一章

第一章:プレゼントはワ・タ・シ?

2034年、師走。
日本人の足は走るというよりも、浮足立っていた。
「そういえば、部長はもう申し込まれました?」
「あぁ、もちろん。今年は***のベルトをお願いしといたよ」
「おーいいですねぇ。僕は…」
年末の慌ただしいはずの会社でも、しばしばそんな会話が聞こえる。

クリスマス。両親がサンタに化けて、子供にプレゼントをあげる日。古くより、そう親しまれてきた。大規模な経済効果もあり、政府からみてもよいイベントだった。
しかし、2019年、『ルナ』という会社によって大きな変化が訪れた。

その会社の主な事業内容はこうだ。
まず、封筒に自宅の合鍵と、ほしいプレゼントを書いた手紙を入れる。宛名には「サンタさんへ」と記入しポストへ投函。するとその年の12月24日の23時から26時の間にプレゼントが枕元へ届くというものだ。
サービスの対象は、老若男女問わず、すべての人である。よって、成人した大人はもちろん、恵まれない家庭などにも平等にサンタが訪れるようになった。

顧客の安全は、莫大な慰謝料をその加害者である従業員自身から支払われるということと、これまでの実績で信頼を得ており解決済み。
宛名に関しては全国の郵便業界とも提携してこの仕組みを実現している。

問題は金だ。どこから出ているのか。その答えは未だ謎に包まれたままである。社長がもともと大金持ちだとか、多くのスポンサーがついているだとか。たくさんの説が飛び交う。

一見、金の出どころ以外はきらめいたサービスだが、世に浸透しだしてからは、クリスマスの経済効果が急激に下がったというマイナスな影響もある。

さて、大きく変わった日本のクリスマス。
しかし、神様が12月、日本を含めた世界中に、センセーショナルな魔法をかける事は変わらないままだった。


そして、この東京のカフェにもその影響を色濃く受けた二人の若い娘がいた。
佐藤麻理[まり]と越谷菜緒[なお]だ。

「はぁ~。今年はクリスマス一人か~。いいなぁ。菜緒は。彼氏さんとデートでしょ?」
羨まし気に麻理は言った。
「まぁ、うん。」
菜緒は高ぶっている気持ちを完全に隠し、いつもどおりクールに無臭な声で淡々と述べた。
「いいなぁぁぁあああ。」

同じイベントのはずなのに、各々のステータスによってこんなにも抱く気持ちが変わる。相変わらず、神様は意地悪だ。

「そうだ、これやったら?少しは気が紛れるんじゃない?」
不意に菜緒がスマホで、ある求人サイトを麻理に見せてきた。
「...サンタさん募集?」
「ほら、ルナのやつだよ。」
「あー、あのサンタってバイトだったんだ。なんかまた一つ夢が壊れた(笑)」
「一年のうち、三時間だけすごい人数の従業員が必要になるサービスだから。バイト雇うのがベストなんだろうね。」
「なるほど」
「どうせあんたのことだから、24日は記憶失くすまで呑むんでしょ?だったら、皆に幸せを配るサンタになったら?」
「ううぅ。なんでそこまでわかるの?」
「あたりまえよ。何年あんたの面倒みてきてると思ってんの?」

ムカつく奴。すべてを的確に見透かして、バカにしてくる。でもそのあと必ず、今のようにアドバイスをしてきてくれる。なぜだろうか、菜緒のこういうところがとてつもなく好きだ。
テーブルの上の二杯のコーヒー。そこにまだかすかに立つ湯気をなめながら、麻理はそう思った。


申し込み。完了。


12月24日。朝9時。麻理の自宅に30個ほどのプレゼントと合鍵、マップと報告書などの書類データが入ったUSBメモリーが送られてきた。

そして、もうひとつ。
「なにこれ。」
麻理が手にしたのは、サンタのローブだった。しかし、100均で売っているようなとても簡易的なもの。長さは肩から肘までしかなく、後ろからはおり、リボンを前で結ぶという構造だ。
「まぁ、すこしチャッチイけど、かわいいじゃん。」

22時半。麻理は自宅から少し離れた埼玉県大宮区に向かった。
近所や地元ではない、かつ、住んでいる場所から車で30分圏内の町が担当地域として割り当てられる。顔の知れた人の家よりも、逆に面識の無い人の家のほうが入りやすいだろう。ましてや、今宵は聖夜だ。カップルや夫婦のいえなんて特に何が起こるかわからない。会社の気の利いたすばらしい配慮だ。

23時、業務開始。他人の家に勝手に入るというスリル感が麻理の幼心を躍らせる。
都内よりも落ち着いた賑わいを見せる歓楽街。そこを少し離れれば閑静な住宅街が広がる。一部の家にはクリスマスツリーとともに氷川神社の熊手が飾られている。
大宮の聖夜を、バイトサンタは駆ける。

そして、26時頃、最後の家。

「ふ~これで最後っと。」

長い棒状のピンクの包みを置き、吐き出すように麻理はつぶやいた。
その瞬間、右腕が何かに掴まれた。

「今年はラッキーだ。若い女のサンタが…来た...。」

「え!?なn...。」
麻理の口はその続きを発する前に塞がれた。冬の乾燥した気候によってガサついた男のだらしのない唇によって。男に舌先は、麻理の驚いてまだ動けない口元の隙をつき、どんどんと中に入り込んでゆく。舌と手で必死に抵抗する麻理であったが、その努力も虚しく散り、床に敷かれた布団に押し倒された。
「まさか、身体もセットでついてくるなんてな。」
男はプレゼントに手を伸ばし、ガサゴソと開けた。
「え?何を言って...」

麻理の潤んだ瞳に映ったのは電マだった。
「存分に喘いでみせろ」
男は麻理の仕事用の黒いズボンと中のショーツを剥ぎ、電マを押し当てた。
「ああっ…////♡」
今までノーマルなプレイしか経験してこなかった麻理。オモチャを使われるのも初めてだった。そんな純粋な体を壊すように、激しい振動が与えられた。
あまりの刺激の強さにのたうち回る麻理。
ぐしゃ。。
助けを求めるように、近くの無造作に捨て置かれたピンクの包装紙を握りしめた。

「いい反応だ。ほんとはこう襲われるのを期待してこのバイトをしたんだろ?」
「そんなわけ…ない…っじゃな…いですかぁああ…っ」
「口では嘘をつけても、体は素直だぞ。ほら、こんなにも濡れて…。」
男はそう言って、麻理の秘部の液を右手でぬぐい取り、それを麻理の顔にこすりつけた。外気で冷え、ほんのり赤く染まった顔は、淫猥なニスによりテカリを帯びた。もっとも、その頬の赤みは寒さだけが原因ではないのであるが。

「お前、本当は飼いならされたいドMだろ?普段の人間関係でも、すぐに相手に依存して、尽くして、そして捨てられる。まったく、可哀そうなオンナだ。」
麻理はそれを否めることはできなかった。自分でも薄々気づいてはいたのだ。菜緒になぜあんな態度をとられても怒らず、むしろそこを好きでいられるのか。元カレの事だって…。すべてこの理由で納得できる。
「俺が救ってやろう。」
「え。ど、どうやって?」
「本能に抗うな。思いのままに、依存したければ依存しろ。」
そう言って、男は麻理のシャツをめくり、顔を出した小さなポッチに電マをあてがった。
「尽くしたければ尽くせ。」
動き回る麻理の体に合わせて真っ赤なサンタのローブがひらひらと靡き、純白ともいうべき肌を一層際立たせる。
「そして、後悔をするな。自分を認めろ。」
男はそう強く言い放つと、電マの振動レベルを一気に上げた。
「あぁっ…イキそうぅっ////♡」

麻理が絶頂に至る寸前で、電源は落とされた。
「わかったな?」
麻理はまだ快感の余韻にもてあそばれ、その言葉に反応できずにいた。
男はそんな麻理の顎を掴み上げ、
「わかったな???」
再度、返事を促した。

「はっ…ハイ。。。」

乱れた栗色のミディアムヘア。
虚ろな目。
物欲しそうに開いた口。
白い無垢な身体。


「今日から、俺のモノだ。」



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