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暗黒労働おとぎ話 『おいてけ』

むかし 東京と北関東の境に大手アパレルメーカーの物流倉庫がありました。

朝会で「場内にはガラケー・スマホ持ち込み禁止」「おいてけ。ロッカーにおいてけ」と注意しているので、普段は誰もガラケー・スマホを持ちこむことはしませんでした。



ある日の、昼休憩後。

気の弱そうな男が、うっかりガラケーを持ち込んでしまいました。

「おいてけ~、おいてけ~」と世にも恐ろしい声が、倉庫に響き渡りました。

男はおどおどして「は、はい!」とロッカーに戻ろうとしましたが、現場リーダーの手がヌーっと伸びてきて、男のガラケーをとりあげてしまいました。

するとその手は2つ折りのガラケーを、折りたたむ方向とは反対の方向に力づくで2つ折りにして、バキッと壊してしまいました。


気の弱そうな男は壊れたガラケーを見て、長い間、ボーッとしてしまいました。


それを見た人達は、おそろしくなって、絶対にガラケー・スマホを場内に持ち込まいように肝に銘じました。




ある日の昼休憩後。

娘が、うっかりスマホを作業場に持ち込んでしまいました。

ふたたび、「おいてけ~、おいてけ~」と世にも恐ろしい声がわいて出ました。

娘が大急ぎでロッカーに行こうとすると、現場リーダーの手がヌーっと伸びてきましたが、相手がうら若き乙女だとわかると、その手はおとなしくスッとひっこんでしまいました。

娘は無事、スマホをロッカーに置いてきました。



その様子を見て、気がゆるんだのでしょうか。



次の日の昼休憩後。

少年がうっかりスマホを作業場に持ち込んでしまいました。

「おいてけ~、おいてけ~」と、世にも恐ろしい声が、湧き上がってきました。

少年が大急ぎでロッカーに行こうとすると、現場リーダーの手がヌーっと伸びて、男のスマホをとりあげてしまいました。

そしてそのスマホを倉庫の4階の窓から、勢いよく外に放り投げてしまったのです!
少年はまっ青になってスマホを取りにいきました。

すると駐車場で、こなごなに画面が割れたスマホが見つかりました。

少年は怒って、そのまま家に帰ってしまい、二度と来ることはありませんでした。




この様子を見て「それはやりすぎだ」と現場リーダーに物申す人は、一人もおりませんでしたとさ。

おしまい



※このお話も、実話を元にしています。
昔といっても、ほんの十年前のお話。

あの頃、今のようにSNSが発達していたならば、社員にガラケーやスマホを壊されたなんて話が世に出たら、大変なことになっていたでしょう。

私なら、器物損壊ということで警察に相談の上、この会社のサプライチェーン統括に連絡。

間違えてスマホを持ち込んだとしても、昼礼で確かめている機会があり、労働者側に過失があったとしても、チェックの段階での「破壊」は、やり過ぎでしょう。
(チェックしたのに隠して無断持ち込みはアウトですが)

会社宛で少額訴訟裁判起こし、スマホの端末代金は請求するかな。

経験上、刑事はハードルが高いです。
なので、民事で損害賠償請求のほうがスムーズかと思います。


対 会社の裁判は、確か法務局で会社の登記簿謄本を取得する必要があったと思います。(東京なら九段下)

手数料は、700円くらいかかった記憶があります。


少額訴訟裁判は、弁護士なしでも出来ます。
費用も、それほど高くありません。

※うろ覚えなので、詳しくは裁判所の窓口でお尋ねください。

本を読んでおくといいです。


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おおかみ のみね@521社で働いた運期研究家
不運な人を助けるための活動をしています。フィールドワークで現地を訪ね、取材して記事にします。クオリティの高い記事を提供出来るように心がけています。