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ミダスの結婚


   良い癖? 悪い癖 ?  2985 文字

 ある村の、ある夫婦は長い事子供がおりませんでしたが、待ちわびていた子供が授かりました。
 それは、それは天に行き着く程の喜びようでした。
 元気なプリプリの可愛い男の子が家族に加わり泣くのも可愛い、目を開けると父親は母親の声を聞きつけ、仕事の手を休めて子供の所へと飛んで来る始末です。
 そして男の子の名前はミダス、グレーのお目々に茶が少しの金髪が多い髪の毛、肌の色は白く透き通る様でほっぺがほんのりピンク色の可愛い赤ちゃんは、いつもニコニコ笑っています。
 
  そんなある日の事、ねずみの キィーキィーと泣き叫んでいる声に驚いた夫婦は駆けつけて、腰を抜かす程に驚き、ミダスを抱き上げてさらに驚いてしまいました。
 可愛いミダスは生きたねずみを、可愛いお手々でギュッと握り閉めて
とても嬉しそうに微笑み、身体は石のように硬くなっているではありませんか、大急ぎでお医者様に診てもらいましたが、首を傾げるばかりなのです。


 ねずみはキィーキィーと泣き叫んでおります。

「こんなのはワシも初めてだよ、う~ん、心臓はちゃんと動いているし呼吸もしっかりしている、生きている事は確かなんだがね~、硬いな~肌を押してもピクとも動かないなんて信じられないよ」

「なんとかなりませんか ? ミダスはこのまま死んでしまうのですか ? 」

 夫婦はお医者様なら絶対にミダスを、こんな変な病気なんか治して、前の様に元気になるとばかり思っておりましたから、大層ガッカリしてとても悲しみました。

「う~ん、心臓は元気に働いているから死んだりはしない筈だと思うよ」

 母親は硬くなったミダスを抱きかかえてシクシク泣き出してしまいました。

「私の可愛い坊や、どうしたらいいの ? 」

 それから夫婦は色んなお医者様を尋ね歩きましたが、お医者様は皆、目をパチクリ首を傾げるばかりです。
 
 ねずみは握り閉められたまま、恐ろしくて生きた心地がしなかった事でしょう。

 夫婦は片時もミダスから離れずに見守る事しか出来ません。

 途方にくれていた夫婦の目の前のミダスは瞳を開き、泣き出しました。
 きっかり72時間、元気に元の通りに身体は柔らかく、泪も出ていて、お腹が空いたと言って泣いています。
 夫婦は抱き合い泪を流して喜びました。

 そして、ねずみはカゴの中で長い事、この家族の一員となったのです。

 いつもニコニコと村の人達から可愛がられて、ミダスはスクスクと成長して行き、村の学校へ通う様になりました。

「大きくなったねーミダス、学校は楽しいかい ?」

「うん、楽しくて仕方がないんだ、友達も沢山出来たよ」

「そうかそうか、それは良かったな、うちの奥さんが作った美味しいお菓子があるぞ、ミダスの好きなイチゴのジュースもあるんだがなー、どうする ? 」

「苺のジュースがあるの ? どうしょうかなー」

 悪戯っぽい目をして笑っているミダスの背中をポンポン叩きながら、学校と家の丁度中間に位置しているお家のお爺さんは、ニコニコしながらミダスを家の中に招き入れました。

 ミダスの悪い癖は、心惹かれた物が欲しくなってしまい手に入れようとした事だったのです。

 歩ける様になった頃のミダスは花を掴んでは石になり、道端に落ちていた小枝で石になったりしてしまうのです。
 村の人達は笑いながら、色んな所で石になっているミダスを大切に抱きかかえて、夫婦のもとに連れて来てくれました。
 そんなミダスの両親はとても悲しみ、物を見えなくする眼鏡を用意しようか ? 外に出さない方がいいのではないかと思案ばかりの毎日を送っていたのでした。
 そんな心配をしていた夫婦に村の人達は

「私達はミダスから沢山元気を貰っているよ、あの笑顔を見ると幸せになれる、皆で見守っているから安心して自由にしてあげなさい」

 夫婦はそんな暖かい気持ちを持った、村の人達にとても感謝して喜びました。

 ミダスはお嫁さんを迎える年ごろになりました。
 その頃には国中の人達がミダスの悪い癖を知る事となっておりました。

 ミダスはこの悪い癖以外はとてもほがらかで明るく、歌が上手で色んな楽器を弾いて歌い皆の人気者でした。
 とても良い子供であり、明るい青年になりましたが、何故か年ごろの娘さん達には避けられてばかりなのです。
 そんな事は仕方がない事、何が仕方がないのか深くは考えていませんだした。
 もうひとつ不思議に思っている事がありました。
 気が付くと何時も家のベッドに何故寝ているのか ?最後の記憶から三日も日にちが過ぎてしまっているのか ? それが全く分かりませんでしたが、明るい性格のなせる業なのでしょうか ? 全く気に病む事をしませんでした。

 ある日の事、ミダスは学校の事を思い出しました。
 クラスの全員が先生が弾くピアノの回りに集まり、とても楽しかった事が思い出されて仕方がないのです。

 よし、ピアノを見に行こう
 
 窓越しに見えたピアノはとても高く、お金が沢山入り用でした。

 とても高い、ミダスの持っているお金の倍以上もないと買えない事を知り、今日は見るだけで帰る事にしました。
 その帰り道に大きなお家の前を通りかかった時の事でした、こちらに向かって慌てた様子の男が走って来ます、ヒョイとミダスの前に出て来ました。
 その男はミダスを見て大変驚いたのか、目を見張り身体が硬直した様に見えます、胸に抱えていたのはバックからはみ出しているお金と、手にもお金が握り閉められているではありませんか。
 ミダスはそのお金がとても欲しくなってしまいました。

 
 きっちり72時間が経ちました。
 ミダスは目がさめました。
 そしてとても驚きました。

 回りには大勢の人達が心配そうにミダスを見つめており、見知らぬ男がミダスの前で息も絶え絶えにぐったりと項垂れています。
 この男ミダスにキッチリ72時間締め付けられて、飲まず食わずでしたから可哀そうなものです。
 何があったのか分からないで辺りを見回しているミダスに、町のお巡りさんが声を掛けてきました。

「気が付きましたか ? 君は色んな家を荒らしていた泥棒を捕まえてくれました、是非ともお礼をする為に待っていました」

 ミダスは大きなお家の方からもお礼を言われ、そして、お巡りさんからは表彰状と金貨3枚を貰いました。

 ミダスの両親は涙を流して喜んでおります。
 そして初めて自分がどうなっていて記憶がないのかを両親から詳しく聞き、驚くと同時に両親を心配させていた事に謝りました。

「ミダスが悪いわけではないのよ、病気の様な、悪い癖というか良い癖だわね、悪い人を捕まえたんですもの、ねえ、そうでしょうお父さん」

「そうだな、これは良い癖だな」

 それから暫くしてからミダスは心根が優しく美しいお嫁さんに恵まれました。
 お礼に貰った金貨3枚で楽器や譜面や文房具を売るお店を開きました。
 
 ミダスは自分が石にならない様に心を制御する事を覚え、ミダスの奥さんはミダスが石になるかも知れないからと、いつもミダスの側で見守って、とても仲の良い夫婦になりました。

 三人の女の子が生まれて、お爺さん、お婆さん、それからミダスの家族七人の家族は、とても明るく外迄聞こえる笑い声でとても幸せに暮らして行きました。

      おわり

 この物語は2021.5月頃に原稿用紙5枚の物語でした。
寝かせる事一年と少し、読み返してあまりの酷さに驚愕、ストーリーはそのままに書き足して3000文字近くになってしまいました。
 最後までお読み頂きありがとうございました、又寝かせると違う物語が出て来るかもなんて思っております。



 

                


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