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BUMP OF CHICKENの「SONGS」を見た

わたしがここまで音楽に、ロックバンドにハマるきっかけをくれたのは、間違いなくBUMP OF CHICKENだ。
中学生の頃からかれこれ10年ちょっと聞いている。

落ち葉で道が埋め尽くされる季節は「Title of Mine」を聞いて登校した。
試合の朝に絶対聞くのは「バトルクライ」だった。
「ギルド」を聞いて泣いた夜もあった。
学生時代に使っていたピンクのiPodには、BUMPの歴代の曲が全部と、その時に流行ったアーティストの曲がちらほら入っているくらい。
当時はサブスクなんてものがなかったので、お小遣いで新譜を買ったり、親にTSUTAYAに連れて行ってもらってCDをレンタルしたりしてた。
流行りの曲なんて、友だちとの話題についていくために入れただけでほとんど聞かなかった。
自転車で片道40分の登下校のお供は、いつもBUMPだった。

もちろん、勉強するときも寝る時も携帯のアラームもBUMP。
口を開けばBUMPの話ばかり、制服がない高校だったので、夏はライブTシャツを着て登校していた。
まるで歩く広告塔。
そのくらいBUMPはわたしの生活になくてはならないものだった。

ライブも相当な数参加していて、一つひとつのライブにかけがえのない、忘れがたい思い出がある。
思い出すだけで心の中でキラキラと光る、大事な宝物。
遠征もたくさんしたし、SNSを通してBUMPが好きな友だちもできた。
今でも一緒にライブに行ったり旅行したりするくらい仲の良い友だちもできた。
BUMPがつないでくれた縁だ。

あんなに大きなバンドなのにファンクラブがないので、チケットの当落が出る日は毎回何も手につかないくらい緊張した。
「席なんてどこでもいい。とりあえず中に入れさえすればそれでいい。」
何回この言葉を唱えたか分からない。
彼らの地元千葉で行われた20周年の記念ライブは、人脈という人脈を使ってなんとかチケットを当てることが出来た。
最高のライブだった。
エンブレムを背に演奏する四人の姿が今でも鮮明に焼き付いている。

さて、先日BUMP OF CHICKENがNHKの音楽番組「SONGS」に出演した。
内容は四曲のパフォーマンスと、ボーカルギター藤原さんのトーク。
特に予定もなかったので、リアルタイムで見ることにした。

初めての都内のライブは下北沢だったらしく、思い出の地を巡る場面から番組がスタートした。
「ライブ直前に下北沢の古着屋でTシャツを買ってそれを衣装にしてた。タイトめに着るのが流行っていたけど、三曲目くらいで脇の下が破けたことがあった」と懐かしそうに話す藤原さんが、ライブでMCをする時の話し方に似ていて懐かしさを感じた。

当時と変わらないライブハウスを見て、テンションが少し上がってる姿が可愛らしかった。
「ライブが始まる前から(通路を通ると)お客さんの顔が見える。そこで初めて顔を合わせて『よろしくな』みたいな感じになるのが好きだった。なんかパワーをもらえるんですよ」と話していた。
この頃から、リスナーとの繋がりみたいなところに意識があったんだなぁ。

ライブハウスのステージに腰かけて、藤原さんが曲作りへの想いを語ってくれた。
「ライブで泣いてるお客さんの姿が見える時があって、なんかあったんだなと思った。全部話聞きてぇな、と思うけど無理じゃないですか。それをどうにも出来ずにステージを降りるしかないんですよ。でも、そういう風に曲を聞いてくれてる人がいるんだなって。一人で曲を録っている、このマイクの先にこの音を待っている人がいて、いつかその人に届くために、今自分の音楽が生まれようとしているんだなって。生まれた音楽がその人の元に行きたがっているんだなって意識が強くなっていきますね」

話を聞くことはできないけど、辛いことがあっても今日一緒に歌ったことを思い出してほしい。
自分らの曲が今日のことを思い出させる手伝いをするよ。
大切な曲をライブで一緒に歌わせてくれるのは、こんな想いがあるからなんだなと思った。
盛り上げるため、僕らのためじゃなくて、君自身のために歌ってほしいというのがなんともBUMPらしい。
引っ張っていくことはしないけど、誰も置いていかないのがBUMP OF CHICKENだから。

「Aurora」のパフォーマンスで、ツアーaurora arkの東京ドーム公演を思い出した。
このツアーの最初を飾る曲だった。
その前のツアーPATHFINDERの時は学生だったわたしも、aurora arcの時には社会人になっていた。

学生から社会人へステージが変わったこともあり、本当に色んな経験をして、目まぐるしい日々を送っていた。
先が見えない暗闇の中にいた時期もあった。
だから久しぶりにBUMPの奏でる音を聞いた瞬間に涙が止まらなくなってしまった。
久しぶりに会えた感動と、auroraの「もうきっと多分大丈夫」という歌詞と、藤原さんの優しい声に感情がぐちゃぐちゃになった。
嗚咽してしまうほど苦してぐちゃぐちゃで、でも嬉しくて、タオルに顔を埋めて泣いていた。
画面の中で「Aurora」を演奏する姿を見て、自然と涙が出そうになった。

「Aurora」のパフォーマンスが終わると、話題は去年の春の自粛期間の話へ。
自粛生活中、藤原さんは自分の思いついたことをスマホにメモしていたらしい。
真っ先に思い浮かべたのはわたしたちリスナーのことだという。
「僕がメモってたことはそいつらに聞いてほしかったことで、『そいつら今どうしてるの?』ってこともすごく知りたくて。宣言明けてスタジオに入って無我夢中にやったことがそれで、それが『Flare』という曲になりました」
ライブで楽しそうに笑ったり腕を上げたりするお客さんの映像と藤原さんの言葉が画面に流れた。

それを見た時に、なにかが溢れてしまった。
食べ物が食道を逆流してくるような感じで嗚咽が込み上げてきた。
その勢いに耐えきれなくて口を開くと止まらなくなってしまった。
転んで痛くて泣いている子どもみたいに、わんわん声を上げて泣いてしまった。
何で泣いてるのか分からないけど止まらなかった。
泣きながら口から出たのは「会いたい」という言葉だった。
あ、そうか。わたしはBUMPに会いたいんだ。

メンバーの一人が活動休止になってから、何となく気分が乗らないから、どんな気持ちで聞いていいか分からないからという理由をつけて、ほとんどBUMPの音楽を聞いていなかった。
半生を共にした大好きなバンドなのに、今回のSONGSも「予定もないから見るか」くらいのテンションだったのはそういうことだ。
でもたぶん、ほんの一瞬でも四人が三人になってしまうことがとっても寂しかったんだ。
心のどこかではBUMPの音楽を必要としていたんだなと分かった。

最後に披露された新曲「Flare」は三人の活動になってからリリースされた曲。
「大切にしたいものを大切にした結果、三人で活動することに決めた」と、手元をいじりながら少し自信なさげに、でも真っ直ぐな目で藤原さんが話してくれた。
音がリスナーのもとに行きたいと言う限りは届けなくちゃいけない。
どこまでも優しくてどこまても真っ直ぐなBUMPらしい答えだと思う。

「Flare」は命が続いていくことを歌った曲だなと思う。
「終わったって気づかれないようなこんな日々」「いつか終わる小さな灯火」「命の騒めき」という歌詞から、歌詞の先に、メロディーの先に生身の人間がいるんだなと感じる。
想いを込めて演奏している三人の姿が印象的だった。

久しぶりにBUMPの音楽を聞いた。
嫌いになれるわけないって分かっていたけど、やっぱりその通りだった。
いつ四人に戻るの?
BUMPが三人のバンドって認識しちゃう人が出るのは悲しいな
四人に戻ってライブするときどんな思いになるんだろう
思うこと、考えることはたくさんある。
当たり前だ。大好きなバンドなんだから。
整理できてないこともある。

でもやっぱり、誰が何と言おうとわたしは今日もBUMP OF CHICKENの音楽に隣にいてもらっているし、BUMP OF CHICKENのつくる音楽が大好きだ。
それだけで十分じゃないかな。

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