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埴輪紹介所

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はにこが出会った埴輪たち。埴輪との出会いの衝撃をあなたにも。これはと思う埴輪がいたら、会いに行ってみて。埴輪のいる人生が始まります。
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2020年11月の記事一覧

女が帽子をかぶるとき【埴輪紹介所その167】

他では見たことがない。 帽子をかぶる女子埴輪。 というのも、埴輪でかぶりものをするのはまず男子なのだ。 この埴輪は、胸といい櫛といい、確かに女子。 しかし帽子をかぶる。 てっぺんに孔。 何かついていたらしい。気になる。 それより気になるのは、なぜ女子が帽子をかぶったのか。 埴輪の歴史は長い。 100年、200年と時間が流れ、人物埴輪も変遷する。 埴輪には、埴輪がモデルの埴輪がある。 男女の埴輪の特徴を混ぜて作られたのかもしれない。 単純に、帽子好きの女性がいた

ガッチャガチャでもぜんぜん戦える【埴輪紹介所その166】

武装した彼は大刀に手をかける。 かぶとに隠れたその顔をのぞき込む。 ポーズと合わない表情だな。 不敵な笑みか、おふざけか。 ポーズにも表情にも合わないのが 後ろ頭。 ない、という衝撃。孔をあけたのか、あいてしまったのか。埴輪はこういうことがある。 さらに年月が彼らを少なからず改変する。 ガッチャガチャだが 埴輪だから第一線で戦える。 ところで冑の左右で上に伸びているのは頬当てと見られているらしい。 しかし下ろしても頬に当たらない位置だぞ。 そして埴輪時代の

訳あって太い脚にもアンクレット【埴輪紹介所その165】

はっきり申せば脚が太い。 しかたない。 粘土を輪積みして中空にする、という埴輪のつくりの都合上、そんなに細くはできない。男子埴輪は袴が太いが女子埴輪は脚自体が太くなってしまう。 座る埴輪みたいに中実なら話は別だけど。別というか、逆に細くなる。 ところで、裸足なのね。 指があるからそれがわかる。 足首の二重のアンクレットを始め、衣装が華やか。 左右非対称の布とか、リボンとか、線刻とか。 いいなあ。 ところで、ちゃんと顔がある。 2009年に群馬の大埴輪展で見たと

強運強烈パイナップル【埴輪紹介所その164】

高さが足りないか。パイナップルの葉と見るには。 でも頭の形とあいまってパイナップルっぽい。 埴輪時代には正体がわかっていただろうパイナップルが、いつしか謎となってしまった。謎はいまだ解かれずにいる。 かみつけの里博物館で初めて見たときの衝撃は大きかった。びっくりというより、呆然。 なんと埴輪の世界は奥深いのか。想像の範囲を超えてくる。かるく飛び越えていく。追いつけない。 顔はだいぶ直してある。 パイナップルの葉も、盾もかなり欠けているのだが それでも残ったものが、

リボン2つ(「違うよ!」)【埴輪紹介所その163】

額のほうはハチマキでしょう。 てっぺんのほうは、髻(もとどり)説とかぶりもの説とがある。 どっちかな。 この埴輪のは帽子というか、頭巾っぽい。 でも 何を言っても「違うよ!」と返されそう。 ところで盾を持っています。 幅おさえめ。盾としてはどうか? 「うるさいよ!」? 群馬県高崎市の保渡田八幡塚(ほどたはちまんづか)古墳出土の盾持ち人埴輪。高さ103.4cm。 所蔵は「かみつけの里博物館」。 同じ古墳から、まったく違うかぶりものの盾持ち人埴輪が出土していま

双耳杯を持つための手【埴輪紹介所その162】

勾玉を着けた彼女が捧げ持つのは 双耳杯(そうじはい)なるうつわ。 なにがのせられていたのか。 今は何もない。 横長の浅い器。 ペン皿のようにも見えるが、当時ペンはない。 全体の粗めの作りに対し、手は五本の指がしっかり表現されている。 埴輪の指は、ここまではっきり分かれていないことが多い。 特別な器を持つための特別な手なのか。 群馬県渋川市の坂下(町)古墳群出土の女子埴輪。高さ50cm。 所蔵は渋川市立古巻小学校。 撮影は2019年、『集まれ!ぐんまのはにわたち』

年月が彼を変えたか【埴輪紹介所その161】

盾の後ろ ややうつむき気味のその顔は 不敵な笑いをたたえている。 土の中で練った策を今、実行に移そうとしているのか。 しかしよく見ると 割れ、欠け、つなぎ合わされて、この顔になったのだ。 年月が彼を変えた。あるいは、年月を経て彼は生まれ変わった。 埼玉県熊谷市の女塚(めづか)1号墳出土の盾持ち人埴輪。高さ77cm。 所蔵は熊谷市教育委員会。 同古墳からは、よく似ているけれど表情の違う盾持ち人埴輪が出土しています。 撮影は2020年、『盾持人埴輪の世界』埼玉県

ミズラの上げ下げ【埴輪紹介所その160】

これは上げミズラか? 下げミズラか? あごぐらいの長さ。判断に迷う。 てっぺんは髪なのか、飾りなのか、帽子なのか。 ミズラとの組み合わせは、埴輪時代に実際にあったのか。 戸惑いが盾では隠せない? いや、謎に戸惑う現代人に、微笑んでいるだけかも。 埼玉県熊谷市の女塚(めづか)1号墳出土の盾持ち人埴輪。高さ68.3cm。 所蔵は熊谷市教育委員会。 同古墳からは、もっと謎の頭の盾持ち人埴輪が出土しています。 撮影は2020年、『盾持人埴輪の世界』埼玉県立さきたま史跡

頭がめんどう【埴輪紹介所その159】

これは頭。 人の頭。 香炉のような形。 その下にハチマキ? こんなめんどうなものを作るからには、モデルがあったと思う。 ただのお団子頭ではないはず。 ところで彼は盾を持っている。 正確には 盾をお腹に貼りつけている。 手はないのだ。 盾の上端に鋲らしき粘土粒3つ。鋸歯紋の線刻。 埼玉県熊谷市の女塚(めづか)1号墳出土の盾持ち人埴輪。高さ70cm。 所蔵は熊谷市教育委員会。 同古墳からは、まったく頭の違う盾持ち人埴輪が出土しています。 撮影は2020年、

生死をかけての土俵入り【埴輪紹介所その158】

右手は失われたが 確かに挙げた右腕で 土俵入りする彼。 太いまわしの上、へそに孔があいている。 カチューシャのような頭。 扁平髷(へんぺいまげ)と呼ばれているようだ。 大銀杏なのか。その原型なのか。 横顔は 鋭い。 当時の相撲は命がけだったという。 出土地不明の力士埴輪。 所蔵は埼玉県。もとは長瀞綜合博物館(旧名称は長瀞汲古館)が所蔵し展示していました。 収蔵は埼玉県立さきたま史跡の博物館。 撮影は2016年『新収蔵品展 ~旧長瀞綜合博物館からの寄贈資料~

鼻の穴に石って【埴輪紹介所その157】

歯の代わりに石が詰められている。 それは分かるが なぜ 鼻の穴にも石を入れた? たぶん盾持ち人埴輪だろうとのこと。 その理由の一つが、歯をむき出しにしていることだそうな。しかし、さきたまで見た歯のある埴輪は、盾持ち人埴輪ではなかった。 ただ笑っている人物埴輪だったかも。 大きな耳環(じかん)とギザギザの被り物は、群馬県佐波郡玉村町の小泉大塚越7号古墳出土の人面付円筒埴輪との共通点。 人面付円筒埴輪だったかもしれない。 全体が残っていたらなあ、と思ってしまう。

大きな頭で考えること【埴輪紹介所その156】

その顔はなにか、 考え深げ。 盾を持つ人。 盾は戟(げき)がついているが、ただの棒状。紋様はヒレ部分にギザギザ鋸歯紋と、わりとシンプル。 どちらかというと、顔のほうに力が入っている。 目のまわりの線刻は入れ墨か。 頭部上端が欠けているのが悔やまれる。オリジナルの状態では頭部の大きさが際立っていたはず。 埼玉県坂戸市の塚の腰1号墳出土の盾持ち人埴輪。高さ73.5cm。 所蔵は埼玉県教育委員会。 撮影は2020年、埼玉県立さきたま史跡の博物館にて。 またね。

あゆいの土鈴は落とさない【埴輪紹介所その155】

帽子と衣服に大小の鋸歯紋、特に袴は白い顔料で際立つ。 それもさることながら 脚結の鈴。 左右7つずつか。 こんなにもたくさんつけているのは初めて見た。 落とさないようにね。 埴輪の鈴は落ちると鳴らずに割れてしまう。 大刀の紋様はなんだろう。 帯にも鈴。 上衣の合わせがほぼ真っ直ぐというのは珍しい。 ちなみに、上着は胸に丸という、ちょっと変わった紋様。うまく撮れず。 こちらの埴輪の袴の紋様に似ている。 下記図録参照。 男子埴輪(出土は伝・群馬県)。高さ137

軍服を着た女【埴輪紹介所その154】

右手に頭椎大刀(かぶつちのたち)を持つ。 大刀持つ女子埴輪はめずらしい。これ1体のみかも。 個人的に感銘を受けたのは、たすきの薄づくり。見事です。 線刻や彩色も細かく丁寧。 甲冑をつけた女子埴輪はない。少なくとも、はっきり女子と分かる埴輪では今のところない。この埴輪も、甲冑をつけてはいない。 しかしこの埴輪のたすきは、どこか軍服を思わせる。 くび飾りは小さい玉をたくさん連ね、中央に勾玉を着ける。 たいていの埴輪の耳環(じかん)はドーナツサイズで頬に貼り付けられている