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埴輪紹介所

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はにこが出会った埴輪たち。埴輪との出会いの衝撃をあなたにも。これはと思う埴輪がいたら、会いに行ってみて。埴輪のいる人生が始まります。
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#奈良

こまりんぼ【埴輪紹介所その1】

埴輪紹介所はじめました。 初回はこまりんぼ。 埴輪ならではのプロポーション。 上着の下のトリック。 横から見ると、とっても細い。 クツは平べったい。 でも鼻は高く、立派なミズラを結っています。 弓もユギもないけど、鞆を腰に下げる。大刀も。 肩甲(かたよろい)と籠手(こて)で腕はがっちりガードも、胴体はのっぺりで甲っぽくない。大丈夫か。 冑は謎多し。 いつもこまり顔。ため息が聞こえる。 そんな彼がわたしは大好き。 群馬県藤岡市白石字滝出土の男子埴輪。 所蔵はトーハ

照れ笑いの待ち合わせ【埴輪紹介所その180】

待ち合わせた友達みたい。 「久しぶりー」なんて。 会えてほっとしている。照れ笑いが隠れている。 円筒埴輪に表情を見てしまうのは私だけではないはず。 奈良県大和高田市の築山(つきやま)古墳(磐園(いわぞの)陵墓参考地)出土の鰭つき円筒埴輪。高さ110.0㎝、鰭を含めた最大横幅51.5㎝。 所蔵は宮内庁。 撮影は『発掘された日本列島2013』での宮内庁共催展示『陵墓の埴輪』にて。 またね。

三角の補強で迫力の通せんぼ【埴輪紹介所その120】

この迫力よ。 宮内庁のサイトによれば、現状での高さはおよそ116.5㎝。上部が欠けており、本来は150cm以上と推測されている。 そして「渡土堤をふさぐように並べられていた埴輪列のなかの一つ」。 通せんぼするにふさわしい盾である。 縦横斜めに走る線刻を確認。 背面も迫力。 後ろ側に突帯(とったい)がめぐっている。 本体は円筒埴輪、それに板をつけたということがわかる。 側面をあおると、三角が見える。 なるほど。補強してあるのね。 奈良県奈良市の佐紀陵山(さきみささぎや

きれいな丸い孔の情報【埴輪紹介所その119】

底に孔があけられているのがよくわかる、うまい展示。 きれいな丸い孔。焼く前にあけたということになる。 角度によっては底部が花のよう。 まさかこれも計算か? まさか。 口縁はくっきりとした二重口縁。 埴輪黎明期の埴輪。 奈良県桜井市の箸墓古墳(倭迹迹日百襲姫命大市墓(やまとととひももそひめのみこと おおいちのはか))出土の壺形埴輪。高さ45.0㎝、口径33.7㎝。前方部頂上に直接置かれていたらしい。 後方部からは突帯三条の壺形埴輪が出土しているようだが未見。見たい。

鹿の角? 鳥の羽根? 炎?【埴輪紹介所その65】

波にも見える。 なんにせよ上へと向かう。 何がモチーフなのか。 抽象的なイメージなのか? 埴輪のモデルは、わかっている範囲では実際に存在した物だ。 この埴輪の下で広がっている部分のモデルはキヌガサらしい。 キヌガサとは? 従者が主人に差しかける日傘らしい。 漢字表記は蓋、衣蓋、絹傘などと定まっていないので、ここではキヌガサと書く。 そして上の謎の部分は立ち飾り。 飾りをつけるとき、なんとなくでつけることもあるか。 特にモチーフだのモデルだのを考えずに。気分で。 …

想像の翼【埴輪紹介所その60】

鶏の象徴、トサカは欠けている。 あごの肉髥(にくぜん)もない。 それでも、小さく尖ったくちばしや太めの首など、確かに鶏。 尾羽の大胆な線刻は、尾が大きく広がっていたことを想像させる。 頭に穴が4つある。 前方の2つは目だろう。 後方の穴は何か。おそらく耳の穴。 耳朶(じだ)は見当たらないが。 足がどうなっていたのか、見たかった。 奈良県橿原市の四条2号墳出土の鳥形埴輪。 所蔵は奈良県立橿原考古学研究所。 四条2号墳からは、力士埴輪も出土。 撮影は『発掘された日本列

くちもと【埴輪紹介所その59】

埴輪の表情は口元で決まる。 カチューシャのような髪型は、力士以外の埴輪では見られない。 体は一部しかないが、おなかに続くラインはふくらんでいて、力士。 右手首に紐が巻かれている。 二の腕か肘か、位置は曖昧だがもう一本の紐。 籠手をつけているのかな? 力士埴輪の装束は、まわし以外はバリエーションがあるのです。 ヘアバンドのようなハチマキをしている力士もいる。 奈良県橿原市の四条2号墳出土の力士埴輪。 所蔵は奈良県立橿原考古学研究所。 四条2号墳からは、鶏形埴輪も出土

尖りと紋様で防ぐもの【埴輪紹介所その58】

上端の左右が尖った盾。 紋様で埋め尽くされている。 主体は鋸歯紋。その内側は平行沈線。 縁取りは綾杉紋。 もう一体。 埴輪界における盾の意義は大きい。 比較的初期から出現し、多数立てられた。 何を防いでいるのか。 埴輪の盾を支持する金属とプラスチック。 下端の曲線から見て、円筒の前面に板を貼りつけて盾とする構造らしい。 奈良県橿原市の四条7号墳出土の盾形埴輪。 所蔵は奈良県立橿原考古学研究所。 四条7号墳からはユギ形埴輪も出ています。 撮影は『発掘された日本列島2

オーラを背負う【埴輪紹介所その57】

やじりが線刻されているのが見えますでしょうか。 四角い箱に、矢が入っているのを表現しています。矢入れのユギです。 梯子のような刻みが走る。 もう1体。 基本的に同じデザイン。 背後はたぶん円筒。わたしは半角筒型と呼んでいます。 しかし箱より背板の形が気になる。鋭い尖り。 家やキヌガサ形の埴輪にも似たものがつくことがある。円筒にも例がある。 これを背負えるか? 板じゃないのかな。オーラとか? 矢の数は命に関わるから、大きなものを背負っていた、ということかも。 ユギ形埴

飛び立つための準備運動中の家【埴輪紹介所その31】

屋根に刻まれたシンプルな線刻、すがすがしい。 入母屋造りの家。埴輪でなければあり得ないプロポーションの家。 いちばん上の切妻部分が大きい。破風が思い切りよくのびている。まだのびそう。翼? ダンボの耳っぽくもある。 ふたつ並んだ窓は目に見えてしまう。 下端の中央が半円に切り取られ、左右に足ができた。もぞもぞ。 飛び立つための準備運動中かな。 側面の開口部は戸口なのか。 奈良県桜井市外山出土の家形埴輪。高さ47.8㎝。 上記サイトでは多数のきれいな画像を拡大できます。 所

ひょろりな家【埴輪紹介所その30】

高さがある、というか、縦長の家。 おとぎばなし感つよし。家というより塔。 斜めになっている長方形の孔は、たぶん戸口でしょう。 側面の丸い孔は通気口かな。 壁に綾杉紋がぐるりと刻まれる。 屋根に点々とあけられている小さな孔はなんだろう。鳥につつかれたわけじゃないよね。 てっぺんがガタガタしているのは、カツオギが取れちゃったのかな? 裏表はないらしい。 裾廻突帯(すそまわりとったい)は控えめというか、申し訳程度につけられている。 肝心の高さデータがないのですが、一緒にいる鳥

これから誰かに解かれる謎【埴輪紹介所その11】

モデル不明の埴輪の一つ。 これ何でしょうね。 上辺にU字のカット。 ところどころに小さい孔。 上下の台形部分には粗めの直弧紋。 中央寄りの台形の紋様も直弧紋? もはや青海波に近い文様。 真ん中のくびれには綾杉紋。 基本は円筒で、その左右に板がつく構造。 裏から見ると、円筒の上端は斜めに切られて開放されている。 かつては盾形埴輪の一種とみられていました。しかし現在では、これのモデルは盾ではなさそうという見方が有力です。 では何か。それがまだわからないのです。候補はいくつ

ウインクする家【埴輪紹介所その2】

ウインクする、というかウインクしかけているのか? 実はウインクできないのか? 家形埴輪です。 埴輪を見ていると、人物埴輪でなくても顔に見えてくる。 頑丈そうで安心感がある。 大きな屋根は入母屋造り。 たてたてヨコヨコ、網代紋が刻まれています。 足もとには、がっちりした裾廻突帯(すそまわりとったい)がぐるり。 その下は半円に切り欠かれています。これでしっかり地面に立つのだ。 奈良県磯城郡三宅町赤丸窯址出土の家形埴輪。入母屋造り。 樋口清之氏寄贈。國學院大學博物館所蔵。