婚式でこの二人が虐待されている場面に遭遇したのを機に養子として迎えた。実母との生活は過酷だった。内容は私が今まで聞いた現実世界の話の中でも最悪だった。文字通り最悪。実母たまに会うけど顔つきが普通じゃない。
ママがオーペアを雇うことを決めた理由は、自分にはこの二人に必要な愛情、時間、お金、何もかも足りないと思ったから。オーペアもお金はかかるが、ママはオーペアなしでこの二人を育てるのは精神的に不可能だと言っていた。ママは今もよく働いてる。ちなみに私は四代目。今までのオーペアとも仲良くさせてもらってる。
愛するためにお金は必要。お金を生むために働けば子供達と過ごす時間は減る。必要なものを必要な分だけ与えるのは簡単じゃないと思う。ましてやこの二人はそういう意味でマイナススタート。もちろん実母にしか与えられないものはあるが、周囲に安心できる大人がいることは大切だ。自分と一対一で向き合ってくれる、安心できる大人の存在。沢山いる子供の群れの中の一人じゃなくて、自分に注目し、話を聞き、感情をゆっくり味わわせてくれる大人。ママにしか与えられないものもあるし、私にしか与えられないものもある。私は私にやれることをやるけど、やれているのか、、
一般的なオーペアと違うところは、お母さんの役割を半分肩代わりしているところ。精神的にもそうだし、実際にママは週の半分は仕事で家を空ける。その間はママと同じ役割をする。土日は休み。お給料もちろんしっかりもらってます。
一番大変なのは愛を与えること。子供が可愛くないのかよ、と思われるかもだけどそれとこれとは別です。ママは最初「仕事内容は様々だけど、一番求めていることはこの子達を愛すること」と説明した。愛することが仕事。ママの言う「愛情」は、可哀想な子供に同情するような自然発生的なものではないことは分かった。
子供たちは、自分を保って生きることに必死なんだろうと感じる。生まれてからの大事な数年間に、実母を始めとする周囲の大人たちから愛情を与えられなかった(むしろマイナスだった)彼女たちは、人に与えられたり愛されることを骨の髄から必要としている。よく知らない大人には愛情を試す。どこまでやってくれるのか。私は周囲がいうほど気にならなかったけど、、慣れてくると、弱みを利用して罪悪感を与えてきたりするようになった。そういう賢さや図太さがある。私のこと何やと思ってんの、って言いたくなることも多々。大人でもそういう人に出会ったことあるけど、大人であれば離れて終わるやつなので、毎日向き合うのは疲れたし何度も辞めようと思った。
どう愛を与えればいいのかわからなくなった。与えようとすれば奪われる気がして。彼女たちをみる大人として、強くなる必要があった。彼女たちにとって安心できる大人でいたいし、愛はあげても、奪われたらダメなんです。それが私には難しかった。でもこれはどこで誰と生きていくにしても大事なことだと思った。
だいぶ色んなことに落ち着いて対応できるようになったし、私の変化に伴い子供たちも変わってきた。けど、自傷行為を見るのはやはり辛い。疲れや不安が強い時期だと、ちょっとした勘違いとか忘れ物した時に泣き叫んで「I’m so stupid!!」って自分の頭殴ったり髪引っ張ったりするんですよね。冷静ではいれるけどあれ本当嫌。本人のせいではないが。
彼女たちのトラウマが今にどう影響してるかは、私の経験だけでも説明しきれないし想像もできない。こんなに大変だと思わなかったしこんなに頑張れるとも思わなかった。なぜ自分が他人の子供に愛を与えたいと思えるのかは分からない。「子供好き」とは私には解像度の粗すぎる言葉で、言われるけど自負したことはない。オーペアなのにな。笑
不運に勝とうとする人間を応援したい気持ちはある。彼女たちにはいい人生を送ってほしい。失敗は沢山すると思うし、今、周囲の大人たちがどれほど頑張っても、彼女たちの人生は彼女たち次第でどうにでもなる。でもどうにかできる人間であってほしい。そこだけな気がする。私が頑張れるのは、本人たちの努力も見えるから。彼女たちが、専門家から学んでることを実践してる姿に勇気をもらうしリスペクトが湧く。実際二人とも成長してるもんなぁ、すごい。なんかネガティブな面ばかり書いてしまったけど普通に愛らしい二人です。ただウザいのも事実。笑
はたから見れば他の子供達と同じように学校生活を送って、踊ったり歌ったり男の子の話して盛り上がってる二人だけど、ふとしたときにあの子達が背負っているものを思い出す。知り得ないですけど。運命に負けないでほしい。てか私も程度が違うだけで彼女たちと同じラインの延長線上にいると思うので。何でもないように見える彼女たちの周りの友達もみんな一生懸命生きてますねきっと。完璧な親子関係はないだろうから。
ではまたー!