魂のカウントダウン/命の上限数と輪廻転生システム
人類の人口は増加を続け、肥大は無限に続くと思われた。
だが、全人口が100億人を超えた段階で、人類の増加は止まった。
正確には10,001,131,561人で、自然増加が停止した。
初めは、その仕組みに気づかなかった。
出生率が下がった。しかし、まったく0になったわけではなかった。
しかし、技術進歩によって飛躍的に上がっていた人工授精等の成功率が極端に下がり、ついにはほぼゼロとなる事態に人々は困惑した。
科学的な結論が出ない中、一つの悲劇がきっかけとなった
ある事故による大量の死者が出た時、出生率が跳ね上がったのだ。
そこで世界規模の調査が行われた結果、人口の上限やおよそ100億人ということがわかった。
上限値に達している間、生命が誕生してくることはない。
達してるうちは人間は生まれてこない。
しかし、誰かが死に、「空き」ができるとその分が補充されるように誕生する。
まったくのゼロにならなかったのは自然死等が世界のどこかで発生していたからだった。
死者数は科学技術の発展で、極端に減り、寿命がのび、限りなく長く生きることが可能になった。
そんな中で人々は困惑しながらも一つの説を信じ出した。
人類の数には上限がある。
つまり人類の数は100億程度ーー人の魂の数は、10,001,131,561個しかないのだ。
ゆえにその数以上に人は創造されないのだ、と。
今日も、1人の男が死ぬ。
極限まで薄く引き伸ばされた寿命。絶え絶えの天命がついに尽きる。
死んだ後、どこに行くのか。
かつては科学により否定された問いが、いまは生々しい。
魂は存在する。
人類の上限値が物質以外の存在を間接的に立証したのだ。
魂はある。
しかし、それは輪廻するのだろうか?
もう一度、男はこの世に戻るのだろうか。
死後の世界はどうなっているのか。
その時、自我はどうなるのかーーそして、
堂々巡りの思考の果てーー男の意識は途絶えた。
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「ふぅ」
男は目を覚ました。
「今回の”人生”はここで終わりか」
そう言いながら頭を覆っていたディスプレイを外し、イスから身体を起こした。
近くの時計に目をやる。
体感時間は長かったが、実際の時間はそこまでかかっていない。
「もう一度、できるかな」
男は、同じ世界ーーゲームをやろうかと思ったが、すぐにはログインできなそうだった。
同時接続人数が上限値に達していたからだ。
「しかたない。別のゲームにするかーーガラッと違う世界もいいかな」
スワイプして、別のゲームを探す。
先程のゲームのトップサイトには 10,001,131,561人 という数字がチカチカとしていた。
その数だけ、人々は別の世界で別の人生を堪能しているのだった。