役に立たないお金の話
新築祝いをしたとき、私は9歳だった。親戚の大人たちが父方からも母方からも大勢集まって、子どもの私は肩身が狭かった。そこで隙を見て自分の部屋に戻り本を読んでいると、母方の叔父が上がってきた。叔父は子どもの無意識下にも、彫の深い映画俳優みたいな印象を与える風貌であった。その叔父が、お父さんとお母さんには内緒だよ、と言いながら1万円札を渡してきた。それでどのくらいのものが買えるか検討はつかないものの、大金であることは私にも分かった。私は遠慮しようとしたが、叔父は聞かずに私のポケッ