届かなかったSOS~三浦春馬さん~

没して3年が近い。
自ら命を絶った俳優・三浦春馬。没年30。思う諸々を記したい。

一番最初にわたしが三浦を知ったのは、東京電力のCMだ。
八代亜紀さんと共演されていて、カレンダーに何故か「春馬 バイオリン合宿」と記されている。
横で半ズボンス姿の三浦さんが、ご機嫌に歌うという、訳の分からないCMだった。

数年してから「徹子の部屋」で、拝見した。髪が長かった。
(大人しそうな、線の細そうな男の子)それだけだ。
(どこからやって来たんだろ?)ぐらいに思いはしたけど、特にどうこうはない。(印象に残らない、流れるだけ)
思えば個人的嗜好。髪長男が嫌いなわたしの、盲点である。

更に何年か過ぎたある日。
どこかで見たような俳優が、画面に映る。黒子が思い出させて来る。
(あっ!三浦春馬じゃん!髪の毛を切ったのね。美男子だわ。男はやっぱり短髪よ!美男子こそ、短髪に)瞬時に、一変した。

スカウトかと思っていたが、実は子役。4歳からの、児童劇団所属者だ。
自ら命を絶った原因は、本人に依る所だが、SOS。
「今、こういう状況なんだ」「悩んでいるんだ、真剣に」
周囲に発信していたにも拘わらずに、一蹴。冷笑され、却って傷ついたのが大きいのではなかろうか?
じわじわと逝く方法。自動車の窓に目張りをし、中で練炭を炊いて、、。でなく、手っ取り速さ。直ぐに逝ける首つり自殺を選んでいる。

「農業をやりたい」「地元に帰りたい」口にしていた。
けど、周囲がちゃんと受け止めなかった。敢えて言えば、マトモに受けなかった。「思い留ませた」のだ。
イケメン俳優、売れてる俳優。
家族からすれば「華やかな世界で活躍している、自慢の息子」。
仕事関係者からすれば「30にして<日本を代表する表現者>とすら、言われる奴。まだまだ若い。ガンガンゆける」
(農業を?何を言っているんだろう、春馬っち、ご乱心?)
(多少の疲れが、出した言葉だ、直ぐに治るやね)
程度の認識ではなかったのか?冷笑にも似た一蹴に、三浦さんは傷つく。

しかもネットで、「これこれらしいよ」バンバン書かれ、イジられる。
「メンタル弱くね?春馬っち?」「武道でも習って、精神力の強化を」
匿名で山のように叩かれる。(注意・2つの意見は、わたしの想像。本当に書かれたのかは分かりません。悪しからず)
目にする度に、更に衝撃。打ちのめされ、ズタズタになる。心が晴れない。いつも灰色の薄い雲が、立ち込めているようだ。
(言うんじゃなかった)打ち明けたのを後悔。
(言うんじゃなかった。一人で、ずっと悩むが良かった。何てバカなんだ、俺は。俺って、馬鹿だ。大馬鹿者だ)
自分を責めに責め、息苦しくなった。
徐々に徐々にの結果であろうと、推測する。

誰から「苦しい」「辛い」
胸の内を明かしても、悲しいかな、多くの日本人は「皆な同じだ」だの、「君だけじゃない」だの。否定さえすれば、安心感を与えるものだと思っている。
否定=安心感。矛盾するけど、国民性。悪しき国民性の1つだ。
「止まない雨はない」も、同じ様な感覚で使う。お手軽励まし言葉である。
三浦さんは「SOS」を発していた。けど、届かなかった。
今、天国で何を思っているのだろう。
改め、ご冥福をお祈り致します。

<了>

#創作大賞2023


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