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ひとり旅日記モロッコへ5日目:世界遺産マラケシュの旧市街徒歩観光→一期一会で一緒にランチしたおじさん

2019年12/28マラケシュ②

朝起きて、顔を上に向けると左肩が痛む事に気付いた。なんだろう…。8時から朝食じゃなかったっけ?少し過ぎてから行ったけど、電気点いてないし…。寒い中待つくらいなら、遅い時間でも確実に朝食出て来る方が、そりゃ良いわ。でも、なんでそんなに手間がかかってる朝食じゃないのに、どうしてそんなに時間かかるんだろ?おととい出たオリーブ出ないし。イマイチなパンばっか。卵焼きは出てきたが、フルーツはない。凍えない様に予めストーブ点けとくとかできないのかね?中のパティオで朝食で良いじゃんね?そもそも屋上の隙間だらけのカーテンで仕切られた朝食会場ってのが無理があるよね…。って、大した朝食じゃないのに屋上にいた時間40分…。

化粧して9:30に宿出発。スークのメイン通りはこの時間だと観光客がほとんどいなくて、歩きやすいことこの上ない。世界遺産の一部、ベン・ユーセフ・マドラサは工事中で閉鎖されてた。ってか、この一帯の世界遺産は全てクローズ。ベン・ユーセフモスクも、クッバ・バアディンも。残念。仕方ない。予定になかったマラケシュ博物館に入場。パティオの天井から下げられた木の透し彫りのオブジェは見たことない大きさ。ここはかつて宮殿だったとの事。1956年にモロッコが独立した後はモロッコ初の女学校として使われたとの事。展示品を見るというより、建物を見学って感じだった。

次はムアッシン・モスクと泉。泉の方は柵に囲まれてた。16Cのものとの事。モスクはイスラム教徒ではないから入れなかった。外観のみ見学。この泉の並びにトラックが停まってる。材木積んでる。もしや!やっぱりハマム用の薪だった。でも、ハマムはどこだろ?薪を運んでるおじさんが「このまま奥だよ」と教えてくれた。途中にスチームを焚く釜らしき所があって、薪はそこに積まれてた。細い道を抜けて左側に女性用ハマム。1562年創業だって!世界遺産の一部の隣。そんなに長い歴史があるなら、ここもある意味世界遺産の一部みたいなもの。中に入ると、エーゴ分かる女性が料金説明してくれた。明日予約したいと伝えると、何時?と聞かれ、17時〜にしてもらった。30日から砂漠ツアーだし、今年の垢を落としてもらって、マッサージも受けてツアーに備えよう。計300DH(3600円)できっと観光客価格だが、歴史あるここにどうしても入ってみたい。持ち物はパンツだけで良いとの事。OK。ではまた明日。思いがけない場所を見つけてしまった。当初はローカルハマムに行こうと思ってたんだけど。まぁ、良い。

続いて、ダール・エル・バシャ博物館へ。今までマラケシュで見てきた建物の中で、バヒア宮殿並に立派だった。中にカフェがあってその隣でコーヒー豆を量り売りしてた。ハマムの展示も今まで見てきた中で一番美しくて大きかった。豪華なタイル貼り。マラケシュを愛したイブ・サンローランの1976年秋冬コレクションは色褪せることのない、紫のシルクベルベットで民族衣装的なデザインだった。美しい。ここまでで13時。

腹減った〜。博物館出て、休憩+昼食。今日行きたかった所はもう行っちゃったし。じゃ、新市街まで行って、肉を目指そうと思った。

博物館出ると、かなりの数の警備の人たち。後で知ったが、ダール・エル・バシャ博物館は国王がマラケシュ滞在時に使われる現役の王宮で、一部を解放して博物館にしてるらしい。旧市街の城壁の門にたどり着くまで、市場通り的な道だった。肉の塊、生きた鶏、野菜が売ってた。鶏はその場でさばくらしく、カゴにビッシリ詰め込まれてた鶏がその瞬間までスタンバイしてた。かなりディープな通りだった。

城壁を出ると、かなりの日差し。横断歩道渡った先の公園で脱げるものは脱いだ。進んでいくと、屋内型市場があったからここものぞいてみた。印象的だったのは、馬肉専門店が何軒かあったこと。あぁ。馬刺し食いてェ〜。午後だから閉まってる店が多かった。

このまま進んで進んでやっと着いた新市街のお目当のレストラン。噂に聞いた通り混んでた。ランチタイム外したのに。空いてる席に通されて、注文。安い…。250gの焼き牛肉とポテトで50DH。注文後、ぼーっとしてると、ひとりのおじさんがエーゴで「ここ良いかな?」と聞いてきたから、「どうぞどうぞ」と言いながら、「どちらから来たんですか?」と尋ねると、「モロッコ人なんだけど、30年前にカナダに移住してね…」「そうですか、私は日本人です。水曜日にマラケシュに到着して、モロッコご飯をレストランで食べるのが今回初めてなんです…」と言うと、料理が出て来る前にテーブルに並べられた物を説明してくれた。

「トマトを刻んだものと、スパイシーソースにオリーブが乗った皿はパンでも肉でもなんでもつけるんだよ」との事。へぇ。これらは無料との事。少し経ったら出てきた!肉。12月はTK機内食のハンバーグに続いて2回目の肉だと思う(苦笑)。評判通りウマイ。シンプルな味付け。ソースアリでもナシでもどっちでもOK。昨日の海鮮に続いて目を閉じた。フライドポテトにこのピリ辛ソース、おいしい。

おじさんは航空宇宙関係の本を書いてると話してた。マラケシュに来たのは、カナダのモントリオールの冬の寒さを避ける為で、2/8までアパート借りて、執筆作業兼休暇との事。「ご家族と一緒にマラケシュに来たんですか?」と訪ねた事から、おじさんの悲惨な話が始まった…。

「今年の4月に再婚して9月に離婚したんだ」「え?どういうことですか??」おじさんはきっと誰にでも彼にでも話す事で、酷い仕打ちをしてきた再婚相手から受けた心の傷を癒してるのではないかと察した。再婚相手もバツイチで子持ち。モロッコでその条件だと再婚はあり得ないらしい。文化的に。でも、おじさんは生まれ故郷のモロッコよりもカナダで過ごした時間が長かったから、バツイチで子持ちというのは気にしなかったらしい。

友人の紹介で、美人で聡明という彼女にイチコロだったんだろうな…おじさん。で、いざ結婚すると、態度は急変。「ひと月一緒に住んで、この女、俺に相応しくない。金目当てでカナダに移住して、16歳の息子の教育の為に、俺を利用しようとしたと気付いたんだ」更に、朝帰りで、違う男の元に通ってたことも判明したとの事。話が海外ドラマのあらすじっぽい…。

自分は食べながら聞いてあげてたら、おじさんは一気に話してしまってた。こんなネタで申し訳ないと思ったのか、「昼食はおごれないけど、お茶をご馳走したい」と申し出てくれた。自分はこの後予定もないし、宿に戻るのも早いから、その提案に乗った。

モントリオールはまだ行った事がないけど、冬は-30度だって。マラケシュのこの空の青さは、この時期のモントリオールでは見られない色だって。モントリオールは湖に囲まれてて、夏は湿気がある暑さらしい。おじさんはマラケシュの真夏は45-48度でも湿気がないから外歩けると言ってた。

おじさん何を思ったか、散々愚痴ってた再婚相手の従兄弟をこのカフェに呼ぼうと言い出して電話してしまった。1時間で来られるとの事で、自分はヒマだから良いけど、予定あったらキツかったかもね。ミントティーを注文。ミントティーって、ミントの葉っぱだけだと思ってたら、緑茶も入ってるとは知らなかった。砂糖を入れないとおいしくない飲み物。

元再婚相手の従兄弟の男性登場。従兄弟だけど、なんとなくおじさんがイチコロになった再婚相手の顔を想像できた。美人には間違いない。彼はリヤドを経営していて、年末年始は伊人で予約いっぱいとの事。「伊人とは何語でやり取りするんですか?」「英語だよ」「アイツらエーゴできるんですね。伊人はバカで、エーゴ話せません!って人達しか会ったことなくて」と言ったら、2人とも「うん。確かに伊人はバカなヤツらだ」と盛り上がった。

彼の宿は、年間通して蘭人が多く来るらしく、蘭人はダブルブッキングになってしまった時、部屋の変更を申し出ても受け入れてくれるのに、伊人は融通効かないと嘆いてた。そりゃ、バカだからだろう。独人もなかなか厳しいらしい。日本人は来るのか聞いたら、あまり来ないとの事。彼は仕事の合間におじさんの要望でわざわざ来てくれたから、なんだか申し訳なかった。サンキュースイーツあげりゃ良かった…。

自分が元再婚相手の従兄弟に会うとかよくわからない状況に恐縮してたら、おじさんが「明日はどうなるかわからないから、縁は作っておいた方が良い」と言ってくれた。人種の話になって、おじさんが「白人はエラそうにしてるが、元は黒人から枝分かれしたという過程を忘れてるのがいけない。私は肌の色の違いはvariety (多様性)だと思う様になった。こう思える様になったのは、色んな人種がいるカナダに移住したからなんだけどね」そうだ。カナダに住んでる人は、抜群に優しい人々だった事を改めて思い出した。初めてカナダに行った時にあらゆる肌の色の人に助けてもらった事は20年経ってもまだ覚えてるもん。

深い話をしてくれたおじさんは、またまた映画のワンシーンみたいに相席になった事から始まった。旅って、どうしてこんなにも素敵な出会いを降らせてくれるのだろう。おじさん、できれば故郷モロッコに戻りたいとの事だけど(同じ地球の12月にこの暖かさが良いらしい。ちなみにお茶してた時は26度と教えてくれた)、おじさんの専門の航空宇宙の分野の仕事はモロッコにないらしい。大学の教授にはなれるかも知れないけど、それはやりたい事ではないとの事。当面、モントリオールが冬の間だけモロッコに来るという生活を送るそう。

気付くと、17時近い。おじさんに「そろそろ宿に戻ります」と伝え、バス停まで送ってもらった。途中のATMで立ち止まって「カード差込口に緩みがないかどうか確かめて使いなさい」と教えてくれた。え?朝、たびレジ登録しといたら、メールにモロッコでにATMスキミング被害についての配信があったから、ビックリしてこの事話すと、おじさんは銀行からアラートが発信されたとの事で教えてくれた。たびレジ、地元情報の配信早いじゃん。でも、対策までは書いてなかった。惜しい。

バス停に着いて、おじさんにサンキュースイーツの飴をたんまりあげて、サヨナラ。肉で身体が満たされ、おじさんと出会った事で心が満たされた。


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