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対話するひと、声をあつめるひと。散歩家。こどもがのびのびあそんで描く場「にちようびのア…

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対話するひと、声をあつめるひと。散歩家。こどもがのびのびあそんで描く場「にちようびのアトリエ」を主宰しています。

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    こどもたちの「にちようびのアトリエ」。その場と時間を記録します。

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《自己紹介》 こどものアトリエをはじめるにあたって 大切にしていること

 こんにちは。    こども造形教室「にちようびのアトリエ」を主宰する、野上麻衣といいます。  都内の幼児教室で、こども造形教室を15年間、受けもってきましたが、2年前にはなれ、細々とですが、こどものアトリエを開催してきました。  現在は、この春より東京・浅草橋にて定期アトリエを、また、個人宅やイベントスペースで出張アトリエを開催しています。 ・  この度、アトリエをはじめるにあたり、そこがどんな場なのか、「場所」についての自己紹介文を書いてみることにしました。  こ

    • 5月のアトリエから② 形のないもの

      小麦粉えのぐを用意していた日のこと。 「えー、今日、これやるの?」(触ってみる) 「わ、なんかグニャグニャしてて気持ちわるーい!」 というAちゃん。 小麦粉えのぐは、小麦を水で溶かして熱したあとに色をつけたもので、触感が相当ぶよぶよしている。Aちゃんの反応は予想してはいたものの、予想以上の嫌がりよう…。どれどれ、とまずはわたしが手につけて遊び始める。 「ほんとだ、たしかにこれは気持ちわるいね…」 「やりたくないよー」 「うーん、いやかぁ…」 「気持ちわるーい!」 と言い

      • 5月のアトリエから 「色との対話」

        4月、Aちゃんが興味を持ったのは、「色を混ぜて、あたらしい色をつくること」でした。 あるとき、「オレンジ色がつくりたい」と言ったAちゃん。 色を混ぜてもなかなか思っている色に近づけず、そのとき、正解・不正解がある混色のルールに対して、わたし自身も「黄色と赤を混ぜるとオレンジになるよ」と正解を伝えてしまうことへの戸惑いがありました。 もう少し違ったアプローチができないだろうか。そのときの経験からヒントをもらい、5月のテーマを「色との対話」にすることにしました。 じっくりと

        • 《記録》3/30 にちようびのアトリエ「どうぶつたちのいるところ」

          この日のワークショップ、タイトルは「どうぶつたちのいるところ」。 6歳のふたりが来てくれました。 事前にこちらで決めていたテーマはふたつ。 ◯図鑑や絵本のなかの動物を、見て、描いてみること。 ◯ハサミやのりを使って立体的に作品をつくってみること。 それ以外は、こどもたちの心の動き、手の動きに任せて、進めていきます。 あとからその過程をふりかえって、気づいたことを書きました。 描いたことがないものを描くって? 動物の絵本や図鑑をパラパラとめくりながら待っていると、ひとり

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        《自己紹介》 こどものアトリエをはじめるにあたって 大切にしていること

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          《記録》10/25 にちようびのアトリエ「ちいさな声をきく」

           半年ぶりのアトリエは、植物園でおこなうことにしました。  朝10時。ひさしぶりに会うこどもたちに、わたしのほうがドキドキしています。  この日集まったのは、年長〜4年生までの女の子4名。入口でお家の方に手をふって、さっそくこどもたちと茂る緑のなかへ進んでいきました。  歩き出すと、10月だというのに蚊に刺されたり、拾った木の実からムカデが出てきたり、の大騒ぎ。「帰りたい〜!」と泣き出す子もいて、「さてどうする?」をみんなで考える。  こどもたちとの冒険は、こんなはじまりで

          《記録》10/25 にちようびのアトリエ「ちいさな声をきく」

          ---にちようびのアトリエ---変化することと、変化させられること

           生活や仕事、ひととの出会い方、向き合い方。4月からいろいろ変わって数ヶ月がすぎた。  そのあいだ、変化するもの、変化することについてずっと考えていた。 ・  変化は怖い。変化そのものが苦手だ。ずっとそう思っていた。   でもその苦手としている変化をよくよく見ていくと、自分のなかのある欲望とであうことになる。そこにあったのは「変わりたい」というつよい思いだった。わたしは変化をひどく怖がりながら、変化することをつよく望んでも、いた。それでいて、自分のなかの安心を求める思いは

          ---にちようびのアトリエ---変化することと、変化させられること

          ---にちようびのアトリエ---日常にもどりはじめるまえに、ちょっと考えてみたいこと④

           スイスを満喫したわたしは、その足でベルリンに向かった。ベルリンは、どことなく惹かれる街で、その街を歩いてみたいとずっと思っていた。  でもひとつだけ、訪れたい靴屋さんがあった。  日本では高価で手が届かなくて、いつも見てるだけだったお店。ドイツ生まれのその靴屋がベルリンの街はずれに廉価店を構えてると聞いて、さっそく向かう。  店に入ると、靴箱が雑多に山積みになっていた。お店というより倉庫にちかい。季節はずれのもの、型落ちのもの等、一点もの。サイズもデザインもばらばらに積

          ---にちようびのアトリエ---日常にもどりはじめるまえに、ちょっと考えてみたいこと④

          ---にちようびのアトリエ---日常にもどりはじめるまえに、ちょっと考えてみたいこと③

           スイスへ旅をした頃に働いていた、児童館のことを書いてみたい。    児童館内の図工室は、こどもたちがなんでもつくれる場所だった。手順が決まった工作教室の日もあったけれど、日々の図工室はこどもひとりひとりのアイデアから作品づくりをはじめる(少なくともわたしのいた児童館ではそうだった)。ノコギリを使った木工作に、絵の具あそび、ガラス工芸なんて日もあったし、紙粘土も。相談にのるところからのスタートだから、とにかく時間も手間も人出もかかる。  図工室は、こどもたちが普段手にすること

          ---にちようびのアトリエ---日常にもどりはじめるまえに、ちょっと考えてみたいこと③

          ---にちようびのアトリエ---日常にもどりはじめるまえに、ちょっと考えてみたいこと②

           昨年11月から半年ほどかけて、「にちようびのアトリエ」を数回開催した。場所を貸してくれる友人に恵まれ、実際にアトリエを開催することもできたし、先月はコロナのこともあり、zoomでのアトリエもやってみることができた。ただ、場所、やり方、人数…と選択肢が増えた今、わたしはすこし迷っている。  今まで、ほんとうに偶然に人との出会いと流れがあったからできたこと。今度はその次。自分の足で動きだすのに、ちょっと立ち止まって、考えてみたかった。  場所について。  だれかとなにかをとも

          ---にちようびのアトリエ---日常にもどりはじめるまえに、ちょっと考えてみたいこと②

          ---にちようびのアトリエ---日常にもどりはじめるまえに、ちょっと考えてみたいこと①

           幼稚園のとき、楽しく描いていた絵を人とくらべられてから「どんな絵を描いたら自分はここにいていいのか」とまわりの目ばかり気にする子になってしまった。  そんな経験があったから、自分がこどもの仕事についたとき、大人にされて嫌だったことは絶対にこどもにしない、それだけは決めていた。「遊んでお金がもらえる」というあまりに不純な動機ではじめた大学生のアルバイトだったけれど、今から思えば「くらべない」「評価しない」という絶対的なものさしだけは最初から持っていた。  それから学童や児童

          ---にちようびのアトリエ---日常にもどりはじめるまえに、ちょっと考えてみたいこと①

          果実のなる庭で

           友人にその宿のことを聞いてから、いつか行こうと決めていた。  夏になると、山登りに出かける土地がある。山形県、鶴岡。採れる野菜のどれもが --もちろん野菜にかぎらず果物も茸も米も-- とにかく元気があって、はじめて食したとき、都会暮らしでひ弱になっていたわたしの体は大いに喜んだ。四方を囲む山々の合間には庄内平野が広がり、山の雪解け水は海をめざして悠々と下る。土はふかふかと膨らんで芳香を放っていた。数年通い、作物の美味しさは、土の美味しさなのだと知った。  ひとりの女性が

          果実のなる庭で

          《記録》2020/5 にちようびのアトリエat zoomをふりかえる②

          ・・・ ①からのつづき ・・・ -----6. 信頼すること  連休中だったこともあって、お父さん、お母さん、兄弟揃って、みんなで一枚の絵をつくっていた家族もいた。いい感じの距離で、こどもを見守る家族もいた。  zoomでは、それぞれのお家の様子が見えてしまう。こちらは主宰する側だから、見られて当たり前…とは思ってはいたけれど、やはりプライベートな場所に入り込むことは今までとは別の配慮が必要だ。   アトリエが終わって数日後、ある保護者の方が「やっぱり疲れたよね!」と率

          《記録》2020/5 にちようびのアトリエat zoomをふりかえる②

          《記録》2020/5 にちようびのアトリエat zoomをふりかえる①

           予定していたこどもたちとのアトリエを中止にしたのは4月。「なにか別の方法はないかな…」と思いめぐらしていたところ、友人がオンラインでのアトリエを提案してくれた。  今までできていたことができなくなるのは、不安も戸惑いも生む。できないことの方が目につくだろう。けれど、そこからぽーんと飛んでみれば、壁の向こう側が見えたりするものだ。まずは、やってみよう。やってみてから考えよう。それは、大切な友人と、こどもたちから教わってきたこと。  いつもはアトリエのこどもたちの様子を記録す

          《記録》2020/5 にちようびのアトリエat zoomをふりかえる①

          長い散歩

           「明日は雪が降りますよ」。ところどころでそんな話を聞き、めずらしく天気予報をたしかめた。三月の終わりの週末、桜はすっかりほころんでいるというのに、東京都から外出自粛の要請が出て、それぞれがそれぞれの部屋でじっと過ごすはじめての日曜日。わたしはひとり家に籠って、パソコンの前にいた。  どうしてますか?とメールをくれたのは、遠方の友人。東京の状況を聞いてメールをくれたらしい。二年ぶりのことだった。  彼女とわたしは、東京で出会っていた。とある講座でいっしょになって、それからは

          長い散歩

          坂道の記憶

           生まれ育った家が横浜だったわたしにとっては、東京はつねに手の届くところにあった。働いていたのも東京だったけれど、そこはあくまで行く先であって、住むことができる場所だなんて実は考えたこともなかった。  実家を飛び出て、なんにも知らない街でひとり暮らしをはじめて最初に驚いたのは夜の長さだ。その時間が欲しくてひとり暮らしをはじめたはずなのに、数ヶ月もするとあまりの寂しさに居ても立ってもいられず、用もなく一駅先のスーパーや本屋さんを行き先にしてはぶらぶら歩き、眠るまでの時間をつぶ

          坂道の記憶

          あたりまえのこと

           堀尾貞治さんというおじさんがいる。はじめてお会いしたのは、2005年の横浜トリエンナーレの会場だった。わたしはそこでボランティアをしていて、週に一度、会場に通っては、来場した方と作品を回るツアーを担当していた。会場は、埠頭の先にあるとてもおおきな倉庫。  堀尾さんの存在が気になりだしたのは、会期も折り返しに近づく頃だった。ツアーで巡る作品の選択は担当者に任されていたけれど、数ヶ月続くと、なんとなく来場者に人気のあるもの、評判のよいものに偏ってきていた。  堀尾さんの作品

          あたりまえのこと