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青春の倉橋由美子

 私の本棚の中で小説は埃を冠っている 。若い時読んだものばかり。掃除機をかけつつ、あら倉橋由美子。 倉橋由美子は2005年にこの世を去ったんだった。 '60〜'70年代に学生生活を送った文学少女だったら倉橋由美子にはまった人は多いと思う。
初期の作品によくあらわれたKという人物、今はそれ がどんなキャラクターだったかおぼろげだが、なにかヘルムアフ ロディテのようなイメージではなかっただろうか。 若かりし頃ジャズ喫茶で、トイレに行くフリをして、「Kをさがすわ」と書き置きして 立ち去 った...なにを考えてたんでしょうか。そういう娘たち に絶対の人気があったのが倉橋由美子だった。  

 その文の中で「少女から老婆へのジャンプ」というような表現 があり 、わたしたちはそのイメージがおおいに気に入っていた。 自分はどんな老婆になるのか、理想的な老婆像というのを模索していた。

 少女と老婆の共通点は女性性が少ないという点であ る。少年の ような少女はいるし、少女のような少年もいる 。またおじいさんかな、と思ったらおばあさんだったということはよくあることだ。少 女が聖性を持ち、天使に近いとしたら 、老人も天国に近いという意 味で似ている 。またその中間の4、50年というのは地上の時 であり 、ズバリ言って所帯じみた時でしょう。ついでに言えば、フィンランド語でMrs.のことをロウバと言うとか。教 えてくれたのは昔の友人で、彼女はもう40年くらいヘルシ ンキに住んでい る。 ふりかえれば、ふたりともジャンプには失敗したようだ。

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