整形サイボーグの投資術 もっと美しく美しく美しく・・・!
最初はちょっとした化粧のつもりだった。
私は顔にメスを入れた。
いわゆる美容整形というやつだ。
しかし、それが癖になった。
それまで鏡を見るのが苦痛だった。しかし、自分の顔に自信を持てるようになってからは、鏡を見るのが好きになった。
他人の目を気にしていたのが、気にならなくなった。
それどころか、他人の目が心地よく感じることができた。
男性からの欲望にまみれた視線もいいし、女性からの嫉妬に駆られた視線も気持ちいい。
私は顔を作り変えることにした。
そのレベルになるほど、美しさに取り憑かれていた。
大金がかかった。
でも、それはすぐに回収できる。
美貌は資産だ。
それがあればどうとでもなる。
そしてその資産は投資すればするほどに増えていく。それなのに多くの人はそれを行わない。
生まれの美醜を身分と同じようにみなし、ただ受け入れる。
いまは昔とは違う。
貧乏でも這い上がれるように、醜く生まれても、美しくなることができる。
今の自分を変えることを恐れていては、なにも変わらない。
私は変わる。
この世で最も美しい顔になる。
そうすれば、もっと、もっと、人生を有意義に生きられる。
そう、思っていた。
たしかに私は美しくなった。
脚光を浴び、褒められ、嫉妬されるほどに美しくなった。
しかし、それは一時だった。
美醜とは変わる。
美しさは一定ではない。ただの流行り。
流行りは、廃れる。
絶世の美女と言われた私の顔も、1ヶ月、1年…日々がすぎるごとに世間の美しさの基準とはズレていった。
ああーーいまの美しさは”あれ”なのか。
脚光を浴びる人の顔を、おそらく醜悪な表情で私は見つめる。
あの顔になろう。
あの顔になれば、また私は最も美しくなれる。
大枚を果たして私は投資する。
マイナスを取り返すためには借金をしてでも、取り返さないといけない。
大丈夫。一時的な含み損だ。
勝てる。
私は最も美しくなって、得を得る。
しかしその美しさも一瞬ではないかと、心によぎった。
でも、私は無視した。
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