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暗黒労働おとぎ話 『金の靴 ⚪︎の靴』


むかしあるところに、となりの国から安く靴を仕入れて売りさばく、靴の商人がおりました。

ある日、仕入れたブーツを背中にたくさん積んだロバと、商人が池のほとりを歩いていると、突然ロバがけいれんを起こして倒れました。そして、ロバがかついでいた仕入れたばかりのブーツの山は、池の中にドボドボ落ちてしまいました。

途方にくれた 商人は「チェッ、使えないやつだな!」とロバに蹴りをいれました。

すると、「おやめなさい!動物愛護法違反ですよ!」どこからともなく声がしました。男がおどろいてあたりを見回すと、池の中から、美しい女神が現れました。


「旅人よ。あなたの落としたのは、この金のブーツですか?それとも、このペラペラした素材の、どギツい色味の粗悪なムートンブーツですか?」

女神が問いかけると、商人は「当社では黄金の価値に匹敵する、高品質の商品のみ取り揃えております」と高らかに宣言しました。

「もう一度聞きます。旅人よ。あなたの落としたのは、この金のブーツですか?それとも、このペラペラした素材の、いかにも安っぽい、すぐに壊れそうなムートンブーツですか?」

商人は、先ほどと同じことを答えました。お金のためにも、自分のためにも、そう信じて疑いません。

長年自分自身をも騙す生き方しかしていなかったので、真実は、すっかり行方不明になってしまいました。

そうこうしているうちにムートンブーツを持っている女神の腕に有害染料が流れ落ちてきて、かぶれ、湿疹、かゆみの症状が出てきました。

「これはおかしい!」と思った女神は、大急ぎで池に落ちたブーツをかき集め、商人に返してやりました。

けいれんのおさまったロバが目を覚ましたので、商人は商品を乾かしながら市場に向かって、再び歩きだしました。

池にブーツを落とした後は、それまでずっと続いていた謎の頭痛も、めまいも無くなったので、商人は喜びました。

ロバのけいれんも、すっかり治まりました。


一方その頃、ブーツを大量に落とされた池の女神は、謎のけんたい感と頭痛、吐き気、めまい、皮膚のかぶれ、湿疹に見舞われ、大急ぎで健康の神 アスクレピオスの助けを呼ぶことになりましたとさ。


おしまい


【おとぎ話の解説】


私は以前、靴の専門店の通販倉庫で商品の発送をしていました。 

季節は秋。熱中症などが起こる環境ではありません。

倉庫の隅のムートンブーツの在庫の山の近くは、ベンゼンのようなキツい臭いが漂っていて、いかにも危ない感じでした。 

作業開始後5分で偏頭痛が起き、我慢して作業を続けていましたが、その後20分もすると、今度は目眩が連続して起きてきました。  

そのことを周囲の人に話すと、やはり一緒に作業をしている女性も頭痛を訴えました。 

そのムートンブーツの山から距離を置いたところで作業をするようにしたら、1時間もしないうちに、すっかり頭痛が治まりました。

翌日、そのブーツの在庫の山の横で仕事をしたら、また5分も経たないうちに頭痛がしたので、出来る限り、そこから距離を取りました。 

単発の仕事だったので、その後はその現場に行くことはありませんでした。 

その1年後に、同じ現場で働いたという人にムートンブーツの在庫の山と頭痛の話をしたところ、その人も、突然頭痛に見舞われたそうです。 


それから間もなくして、中国製の服に有害物質がついていたために上半身が真っ赤に被れてしまったという全国ニュースが流れました。

そして、今日も再び・・・。


【回避策】


よくわからない業者が販売しているMade in China商品の「激安!」等のコピーの誘惑にかられたら、一息おいてから、「安かろう 悪かろう 死にやすかろう 体に悪かろう」と唱えて、買いたい衝動を消し去りましょう。



※本記事は過去作の移植のため、ですます調文体になりました。

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おおかみ のみね@521社で働いた運期研究家
不運な人を助けるための活動をしています。フィールドワークで現地を訪ね、取材して記事にします。クオリティの高い記事を提供出来るように心がけています。