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夜行バスと君と就活

皆さんお久しぶりです。

お元気ですか。

私は元気にやっています。

なぜここまで前の投稿から間隔が空いたかと言うと

実はわたくし就職活動に勤しんでおりました。

そしてありがたいことに目指していた業界、企業から内定をいただくことができました。

就活を終えて早い段階からまたnoteでなにか書き始めようかなと思っていたのですが

就活中禁じられていたあれやこれができる幸せを噛みしめていたら

気が付けばもう人生最後の夏休みも終盤を迎えようとしています。

「人生の分岐点」「茶番劇」

なんて様々な表現で揶揄されることの多い就職活動ですが

私も大学4年目を迎え流されるままに就活を経験してみて、感じたことや言いたいことはまあ山ほどあります。

たしかにもう2度とやりたくないとは思うけれども

つらさや苦しさ、そう言ったネガティブな感情だけが残るものでもありませんでした。

ここではそんな就活期間の中で最も印象的なエピソードというか思い出というか…

来年就活を控えているあなたにとって役立つ!

なんて大それたことは書けないので

今率直に頭に浮かぶ言葉たちをここに記します。      



祇園四条23:45発 → ○○駅7:15分着

○○バスセンター22:20発 → 京都駅6:15分着

面接の期日が前日まで迫ると、きまって某バス会社から予約内容確認メールが届く。

これを見るたび私は、

緊張、不安、焦り

とにかく憂鬱な気分になった。

私は就活をしに、
明日もまた夜行バスに乗る。

関西の大学に通う私は、場所を絞らず地方の企業に多くエントリーしたため、採用試験の案内がくるたびに交通手段で夜行バスを利用した。

就活期間中だけで多分15回ほどは乗った。

高校時代から交際を続ける恋人と3年前から遠距離恋愛をしている事情で普段からよく夜行バスは利用する。

小さい頃は、地元から姉と二人で夜行バスに乗って大阪のおばさんの家に遊びに行ったこともある。

いわば経験豊富。

乗客としてのマナーや心構え、

いかに隣の人に迷惑をかけずパーキングエリアでトイレに行くかなど

夜行バスのイロハは知り尽くしている。

車内で熟睡できるタイプではないが、
眠れないなら眠れないなりに揺れ続ける暗闇の一夜を耐え過ごす術も熟知しているつもりだ。

ただ、恋人に会いに行くときと

面接前夜やお祈りメールをもらった後の帰路では

乗る前のモチベーションや乗ってから翌朝を迎えるまでの体感時間はまるで違う。

眠れない夜、ストレスや睡眠不足からくる降車後の疲れ

京都から地方へ何往復もした夜行バスはお財布には優しかったが心にはかなりシビアだった。

交通費が支給される最終面接にたどり着くまでは

夜行バスに乗る→
                翌朝着いて面接を受ける
                                →夜行バスに乗って帰る

約2か月間このプロセスを繰り返した。

面接の後、考えごとや反省はバスの中でするのがお決まりだった。

悩める就活と繰り返すミッドナイトドライブ。

なかでもひときわ印象深く、一生忘れることはないであろう夜の帰路がある。



その会社は、恋人の通う大学がある県に本社を置くその界隈では名の知れた会社だった。

書類選考とオンラインによる一次面接を通過し、2次試験は対面かつ早朝から行われるため、前日にバスで移動して恋人の家に泊めてもらうことに。

当日を迎え、予定通り2次試験を終えた。

この日は恋人の家でもう1泊し、
明日また別の企業の面接を受けてから関西に戻る予定だった。

しかし、

思いのほか結果の通達が早かったこと
手ごたえとは裏腹に2次を通過できたこと
次の試験までの間隔が短かったこと

これら3つの理由から恋人と相談を重ねた結果、申し訳なくも恋人のやさしさに甘え
急遽この会社の選考が続く間は、
関西には戻らずこのまま住まわせてもらうことになった。
(単位はほとんど取得しており平日も授業はほぼないため、結果的に約2週間の長期滞在に)

この選択をしたことにより

金銭的にも体力的にもかなり消耗を抑えられた。

またそれでだけなく、

連日の移動の疲れからか二次試験おわりに熱を出した私の看病までさせてしまった。

教員採用試験を夏に控える恋人にも自分のやるべきことがたくさんあるはずなのに、本当に申し訳なかった。

そして何よりも、

一緒に試験の通過通知を見て、我がことのように喜んでくれた恋人の存在があの時どれほど私の背中を押してくれたか。

この時ばかりは、恋人の寛大すぎる心に頭が上がらなかった。

感謝してもしきれない。


今回挑んだのは毎年300人前後がエントリーして最終的に2~5名ほどしか内定を出さないような狭き門で、最初から通過する自信なんてさらさらなかった。

言ってしまえば記念受験でこれからの練習になれば良いなと、そんな気持ちで受験した。

それでも就職活動とは実に面白いもので1次、2次試験がなんと通過。

「宿泊延長」が決定し、恋人にも背中を押され気合を入れて臨んだ3次試験、

なんとなんとまた通過してしまった。

さすがに驚いた。

昔から知っているあの会社に自分が入れるかもしれない。恋人と勝利を祝して手を重ねた。

「学歴なんて関係ない。うゑだ が輝いているんだよ!」

恋人が真っすぐな目でそう言ってくれたときには、もう自分がこの会社で働く未来を想像していた。

まるでずっと前からここに入社することを夢見ていたかのように。

最後の壁、最終試験に向けてこれまで以上に意気込んだ。当日までの数日間、恋人のサポートを受けながらやれるだけの準備はした。

そして自分ならできると自信を持って当日を迎えた。

恋人宅での居候も今日で終わり。

試験が終わる夕方、夜行バスに乗るまで時間があるため駅前で待ち合わせをし、夕食を共にする約束をしてから恋人の家を出た。



だからこそ、

自分だけでなく恋人を巻き込んで

この会社からの内定に夢を膨らませたからこそ

待ち合わせの30分前

電話で落選を知ったときのショックは大きかった。

絶望だった。

こんなことなら変に期待させるんじゃなかった。
落ちる可能性だってはじめからあったのに。

待ち合わせなんてするんじゃなかった。

ここ数日間、

数え切れないほどの勇気と愛を私に与えてくれたのに恋人に

どんな顔で、どんな言葉で「落ちたこと」を伝えたらいいのかわからなかった。

会いたくない。

恋人に出会ってから初めてそんな風に思った。

直接伝えるべきか悩んだけれど、私は耐えきれず、待ち合わせの場所へと向かう路面電車の中でLINEを送った。

「だめだった」


するとすぐに既読がつき

「私も今から駅に向かうね」


同時に 

「よしよし」とお人形の頭を撫でるスタンプが送られた。

君らしいと思った。


改札を抜けると恋人は立っていた。

どうしていいかわからずとりあえず笑っておいた。

でも目が合って声を聞いたときにはもうなんか泣きそうだった

恋人は微笑みながら言った。

「何食べに行こうか?」





夕食を終え、少し歩き、カフェでお茶をしたら

あっという間に出発の時刻を迎えた。

ここからまた数か月のお別れだ。

別れ際にグータッチを交わしバスに乗り込む。

バスが動き出して乗務員のアナウンスが終わると、一度目をつむってみた。

眠れないのは初めからわかっていた。

別にもう泣いたりもしない。

この夜、バスに揺られながら

いろんなことを考えた。

疲れた。

しんどい。

まだ始まったばかりじゃないか。

切り替えていこう、打たれ強さには自信がある。

でもいざこう落選を突きつけられると結構ショックを受けるもんだな。

最終までいけちゃったからこそ、必要以上に期待しちゃったのかな。

ここで働くキラキラした自分を
内定をもらって一緒に喜ぶ君を
想像したからこそ

結構くる。

あれ、でもいつからこの会社ってこんなにいきたいと思うようになったんだろう。  

落ちて泣くほどに行きたい会社だったっけ。

ああそうか、

悔しいな。

ダサいな。

別に落ちたことがダサいとは思わない。

勝手に舞い上がっていたことが

目先の内定や入社後の待遇がちらついて、当初からの目標や自己実現をすっ飛ばして、自分は本心からそこへ行きたいと思い込んでいたことが。

どうりで少し圧迫されただけで志望理由が噛み噛みになるわけだ。

「うちとB社ならどっちにいきたい?」

そう問われても即答できないはずだ。

認めよう
俺は落ちるべくして落ちたんだ。

バスを降りたら

俺は何を叶えたいのか
どんな大人になりたいのか
誰と、どこで生きていきたいのか

もう一度よく考えよう。


ていうか

最終の役員面接まで行けば、大体の人は受かるんじゃなかったのか?

誰や、最後は意志の確認だけとか言うたやつ。

偉そうなおっさん、端から端までキレキレやったわ。

ああもう、長いなあ就活。



こんなところだろう。

あの日の日記をもとに、あのとき考えたことを思い出しながら書き出してみた。

やはりこう見るとかなり沈んでいたし、
今までで1番長い夜に感じた。

ただ、今振り返ってみると思いのほか冷静だったように思う。

翌日も京都で降りたとき意外なほどに心は軽かった。

「乗る前」→「乗っている最中」→「降りた後」では心境が変わっていた。

落ちて悲しい気持ちはさほど残っていなくて、

すっきりした気分だった。

これからやるべきことが見えた気がした。

この後私の就活は、不思議と軌道に乗って次々と選考を通過していった。

最終的には目指していた業界、なかでもその会社が持つ性格に惹かれた何社からか内定をいただくことができた。


たった一夜で挫折から立ち直り、のちに内定獲得までたどり着くことができた要因の一つに

夜行バスでの孤独があったかもしれない。

いつもなら音楽を聞いたりラジオを聞いたり、
どうにかして現実からの逃避を試みるところをあの日はあえてそれをせず、

ただただ目を閉じて考えていた。

4列シートの一番端で、眠れず、今の不甲斐ない自分と向き合わざるを得なかったあの時間は

知らぬ間に私の揺れ動く気持ちを整理する時間になっていたのだ。

夜行バスに繰り返し乗ることで自然にルーティンと化した“自分と向き合う時間”が功を奏した。

そしてもう一つ。

誰が何と言おうと恋人の存在が大きかった。

落ちた直後、多分私はわかりやすく落ち込んで
ため息も吐いたし、言い訳めいたことも言ったと思う。

それでも恋人は責めることなく「うんうん」と私の話を聞いてくれた。

恋人の向かい側に座って、

泣きながら“エッグバーグリッシュ”を食べた悲しさ、悔しさ、恥ずかしさ、申し訳なさ…

あらゆる感情で心が弾け飛びそうだった。

そう、恋人が私の手を引いて入ったのは

「びっくりドンキー」だった。

(ついさっき落ちた人間が行く店か)


そんな恋人らしいぶっ飛んだ店のチョイスも

一緒に泣きながらハンバーグを食べてくれた感受性の豊かさにも救われた。

目を真っ赤にしながら

「頑張ってきたもんね。大丈夫。もっと強くなれるよ」

そう言ってくれた。



就活はやっぱりそれなりにきつかった。

体力的にも精神的にも。

終わりの見えない長いトンネルのように思えたし

優秀な誰かと自分を比べては、劣等感にさいなまれて苦しかった。

それでも

わが身を否定することは日々私を認めてくれる人たちを否定するのと同じなのではないか

嬉しいときも悲しいときもそばにいてくれる恋人を見て、そんな風に思った。

自分を無理に信じなくていい。

でも恋人をはじめ、私のこと信じてくれる家族や友人、大学の恩師を裏切らないために自分に劣等感を抱くのを辞めた。

就活を通じて自分が進むべき道、なりたい未来の自分が見えた気がした。さらに、普段から他者からの言葉や支えがいかに自分の原動力になっているかを再確認できた。


そして何度も乗った夜行バス。

真っ暗闇のなかガンガンに揺れながら疲労と孤独に闘うのは辛かった。

お尻は痛いし、結果が振るわなかったときはヒステリックにもなった。

となりに座ったふくよかなおじさまの美しいいびきを子守歌に一睡もできなかったこと

無理やり眠気を引き寄せるために缶ビールを引っかけてバスに乗り込んだこと

話し相手が欲しくて霜降り明星のANNにメールを送ったこと

夜行バスと闘った就活は辛くもあったけれど

なぜか忘れられない夜でもあって、一人でいろんなことを考える時間だった。

新幹線でも飛行機でもない、

「夜行バス」で過ごした孤独の夜が

私を少しだけ強くした。




さて、これで私の就活体験記は結びを迎えるのですが

就活の話をしたいのか、夜行バスの話をしたいのか、なんだかもうよくわからなくなってきました。

ただ

この数か月の間で夜行バスはそれぐらい私にとって特別な乗り物になりました。

真っ暗の揺れる車内で好きな洋楽やラジオを聞いたり、物思いにふけってみたり。

愛する人に思いを馳せるのもいいでしょう。

揺れる車内は眠りにつきにくく、疲れはするけれども、いつもとは違った感情に出会える空間なのかなと思います。

それにとにかくお財布にやさしい夜行バスは学生の味方。

往復で利用すれば、新幹線の片道以下の値段で抑えられちゃうのだから。

こんなにも破格で金なし陰キャ大学生を安全に長距離輸送してくれる全国のバス運転手の皆様には頭があがりません。

いつも本当にありがとうございます。

休憩時間のお煙草はほどほどに。
(やかましいわ)


最後に

これから就活を頑張る君

遠くにいる大切な人に会いに行くあなた

交通手段に夜行バスはいかがでしょうか。



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