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わたし、なんとなく生きて、それとなくかしこくなって、しっかり老いてた。

子どもに教えられたことってさ、こっちが勝手にそう思ってんだよね。
たとえば自分の親から「あなたに教えられたのよ」なんて言われても、はーそうですかーって感じだし。知らんがなって思うし。
子どもに何かを教わったと思うのは、ちゃんとそのひとが他人の行動や言動から学びを得られるひとだってこと。だから、子どもに教えられたと思えるあなたすごいよ!って。むしろそんなあなたの素直なこころがすごいんだよ!って。
そんなことを思いながら書きはじめる。

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息子が生まれてから2000日以上、毎日、彼の写真を撮っている。
笑っているところ、泣いているところ、おしゃべりしているところ、踊っているところ、歌っているところ。日常のなんでもない彼の姿を、思いつくままに記録している。

そんな膨大な記録を、いずれゆっくり見返すなんて不可能だということもわかっているので、わたしはひと月に6枚だけ気に入った写真を選んで、プリントするようにしている。
なぜ6枚かと言うと、うちにあるアルバムの片ページに収納できるのが写真6枚だから。つまり、ひと月で1ページ。これなら月齢も簡単にカウントできるので、いつの出来事かがすぐにわかる。
そして、この程度の枚数なら、プリント作業も、それから改めて見直すことも苦にならずにできる。

写真選びはつい息子の表情や、あいらしさに重点を置きがちだけれど、「アルバム」にするということは、年数が経ってもさまざまなことが思い出されないと意味がないと思っているので、できるだけ背景が写り込んでいるものや、だれかといっしょにいるものを選ぶようにしている。
あそこに遊びに行ったときだね、とか、あのお店なくなっちゃったね、とか、あのひとに会ったときだね、とか。写真1枚から得られる情報が「息子」以外にもあるように、というのがこだわり。エピソードのわかる写真を選ぶようにしている。
そのほうが、息子とアルバムを見ているときにも会話になる。これはどこなの?、このひとはだれ?、失ってしまった記憶を手繰りよせるように、息子が質問をする。それに対して、わたしが何かを答える。
こうすれば「アルバム」は、わたしだけのものにならない。

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息子の「アルバム」はいま4冊目。
新たな写真を選ぶタイミングには必ずパラパラと、これまでの写真を見直す。
ひと月に一度の、ゆるやかなお楽しみ。わたしはこの時間がとても好きだ。

そして、ふと気づく。

めっちゃ老けたな…わたし。

たった5年、たった5年しか経っていないのに。
生まれたばかりの息子を抱いているわたしや、ハイハイをはじめたばかりの息子を追いかけるわたし。ヨチヨチ歩きの息子と手をつないで笑っているわたし。

めっちゃ若い。

まったく気づいていなかったというと嘘になるけれど、こうして写真で見ると、息子がこの5年間で立派に成長し続けているのに対して、わたしはしっかりと年をとっていることがよくわかる。

とりこぼしてねーな、しっかり刻んでんな、年輪をよう。

自然の摂理だから!万物は流転するから!これが絶対正しいあり方なんだけど!
5年前のわたし、ずいぶん肌にハリがあるな!髪にもツヤがあるな!
こんなに変わるものなのか!ひとはこんなにも変われるものなのか!
息子の時間だけじゃねえ、わたしの時間も二度と取り戻せないやつだった!!

年を重ねること自体には抵抗なんてないし、わたしは「ド派手な格好でいつもはしゃいでいるばーさん」になることを目標に毎日を生きているので、自分が「老けた」ことそのものはどうでもいいんだけど。

何て言うか。
人間って、5年生きたら、5年分老いるっていうのを「可視化」して突きつけられたことがショックで。
その間にわたし、どれだけのことができるようになっただろうとか、どれだけのことを知って、考えて、改めて、やさしくなって、強くなれただろうって。そう思ったら、わりとやべーぞっていう。だいぶ刻一刻だぞっていう。

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息子の写真を毎日撮っていなかったら、せっせとアルバムを作っていなかったら、それを見直すこともなかったら、自分が「老いる」ということにちゃんと気づかなかったと思う。

なんとなく生きて、それとなくかしこくなって、しっかり老いてた。

現実、やべー。

でももうね、ちゃんとわかったから。
生きてれば、生きた分だけ老いる。何をしててもしなくても。着々とばーさんになる。

これ、わたしの「子どもに教えられたこと」。

冒頭で書いたよね?『子どもに教えられたと思えるあなたすごいよ!って。むしろそんなあなたの素直なこころがすごいんだよ!って』。

わたし、すごい。ちゃんと教わった。学んだ。
ばーさんになる前にそれに気づいた。おばさんの間に気づけた。すごい。

息子が成長した5年分、わたしもちゃんと生きてたんだなあって。
ほんとにほんとに、当たり前のことなんだけど。自覚した以上は、もうすこし、しっかりと、楽しいばーさんになることを目ざしていきたいなと思った。

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子どもに教えられたこと

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