マガジンのカバー画像

埴輪紹介所

183
はにこが出会った埴輪たち。埴輪との出会いの衝撃をあなたにも。これはと思う埴輪がいたら、会いに行ってみて。埴輪のいる人生が始まります。
運営しているクリエイター

#東京国立博物館

こまりんぼ【埴輪紹介所その1】

埴輪紹介所はじめました。 初回はこまりんぼ。 埴輪ならではのプロポーション。 上着の下のトリック。 横から見ると、とっても細い。 クツは平べったい。 でも鼻は高く、立派なミズラを結っています。 弓もユギもないけど、鞆を腰に下げる。大刀も。 肩甲(かたよろい)と籠手(こて)で腕はがっちりガードも、胴体はのっぺりで甲っぽくない。大丈夫か。 冑は謎多し。 いつもこまり顔。ため息が聞こえる。 そんな彼がわたしは大好き。 群馬県藤岡市白石字滝出土の男子埴輪。 所蔵はトーハ

ガッチャガチャでもぜんぜん戦える【埴輪紹介所その166】

武装した彼は大刀に手をかける。 かぶとに隠れたその顔をのぞき込む。 ポーズと合わない表情だな。 不敵な笑みか、おふざけか。 ポーズにも表情にも合わないのが 後ろ頭。 ない、という衝撃。孔をあけたのか、あいてしまったのか。埴輪はこういうことがある。 さらに年月が彼らを少なからず改変する。 ガッチャガチャだが 埴輪だから第一線で戦える。 ところで冑の左右で上に伸びているのは頬当てと見られているらしい。 しかし下ろしても頬に当たらない位置だぞ。 そして埴輪時代の

四隅突出型墳丘墓形の座布団【埴輪紹介所その153】

あぐらをかく彼。 椅子は座面の縁が垂れさがる。 四隅突出型墳丘墓(よすみとっしゅつがたふんきゅうぼ)みたい。 実際にはこんな椅子はなかっただろう。 座布団ならありうる。 だが、椅子の上に座布団、を埴輪時代にやっていたか? そもそも座布団があったか? なさげ。 ところで 座る埴輪にしては、脚のサイズが写実的。 顔の赤彩は直線的。 縁が欠けてしまった帽子にも赤い線が入る。 全形はどんな帽子だったのか? そのやや鋭い目に影を作っていたか。 栃木県真岡市亀山

たまには放牧【埴輪紹介所その152】

バランスの取れた体型。 馬形埴輪にしては。 この埴輪は、埴輪ファン以外にもけっこう知られている。と思う。 なぜなら、馬具の説明を担当しているから。 トーハクの解説馬。 ただし、解説の図は別の埴輪。 おそらく埼玉県熊谷市上中条日向島出土の馬形埴輪。 解説馬には馬鐸(ばたく)がない。 そのぶん、杏葉(ぎょうよう)をたくさん下げている。 口元の鏡板(かがみいた)はだいぶ丸っこいが、おそらくf字形。 ところでこの埴輪、いつも壁のケース内に展示されています。 埴輪群像

明白にオス【埴輪紹介所その151】

丸い目。まぶたはややふくらむ。 轡(くつわ)につけられた鏡板(かがみいた)には、鈴が6個もついている。胸には花のような馬鐸(ばたく)も4つ下げている。 うるさくてかなわん、と思うが、埴輪の鈴は鳴らないから彼は平気。 「彼」? そう「彼」です。 見出し画像では盾持ち人埴輪が隠している。 性別が明らかな埴輪は、馬形埴輪のほか人物埴輪にもありますが、ごくまれ。 おまけ。後ろから見ると 脚が斜めにカットされている。蹄を表したらしい。 埼玉県熊谷市上中条日向島出土の馬形

半月形の垂れ目【埴輪紹介所その137】

二本足埴輪ならではのプロポーション。 まるくふくらんだ太もも。 短い腕に籠手をつけ、頭椎大刀(かぶつちのたち)を佩く。甲冑はなし。 申し訳程度の武装。礼装か。 大粒の玉のくび飾りが目立つ。 半月形の垂れ目。 おちょぼ口。 顔や首は、黒と赤に塗られているようだ。入れ墨か化粧か。 服は白いかな? 色を再現した画像をつくってほしい。 ところで、山高帽は埴輪時代の重要アイテムらしい。 しばしば遭遇するトンカチミズラ。 どうやって結ったらトンカチ形になるの? 栃木県下

ちょこんとのせた足にアンクレット【埴輪紹介所その136】

きれいな卵形の頭。 前髷の中央にかんざしのような櫛を挿す。 ところで 台形の椅子に座ってます。 薄い椅子。 腕はぎこちないがお行儀よい。手首に一重のブレスレットをしている。 腕に対し、脚はなんと細いのか。細いというより小さい。埴輪バランス。 足置きにちょこんとのせた足に 二重のアンクレット。 ほか、くび飾りや耳玉も。 斜めがけの袈裟状衣の上にたすきがけ。裳は省略されたか。 左の腰に鈴つきの鏡。 五鈴鏡。 椅子の前面と座面の端にギザギザ鋸歯紋。 帯にも鋸

サルエルパンツ【埴輪紹介所その130】

脚が。いや腰が。 サルエルパンツ? 笑顔だが、 泣き笑いなのか。 苦笑か。 上半身と下半身を別々に作られ組み合わされた彼。 設計図が間違っていたのか。計算ミスか、連絡ミスか。 そもそも計画的に作っていなかったのかもしれない。 ほかにもいろいろ。 冑、いくらなんでも鋲が多すぎる。 その鋲と区別のつかない頸飾り。 赤の市松もよう、おしゃれだが甲にしては派手すぎる。 そして この足もとよ。 こういうクツがあったの? だとして、足はどう入っているのか... 栃木県

コロク【埴輪紹介所その114】

青海波が刻まれた中央がふくらんでいます。入れ物です。 何を入れるか。 上のほう、二重線で何か描いてあります。 羽ですね。 矢羽根です。 この埴輪は、矢を矢羽を上にして収める「コロク」です。 矢入れといえば、鏃(やじり)を上にして矢を入れるユギが埴輪ではお馴染み。 コロク形埴輪はめずらしい。和歌山県に多し。 コロクの鏃は下を向いていることになりますが 見えません。これ以上、上からのぞき込めませんでした。 右下にくっついているバナナはなんでしょうね。というのは置

墳丘に咲くラッパ?【埴輪紹介所その113】

何に似ているかと問われたら? ラッパじゃないでしょうか。口縁反り気味なこの広がりかたは。 でもラッパがモデルの埴輪ではなく、台に乗った壺がモデルの埴輪です。朝顔形円筒埴輪と呼ばれています。 誰が名付けたのかは不明ですが、花の名はちょっと良いですね。墳丘に咲く、枯れることのない花。 ところで、朝顔形円筒埴輪にもいろいろある。 細いくびれを作ってから直線的に広がるものもあれば くびれのないトーチのようなものもある。 この埴輪は? 一応ちゃんとくびれてます。ややムチム

モデルはもっと細い【埴輪紹介所その111】

丸いのは鈴。 曲線を描く板は護拳帯(ごけんたい。勾金(まがりがね)ともいう)。 ところで、これは大刀です。 太いけど… 楔形柄頭(くさびがたつかがしら)の木製大刀がモデルと思われます。 埴輪はだいたいモデルより小さい。家・馬・人など。モデルより大きく太い埴輪は少ない。 他には弓形埴輪が該当する。 大刀形埴輪には、鈴に加えて「三輪玉」をつけたものもあり。 鈴の代わりに四角錐をつけた鹿角装(ろつかくそう)大刀がモデルの大刀形埴輪もあります。 大刀形埴輪のモデルは今のと

盾の裏をのぞこう【埴輪紹介所その110】

左右にちょっこり尖り。 その下の方に、ギザギザもよう。 直しは多いが、盾があったという確固たる事実がここにある。 盾に学ぶ。 他にも学べることがある。 裏側。 盾持つ人はいない。 それより天辺に孔。 孔を開けたというよりは、円筒を開放状態のままとしたのでしょう。 盾の裏にも表にも、確かに誰かがいた。 神奈川県横浜市の瀬戸ヶ谷古墳出土の盾形埴輪。 所蔵は東京国立博物館。 撮影は2016,2017年、東京国立博物館にて。 瀬戸ヶ谷古墳からは、他にも多くの埴輪が

埴輪が訴えてくる【埴輪紹介所その109】

高坏(たかつき)とは? 脚のついた器。 埴輪では その脚は短め太め。 木製漆塗りのものほど細くできないのは仕方がないが、土師器や須恵器の高坏の脚はけっこう細いのに。 高坏を円筒に乗せているが、その円筒も短く、高さ確保できず。 埴輪が何かを 訴えている… 埴輪だから仕方ないのだ、といったところか。 そうね。屋外に置きっぱなしにされることを考えるとね。丈夫がいちばん。 太い脚で支える大事な器は、大型の丸皿。基本は。 この埴輪の皿は段差がある。 二重口縁の壺の口み

三本のライン【埴輪紹介所その105】

入口の上のギザギザもよいが 全体に廻された3条の突帯(とったい)がよい。締まる。 よく似たL字形の囲形埴輪が岡山で出ている。 こちらは突帯が2条。 どちらもギザギザはあるものの、扉がない。 ガードが甘いぞ。 壁の脚部が半円カットされている。 さて何を囲っていたのか。家形埴輪だとしたら、かなり小さい家だ。 群馬県伊勢崎市の赤堀茶臼山古墳出土の囲形埴輪。 高さ23.1cm。 所蔵は東京国立博物館。 撮影は2017年、東京国立博物館にて。 赤堀茶臼山古墳からは、