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家庭菜園の楽しみ方。

毎年我が家の庭から綺麗な大型の蝶々が巣立っていく。

今年も飛んでいくんだね…

と、嬉しいようなさみしいような…複雑な心境でヒラヒラと優雅に舞っていくその姿を見送る。
そんな我々の足下には、なんともみすぼらしい姿のパセリ。

我が家のジンクス(?)
『パセリを頑張って育てても、我々は食べる事ができない。』

*…*…*

「あると便利だよねぇ」

と、ある日母が買ってきた苗はパセリだった。

パセリって美味しい。
天ぷらにしても、シーチキンとあえても、サラダにしても、何に使ってもとっても美味しい。

我が家にとってパセリは添え物ではなく、主役。

いつもいて欲しい。そんな存在。
そんな存在だけど、育てた事はなかった。

庭に出れば夢のパセリパラダイス…!
素敵…!!!

嬉しくなって早速植えた。
大きくおなりと声をかけつつ、毎日せっせと世話をした。

けれど何故だろう。
パセリは全く大きくならない。
それどころか、何故か日に日に葉が無くなっていく。

ある日、とうとう茎だけになってしまったパセリ。
慌てて肥料をあげようとしたその時、まるっと太った立派な青虫がヒョッコリ顔を出してきた。

人生で初めて、地響きする程の悲鳴をあげた。

私の声に驚き飛び出してきた母。
狼狽える青虫。

数秒沈黙が続いた後、母が発した言葉は

「え…かわいい…………」

であった。

その年、我々は青虫のためにパセリを育てた。
立派な蝶々におなりと声をかけつつ、せっせと世話をした。(パセリの。)

月日は流れ、綺麗なアゲハチョウが巣立っていった。

優雅に舞っていくその姿を見送りながら

「パセリ、食べれなかったねぇ………」

「そうだねぇ………………」

と言葉を交わしたのは、15年ほど前の出来事である。

*…*…*

それから毎年、我が家の庭にはアゲハチョウが飛来する。

数年前からパセリだけではなく、アシタバ担当の青虫も現れるようになった。
パセリとアシタバ、それぞれに1匹ずつ上手に住み分けている。不思議。

とにかく、彼らは成長期なのでよく食べる。
我々ができる事は、お腹が減らないようにしてあげる事。

なにかが違うような気がする…

そんな事はとうの昔に我々も気がついているけれど。

「次はさ、パセリ、家の中で人間用のやつも育てようか…」

「そうだねぇ………」

と言葉を交わしたのは、少し前の出来事。

夢のパセリパラダイス。

叶う時は…………多分、もうすぐ。

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