見出し画像

その人は、毎年お誕生日が嫌いだと言って泣いた


今日は朝から1時間の早出。
子ども達への挨拶もバタバタと
支援に向かった。

今日から実習が始まる。
こんな状況下でも受け入れてくださる企業はある。
前の仕事を辞めてからのブランクが長いので
先ずは午前中だけの実習として貰った。
少しご本人の不安が無くなって
実習本番の今日、
担当についてくださった方がとても丁寧で
その方のペースに合わせて下さるので
初期緊張はあれど
笑顔で初日を終える事が出来た。

8時から12時過ぎまで
コーヒーさえ飲まず
立ちっぱなしだったので
施設に戻る車内が本当にほっと出来た。

施設に戻ると
『1時間休み取ってね』と言われ
13時半までのんびりしようかと思っていたら
利用者のA子さんが泣いていると言う。

いつも笑顔で明るい彼女。
幼少期から実父からの暴力で
しばらくシェルター生活をしていた事があり
それで学校に通えず
勉強についていけなくなり
小学校から不登校で高校を辞めてしまった。
学校に包丁を振り回した実父が来た事もあると言う。
普段の彼女の眩しい笑顔と元気の良さからは
全く推し測る事すら出来ない。
私が想像するより遥かに壮絶な日々があったに
違いない。

何がトリガーになるのか、
私はこの半年以上支援をする中で
おおよその事を考えていた。
彼女が突然泣き出す時は
低い声の男性の声だったり
タバコの匂いだったりがあるのだ。

慌てて学習室に行くと
涙をポロポロ流しながら
『どうしてなんだか分からないけれど
生きてていいのか分からなくなって』と
泣いている。

話を聞くと
コピー機の入れ替えで業者さん達が
数人出入りしたんだと言う。
それだと思った。

ごめんね、辛かったね、
キツイ時に居なくてごめんねと
その場を収めた。

帰りの送迎車の中で
赤い目をした彼女に
私はふと思い当たる事を話した。
トリガーはコピー機の業者でも
根っこが違う気がしたから。

『お誕生日ってみんながお祝いしてくれて
嬉しいなぁって思う気持ちと
何故か
自分の存在している意味とか
自分の価値とか
そんな事を考えてしまうって無いかな?』と
私はさりげなく聞いてみた。

『あります』
そう言って
また彼女は泣き出した。

先週の金曜日、彼女はお誕生日だった。
17歳。
ずっと引き篭もりだった別の女性が
昔からやってみたかった事として
彼女にバースデーカードをあげた。

施設では何かとイベントをやろうと言う人が多い。
ずっと引き篭もりだった、
ずっと友人もいなくて1人だった、
やりたかった事だけど
今まで、やった事が無いからと
誕生日やハロウィン、クリスマス
沢山のイベント事を施設の中でやってきた。

今回のバースデーカードも同じだったに違いない。
でも17歳の彼女は、それが辛かったのだと言う。

自分が生まれて来る前から
実父の暴力があって
女の子が生まれてくるって分かって
彼女の母親は
暴力がなくなるかと思ったけれど
変わらない暴力の日常が続いたのだと言う。

自分なんか生まれて来なければよかった
お母さんが大変なだけだった
だから毎年、お誕生日が辛いと言って
彼女は泣いた。

私は運転しながら
17歳の彼女の生きて来た路を想った。
想うしか出来ない事ばかりだと思う。
結局、私は私でしかなくて
彼女は彼女なのだ。

私はね、と彼女に話しかけた。

どうしてもお母さんの目線になってしまう。
私の離婚した日本人の旦那さんも
私の大切な子ども達に酷い事をしたし
酷い言葉を投げて来た。
私は全力で2人を守ったけれど
正直守りきれなかった事もある。
でも、私が今、生きているのは
2人の子ども達がいてくれたからだと
ハッキリ言えるよ。
あの辛い毎日を
それでも笑ったりして過ごして来れたのは
子ども達がいてくれたから。
私が今生きて、こうやってAさんと出逢えて
話が出来て
それも子ども達が生かしてくれたからこそだと
思っている。

その事、お母さんにはなしたことある?
そう聞くと
無いです、と言う。
『私が話すと、お母さんまで辛かった事を思い出してしまうと思うから』と。

私は大切な人が
こっそり自分の知らないところで
悲しんでいたり
泣いていたり
辛い思いをしている事が悲しいと思う。
『Aさんがお母さんだったら、どうかな?』

『話して欲しい』
そう言うと彼女は俯いた。

『お腹が大きい時ね、どんな子なのかなーって
思うんだよ。
予定日ってあるけど、早く会いたくてそれより先に初めましてーーって出てくる子もいるし
お腹が気持ちいいなぁってのんびり屋さんもいてね。
どんな赤ちゃんでも、どんなお母さんも
その日がとても待ち通しくて、恋しくて堪らないんだと思うんだ。
Aさんのタイミングでいいから、お母さんに話してごらんよ。きっとその辛さやキツさを一緒に泣いてくれると思うよ』

彼女の母親には実際に数回あったことがある。
高校生で妊娠した、とても若いお母さんで
とてもAさんの事を想っている。
女手1つで色んな仕事をしながら
野菜嫌いのAさんに微塵切りの野菜が入った
ハンバーグを作ってくれるお母さん。

この世に生まれて来てくれた日を
親はとっても大切な日だと思う。
私を母として選んで生まれて来てくれた子ども達
その存在がなかったら
今の私も居ない。
それは毎日ありがとうと言っても足りないくらいなんだよ。

そう言うと
彼女は少し笑って
『そんな事思ってくれているかな』と。

私は思った事を全部言っちゃうタイプで
それで得もするし失敗も多いけど
どんなお母さんも似てるんじゃ無いかなと思うよ。

そう話したところで
彼女の家の近くに着いた。
『また明日ね』
そう言うと少し彼女は笑ってくれた。

17歳のあどけない笑顔の裏に
とてもとても深い闇がある。
それは何を持っても埋められないのだろうか。

お誕生日を
ただわーいわーいって
楽しみに想える日が来て欲しいと思う。
結局私は想う事しか出来なくて
非力を感じる事の繰り返し。

私が出来る事を
私が見つけていくしかない。
ヒントをくれる沢山の人達の存在が有難い。

早く帰って2人の子ども達に逢いたい、
そう思った。


#コーチング #レジリエンス#海外留学#バイリンガル#パニック障害#福祉の世界#拒食症#シングルマザー#子育て#世界ひとり旅#ヒッチハイク#保護犬のいる生活


良かったらサポートをお願いします。我が家のパソコン💻購入にご協力下さい!コメントも頂くとガテン頑張れます✨✨