【小説】 終わりの電車の向こうがわ
オレンジ色の静かな光が、中身が半分になった梅酒のグラスについた水滴に反射する。
わざと腕時計の時刻に気づかないように、彼のブルーのネクタイと浮き上がった喉仏に視線をあわせた。
ふたりきりの個室の外、数十分前までは人の気配が絶えなかった居酒屋が、だんだんと静かになっていく。夜が更け、終電が近い。あたしは、まだ知らないフリをしている。
「だからさ、もっとやらなきゃって思うんだよね」
ビール4杯飲んで変わらない顔色の彼は、先程から熱っぽく、立ち上がったばかりのプロジェクトに